2021年もネット炎上トラブルが相次いだが、火種として多かったのはやはりジェンダー領域。特に、美少女キャラクターである「萌え絵」を起用したプロモーションでトラブルが起こりやすい。果たして萌え絵はどのくらい嫌われているのか? 広告・PRには一切起用しないのが無難なのか? 全国の女性500人アンケートの結果を踏まえて考察する。

PRのキャラクターに起用してたびたび炎上が起こる萌え絵だが、絵そのものに嫌悪感を持つ女性は決して多くはない(写真/Shutterstock)
PRのキャラクターに起用してたびたび炎上が起こる萌え絵だが、絵そのものに嫌悪感を持つ女性は決して多くはない(写真/Shutterstock)

 2021年11月2日。日本にはさまざまな記念日があるが、この日は「タイツの日」で、Twitter上にはこの記念日ワードが飛び交った。そこに添えられたツイートで目に付いたのが、「もう1年たったか。早いね」「あれから買ってないな」といった投稿だった。

 1年前の20年11月2日に何があったのか? ストッキング・タイツメーカー大手のアツギが「ラブタイツキャンペーン」をTwitter上で展開して炎上トラブルに見舞われた日である。イラストレーター(絵師)にタイツを着用した“萌え絵”の描画を依頼し、その中にあったスカートをたくし上げるポーズやローアングルからのイラストを公式Twitterアカウントが絶賛、リツイートしたことから、多くの女性ユーザーが拒否反応を示して炎上した事件だった。通常は炎上してもあっという間に忘れ去られるものだが、記念日にひも付けたキャンペーンだったことから、幸か不幸か想起された格好だ。

 気になるのは、炎上をきっかけに「買わなくなった」というツイートが散見されたことだ。また21年10月下旬には、「ソックス販売店で働いているのだけど、お客さまの要望に合いそうなストッキングを提案したところ、『アツギはちょっと……』と言われてしまった」という販売員と思われるTwitterユーザーの生々しいツイートもあった。

 1年前の炎上トラブルが同社商品の売れ行きにどれほど影響しているのか。新型コロナウイルス禍の外出減少によるストッキング需要の低下に加えて、同社はコロナ以前の19年3月期以降、営業赤字に陥っていたこともあり、炎上によるマイナス影響だけを割り出すことは難しい。ちなみに、「会社四季報」2022年新春号(東洋経済新報社)では、「タイツ類で挽回も、柱のストッキング類の不調補えず」とある。

 1年前のアツギの炎上は、萌え絵の中にきわどい格好の絵柄があったことが原因だが、萌え絵のPR起用は何かと炎上を招く火種になりやすい。

 21年9月にも、千葉県警が自転車の交通ルールを呼びかける啓発動画としてYouTubeに公開した千葉県松戸市のご当地VTuber「戸定梨香(とじょうりんか)」が登場する動画に、全国フェミニスト議員連盟なる団体が抗議したことで、千葉県警が動画を取り下げる一幕があった。抗議の趣旨は、「セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出している。体を動かす度に大きな胸が揺れる。下衣は極端なミニスカートで、女子中高生であることを印象づけたうえで、性的対象物として描写し、かつ強調している」というもの。

 一方で、松戸市ご当地VTuberアイドルとして活動してきたキャラクターが取り下げになったことに対する反発も根強く、署名サイト「Change.org」で議連に対する抗議キャンペーンが立ち上がり、21年10月末で7万人を超える賛同の署名が集まった。

 これまでも、三重県志摩市の海女をモチーフとしたPRキャラクター・碧志摩メグ(14年)や、岐阜県美濃加茂市の観光協会がポスターに起用したアニメ「のうりん!」のキャラクター(15年)、日本赤十字社が献血の呼びかけにポスターの絵柄として起用した漫画『宇崎ちゃんは遊びたい!』の主人公・宇崎ちゃん(19年)など、萌え絵を起用しては抗議の声が上がり、そのカウンターとしてアンチフェミニスト陣営も勢いづくという、いざこざが繰り返されてきた。

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