アイヌの遺骨 オーストラリアの博物館から約100年ぶりに返還

日本の学者が研究目的でオーストラリア側に提供し、現地の博物館に保管されていたアイヌ民族の遺骨が両政府の交渉を経て6日、およそ100年ぶりに日本側に返還されました。

返還されたのは、北海道や樺太、今のサハリンで発見されたアイヌ民族の遺骨合わせて4体です。

遺骨は、日本の学者が1910年代から30年代にかけて研究目的でオーストラリア側に提供し、首都キャンベラや第2の都市メルボルンにある博物館に保管されていました。

遺骨の中には墓から掘り起こされたものもあるとされ、このまま保管し続けるのは好ましくないとして2017年、オーストラリア側から返還の意向が示され、両政府による交渉をへて返還されることが決まりました。
6日は、メルボルンでアイヌ民族の団体が参加して返還の式典が行われました。

式典では、神に感謝をささげるアイヌの伝統儀式「カムイノミ」が行われたあと、博物館の担当者が「遺骨が持ち出されたことで皆さんに苦痛を与えたことを謝罪し、返還することで苦痛が少しでも和らぐことを心から願います」と述べました。
北海道アイヌ協会の大川勝理事長は「先祖の人たちはさぞさみしい思いをしただろうと思います。日本でしっかり慰霊します」と話していました。

一方、樺太から持ち出された遺骨は、オーストラリアの先住民アボリジニの遺骨と研究目的で交換され、この遺骨は日本側にあるとされています。
樺太のアイヌの子孫で作る「エンチウ遺族会」の田澤守会長は「アボリジニの人たちの遺骨も日本からすみやかに返還されることを祈っています」と話していました。