大相撲 コロナ厳戒態勢の中で始まった7 月場所

大相撲 コロナ厳戒態勢の中で始まった7 月場所
東京 両国の国技館に半年ぶりに沸き起こった拍手。さまざまな感染防止対策を取り、厳戒態勢のなかで始まった大相撲7月場所は、新型コロナウイルス禍での今後の大相撲の在り方を問う試金石となります。

異例の協会あいさつ

大相撲7月場所は、ことし1月の初場所以来、半年ぶりに観客を入れて開催されました。
日本相撲協会の八角理事長の初日恒例の協会あいさつは、異例の観客へのお願いの場となりました。
八角理事長
「感染症の専門家の方々と綿密な協議を行い、最良の感染予防策を講じさせていただきました。今場所は、皆様の健康面と安全面をお守りするため、お客様にはさまざまなお願いをする事になりますがご協力のほどお願い申し上げます」
理事長のあいさつのとおり、相撲協会は場所前から専門家の助言を受けながら開催に向けてガイドラインを作成しました。
集団生活を伴う相撲部屋での過ごし方から、本場所中の力士や親方など協会員の対策、観戦の際の注意事項のほか、万が一、協会関係者が感染した際の対応に至るまで、A4版でおよそ30ページあります。

力士への対策

このガイドラインに盛り込まれた本場所中の力士への対策で、最も大きく変わったのは支度部屋です。
これまでは取組を待つ力士や付け人、それに報道陣などが集まりいわゆる「3密」の状態でした。このためアクリル板を設置してブースを設け、力士が1人ずつ待機できるようにしました。このブースには、取組順に番号がふってあり座る場所が決められています。
横綱は支度部屋のいちばん奥に12畳分、大関は3畳分、その他の力士は2畳分が割り当てられ、力士の地位に応じて広さが異なっています。
こうして一人一人のスペースを設けたとしても幕内力士と十両力士にはそれぞれ付け人がいて密集するおそれがあるとして、相撲協会は、今場所、十両の支度部屋を国技館の敷地内にある「相撲教習所」に設けました。

迎えた初日

19日の初日、十両の力士は新たな支度部屋でいつもより距離を取って出番を待っていました。さらに力士は、支度部屋の中では準備運動の際も含めて常にマスクを着用し、取組の前、花道に向かう際に初めて外すことができます。
土俵下では、飛まつによる感染を防ごうと審判がふだんの本場所よりも土俵上との距離を取るためたまり席の最前列まで下がって座りました。
「物言い」がつき、土俵上で審判どうしで協議をした際には、これまでよりもお互いに距離を取って意見を交換する様子も見られました。
力士や協会員への対策について東京で行われる本場所の責任者を務める尾車事業部長は「濃厚接触者にならないことが大きな理由だ。命を守ること、休場を回避させる意味を持っていることをわかってほしい」と説明しています。

観客への対策

観客への対策もさまざまです。
まず館内に入る前にサーモグラフィーを使って体温を測ります。37度5分以上が、複数回、計測された場合は入場をやめるよう求められます。
今場所は収容人数の4分の1程度のおよそ2500人に制限し、観客には大声での声援を控えるよう求め拍手での応援を推奨していて、花道などでは力士に触れる行為を禁止しました。
実際、初日には、力士のしこ名を呼ぶ声や大歓声がないとはいえ取組後には拍手がわき起こり、大声を出すのをこらえながら思わず漏れてしまうざわめきが聞こえました。

取組を終えた力士も「お客さんのありがたさを思い知らされた」とか「一層気合いが入った」と感想を話し、最も大きな拍手を受けた新大関の朝乃山は「1月よりも拍手は大きくなったかな」と受け止めていました。
観客を入れずに行われた3月の春場所では、静粛な雰囲気の中で行われた土俵入りなど、大相撲の「神事」としての魅力がクローズアップされたものの、力士が好取組を見せても静まり返ったままの会場には寂しさも感じられました。
初日の国技館の雰囲気は、「観客があってこその大相撲」を再認識させてくれました。
「神事」「スポーツ」「興行」の三本柱で成り立つ大相撲という伝統文化をコロナ禍の中でどう継承し、守っていくのか。今場所の15日間に「ウィズコロナ」の時代での大相撲の在り方のヒントが見えてきそうです。
(スポーツニュース部 記者 鎌田崇央)