【詳細】米・イスラエルの国防相 軍事作戦の縮小へ協議

アメリカのオースティン国防長官とイスラエルのガラント国防相は18日、ガザ地区での軍事作戦をめぐり規模を縮小した作戦への移行などについて協議しました。

ガラント国防相は会見でハマスの壊滅を目指す方針は変わらないとしながらも、ガザ地区の一部の地域では作戦を段階的に縮小させることも検討していると明らかにしました。

イスラエルやパレスチナに関する、日本時間12月19日の動きをお伝えします。

フーシ派 航行中の船舶へ攻撃繰り返す 米が各国に協力呼びかけ

首都サヌアを含むイエメン北部を掌握する反政府勢力・フーシ派は紅海で航行中の船舶への攻撃を繰り返していて、海運大手各社や石油大手は紅海を経由した輸送を相次いで一時停止しています。

こうした事態をうけて19日、アメリカの主導で40か国以上が参加して、対策を協議する閣僚級会合がオンラインで開かれました。

このなかでオースティン国防長官はフーシ派の攻撃を非難したうえで「われわれが集まったのは、多くの国が戦略的な海上交通路の安全確保に直接貢献できるからだ」と述べ、各国に協力を呼びかけました。

また、この会合に先立ってオースティン長官はイギリスやバーレーンなど少なくとも10か国で有志連合を創設し「繁栄の守護者作戦」と名付けた安全確保の取り組みを紅海やアデン湾で開始すると発表しました。

これに対して、フーシ派の報道官は、19日、ロイター通信に対してイスラエルに関係する船以外は安全で有志連合は「不必要だ」としたうえで、方針は変えないと強調しました。

アルジャジーラ “南部ラファで複数の住宅が攻撃 29人死亡”

ガザ地区ではイスラエル軍の激しい攻撃が続いていて、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、19日、多くの避難民が逃れている南部ラファで複数の住宅が攻撃され29人が死亡したと伝えました。

ガザ地区では今もおよそ130人の人質が拘束されていて、イスラエル政府に対し交渉に応じるよう圧力をかけるねらいがあるとみられます。

ハマスのカッサム旅団 人質だとする高齢男性3人の映像公開

ハマスの軍事部門カッサム旅団は18日、SNSで人質だとする3人の高齢男性が映っているおよそ1分間の映像を公開し、イスラエル政府に対し交渉に応じるよう圧力をかけるねらいがあるとみられます。

映像の字幕で79歳と書かれた男性は「ここにいる老人たちはみな持病を抱え、非常に過酷な環境で暮らしている」と話しています。

そのうえで「私たちはイスラエル建国の礎を築いた世代で、イスラエル軍を立ち上げたのも私たちだ。なぜ私たちが見捨てられたのか理解できない。ここから無条件で解放してほしい」と話しています。

また映像の最後には、3人が口をそろえて「ここで年を取らせないでくれ」と声をあげています。

イスラエルのメディアは、3人がいずれもガザ地区に近い同じ集落から連れ去られた79歳から84歳の男性で、一緒に人質になっていたそれぞれの妻はすでに解放されていると伝えています。

この映像に対してイスラエル軍のハガリ報道官は「ハマスが公開した映像は犯罪的なテロリストの映像で、医療を必要とする高齢で罪のない民間人に対するハマスの残虐さが表れている」と非難しました。

そのうえで「私たちは、あなたたちを無事に取り戻すために全力を尽くしている。あなたたちが戻ってくるまで休むつもりはない」と述べ、解放に向けて尽力していると主張しました。

酒井海上幕僚長「有志連合に加わるという認識はない」

紅海での情勢を受けてアメリカがイギリスなどと有志連合を創設すると発表したことについて、海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は19日の記者会見で「いまのところ、海上自衛隊の護衛艦と航空機がアメリカが発表した有志連合に加わるという認識はない。今後も海賊対処の行動計画に従い、活動エリアも紅海に入ることはないと考えている」と述べ、アデン湾での海賊対処活動を継続するという考えを示しました。

そのうえで、イエメンの反政府勢力・フーシ派からの攻撃のリスクについては「フーシ派の活動や脅威は同盟国や連携国と情報交換しながら、冷静に判断する必要があり、その中で部隊の行動について不断に検討していく」と述べました。

米国防長官 “新たに有志連合を創設 対策強化”

アメリカのオースティン国防長官は18日、イギリスやバーレーン、カナダ、フランス、イタリアなど少なくとも合わせて10か国で新たに有志連合を創設し、対策の強化にあたると発表しました。

イエメンの反政府勢力・フーシ派が紅海を航行中の船舶に対し攻撃を続けており、航行の安全を守ることを目的としています。

ウォール・ストリート・ジャーナルなどアメリカのメディアは多国籍の海軍部隊によって商船を守る対策や紅海やアデン湾のパトロールに乗り出すなどと伝えています。

オースティン長官は18日に行われた会見で、紅海につながる海峡について「毎日、多くの国際的な貿易が行われる非常に重要な場所であり、われわれは航行の自由を守るためにできるかぎりのことをする」と訴えました。

オースティン長官はまた、19日にフーシ派による攻撃への対策について協議するため、同盟国などとオンラインの閣僚級会合を開くことも明らかにしました。

イスラエル軍 “戦闘員の集団を空爆”

イスラエル軍は18日、ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者が潜伏している可能性があるとみている南部ハンユニスで、戦闘員の集団を空爆したなどとSNSで発表しました。

一方ハマスは18日、北部ベイト・ラヒヤでイスラエル軍の軍用車両の車列を対戦車ミサイルで破壊したとする動画などをSNSに投稿しました。

ガザ地区の保健当局は18日、これまでの死者数が1万9453人に上っていると明らかにし、激しい戦闘で民間人の犠牲に歯止めがかからない状況が続いています。

イスラエル国防相「作戦達成の地区 次の段階へ」

アメリカのオースティン国防長官が18日、イスラエルのテルアビブを訪れ、ネタニヤフ首相やガラント国防相と軍事作戦について意見を交わしました。

ガラント国防相と共同で会見したオースティン長官は、民間人の犠牲を減らすことや軍事作戦の規模を縮小することについて協議したと明らかにしました。

これに対してガラント国防相も「作戦を達成できた地区は徐々に次の段階へ移行し、住民の帰還に取り組む。南部より北部では早く実現できるかもしれない」と述べ、一部の地域では段階的に作戦を縮小させることも検討していると明らかにしました。

“人質解放に向けた協議へ” ロイター通信

ロイター通信は18日、アメリカCIA=中央情報局の長官がイスラエルの情報機関モサドの長官やカタールの首相兼外相とハマスに拘束されている人質の解放に向けた協議を行うため、東ヨーロッパのポーランドで会談すると伝えました。

これに対してハマスの政治部門の幹部は18日、レバノンで会見し、イスラエル軍がガザ地区での侵攻を止めないかぎり人質解放の交渉には応じないというこれまでの姿勢を強調しました。