福祉制度

精神障害者手帳2級と3級の違いは?どんな人なの?それぞれのメリットも紹介!

精神障害者手帳2級・3級の違いは?

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

「精神障害者手帳2級と判定されたけどやばい?」

「精神障害者手帳2級・3級の違いを知りたい」

精神疾患により、日常生活や社会生活に障害があると判定された時発行される

精神障害者保健福祉手帳

しかし、なぜ自分はその等級と判定されたのか、またどのようなメリットの違いがあるのか気になりますよね。

そこで、今回は精神障害者手帳2級・3級の判定やメリットの違い、それぞれどのような人なのかを解説していきます。

また、解説にあたっては以下の厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」を元にわかりやすく解説していきます

参考:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

 

前半では、それぞれの詳細に基準について解説しておりますので、

ざっくりとどのような状態か知りたい方は以下のボタンよりスキップしてください。

精神障害者手帳2・3級の具体例へスキップ
\ この記事の監修者 /
仮屋 智之顔写真
就労移行支援事業所で支援業務に携わり、精神疾患や障害をお持ちの方のメンタルヘルスケアやキャリアアップのお手伝いをしています。

 

精神障害者手帳2級・3級の違い

まず精神障害者手帳は以下の4つの点により、審査され発行されます。

ここにボックスタイトルを入力
  • 精神疾患の存在の確認 (精神疾患があるかないか?)
  • 精神疾患の状態(機能障害) (精神疾患の疾患別の程度)
  • 能力障害(活動制限)の状態(生活を送る上での障害の程度)
  • 精神障害の程度の総合判定 (②③を加味した障害の程度)
精神障害者手帳の審査ポイント

その中でも、特に②の「精神疾患の状態」と③の「能力障害の状態

それぞれを元に等級が確定されます。

その上で精神障害者手帳2級・3級の違いについてですが、

これらの、状態の程度がより重いほど等級は上がっていきます

 

福祉サービスや民間の割引、手当などもこれらの障害に応じて決まっていきます。

 

精神障害者手帳2級・3級の判定基準①病名の存在

まず、はじめに精神疾患の存在があるかどうかが確認されます。

厚生労働省の基準では以下の8つの病名が示されています

精神障害者手帳8つの病名
  1. 統合失調症
  2. 気分(感情)障害
  3. 非定型精神病
  4. てんかん
  5. 中毒精神病(アルコール・薬物依存症等)
  6. 器質性精神障害(認知症・膠原病・頭部外傷性等)
  7. 発達障害(ASD・ADHD・LD等)
  8. その他の精神疾患によるものにあっては、上記の1~7に準ずるもの

これらの疾患が精神障害の対象となるため、まずは医師の診断より存在しているかが確認されます。

特に精神障害者手帳を取得をお考えの方は、自身の疾患が神経症でなく精神疾患かをしっかりと確認する事が重要です。

適応障害や社会不安障害は対象にならない?

注意点としては、精神障害者手帳の対象は主に精神疾患を対象にしている点です。

そのため、精神疾患に症状が似ていますが分類が異なる神経症、具体的には適応障害や不安障害、人格障害などの疾患は精神障害者手帳の対象にならない可能性が高いため注意が必要です。

また適応障害の方は以下の記事をご覧ください。

参考:厚生労働省「障害認定基準」P5ページ

 

精神障害者手帳2級・3級の判定基準②症状の状態

次点で確認される事は、それぞれの精神疾患にどの程度の症状があるか判定されます。

(これを機能障害と言います。)

例えば、精神障害2級のうつ病(気分障害)の状態であれば以下のようになります。

 

“気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動及び思考 の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返 したりするもの“

引用:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

 

これが3級の場合であれば、以下のようになります。

 

“気分(感情)障害によるものにあ っては、気分、意欲・行動及び思考 の障害の病相期があり、その症状は著しくはないが、これを持続したり 、ひんぱんに繰り返すもの“

引用:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

2級と3級の違いは、症状が著しいかどうかです

つまり、症状が医師の目から見て

目に見えてわかる程度の変化があるかどうか?」が重要となります。

精神障害者手帳2級・3級の判定基準③精神疾患による障害の程度

3つ目の判定基準として、①、②の精神疾患により「どの程度日常生活に障害を感じているか?」が焦点となります。

主に以下の8つの生活場面により判定されます。

精神障害者手帳の判定に用いられる8つの生活場面
精神障害者手帳の判定に用いられる8つの生活場面
  1. 調和のとれた適切な食事摂取ができない。
  2. 洗面、入浴、更衣、清掃等の身辺の清潔保持ができない。
  3. 金銭管理能力がなく、計画的で適切な買物ができない。
  4. 通院・服薬を必要とするが、規則的に行うことができない。
  5. 家族や知人・近隣等と適切な意思伝達ができない。協調的な対人関係を作れない。
  6. 身辺の安全を保持したり、危機的状況に適切に対応できない。
  7. 社会的手続をしたり、一般の公共施設を利用することができない。
  8. 社会情勢や趣味・娯楽に関心がなく、文化的社会的活動に参加できない。

具体的には、例えば、精神障害2級相当の方であれば以下のようになります。

  • 調和のとれた適切な食事摂取は 援助なしにはできない。 
  • 洗面、入浴、更衣、清掃等の身 辺の清潔保持は援助なしにはでき ない。
  • 金銭管理や計画的で適切な買物 は援助なしにはできない。
  • 通院・服薬を必要とし、規則的 に行えない。

これが、精神障害2級相当であれば少し異なってきます

  • 調和のとれた適切な食事摂取は 自発的に行うことができるがなお 援助を必要とする。 
  •  洗面、入浴、更衣、清掃等の身辺の清潔保持は自発的に行うこと ができるがなお援助を必要とする 。
  • ・金銭管理や計画的で適切な買物 はおおむねできるがなお援助を必 要とする。
  • 規則的な通院・服薬はおおむね できるがなお援助を必要とする。

ご覧のように、精神障害3級の場合は、日常生活がおおむねできると判断されるに対して

精神障害2級の場合は援助なしにはできない状態となります。

障害に対する、援助の度合いで判定が変わっていきます。

精神障害者手帳2級はどんな人?具体例をあげて解説

それでは、実際に架空の人物像を挙げて解説していきます。

精神障害者手帳2級の具体例2

精神障害者手帳2級の取得を考えているA君の状況

精神障害者手帳2級取得を検討しているA君の状況
  • 病名:統合失調症
  • 日中活動:障害者雇用での就職を目指し、就労移行支援に通っている
  • 住まい:実家に暮らしていて、お金の管理や掃除などは両親が行なっている
  • 娯楽:あまり社会の事に興味がなく、興味はないが両親に連れられて書道教室に通っている。
  • 服薬:薬を処方されているが、規則的に飲めず訪問看護を利用している。
症状と日常生活の状況
  • 症状の状況:時計の針がぐるぐる回って見えたり、幻聴が頻繁に聞こえるが一人で対処することがむずかしい。パニック時には訪問看護師さんに電話をかけている。
  • 思考が突然途切れたり、就労移行支援でもコミュニケーション面で話しの内容と表情が一致しない事がある
  • 日常生活の悩み:現在通っている就労移行支援を通じて、障害者雇用で就職したい。しかし、現在、金銭や掃除をしてくれる両親も高齢になってきているため、それらのサポートを考えなくてはいけない
就労移行支援WithYouの紹介バナー

これらの場合は、疾患の有無や症状の状態で

そして、日常生活の障害などを厚生労働省の基準と照らし合わせて総合的に判断すると、取得できる可能性が高いと思われます。

精神障害者手帳を取得することで金銭の管理や清潔の維持なども

指定障害福祉サービスの「居宅介護」や「自立生活援助」を利用し

両親が将来的に同居が難しくなった場合も、共同生活援助の活用や

両親が亡くなった後の金銭面も考慮し、共済や相続税の控除なども含めて支援して行けると思います。

支援方策については社会福祉士の視点で作成し

P11ページを元に作成、人物像を監修者が作成

精神障害者手帳3級はどんな人

次に精神障害者手帳3級の肩の人物像を解説していきます。

精神障害者手帳3級取得を考えているAさん

精神障害者手帳3級の具体例
精神障害者手帳2級取得を検討しているA君の状況
  • 病名:うつ病
  • 仕事:就労継続支援A型でWeb制作の仕事を行なっている。
  • 住まい:実家に暮らしていて、普段は家事手伝いも行なっている。
  • 娯楽:一人で本屋やカフェに出かけている。
症状と日常生活の状況
  • 症状の状況:仕事上のストレスなどにより、自己否定感、焦燥感、不安感などの感情に時折襲われ、その時期には頻繁に会社や友人、相談員に電話をしてしまう。
  • 日常生活の悩み:不安などの感情に襲われている時は、一人で外出が難しくなり、家の掃除が困難になり散らかしてしまう。仕事上では、適切なコミュニケーションができなくなったり、手順通り仕事ができなくなる。

こちらの方の例では、日常は通常通り働いており生活もできていますが、

時折、症状が繰り返し出ており

急なストレスの状況下では、これまでできていたものができなくなり日常生活や社会生活に制限が出ています

この場合、しっかりと状況を説明できれば取得の基準を満たしていると言えます。

ここまで精神障害者手帳2級と3級の具体例を見ていただくとわかるように、

決定的には

2級の方は、単独で日常生活が困難である事に対して、3級の方はストレスなどがかからない状況下においては通常通り日常生活を送っています。

自身と照らし合わせた時に、症状により単独で日常が難しい場合は2級、ストレス状況下において日常生活が難しくなるのであれば3級と覚えておくと良いでしょう。

精神障害2級やばい?【結論:全くやばくない】

精神障害2級で検索すると、「やばい」というキーワードが出ていますが、

実際はどうなのでしょうか?

精神障害者手帳2級の検索結果のスクリーショット

結論としては全くやばくないと言えます。

というのも、現在精神障害者雇用で働いている方の約半数(46.9%)は精神障害者手帳2級です。(3級では、36.3%で2級の方が多い)

障害者雇用の精神障害者の割合

所持者数が約60万人、で精神障害者雇用の人数が11万人であるため約10人に一人は通常通り働きながら生活しています。

ですので、精神障害者2級と判定されたからといっても、やばいという事はなく

様々な進路が見えてくると言えるでしょう

 

参考:厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

厚生労働省:令和元年度_衛生行政報告例_概況

精神障害2級は一人暮らしできる?

精神障害者手帳2級の方が一人暮らしを考えた時におすすめしたいのが、共同生活援助です。

通称、障害者グループホームと呼ばれています。

このサービスでは、主に一軒家などで障害を持つ方が共有で生活します。

部屋は一人に一つずつ提供され、食事やレクリエーションもあります。

共同生活援助の説明

共同生活援助では、常に生活支援員や世話人と呼ばれるスタッフが常駐し

精神障害のため日常生活で難しいポイントなどを全般的にサポートしてくれます。

 

さらに、最近ではマンションタイプや一人暮らしタイプも存在し(サテライトと言います)

これを積極的に活用する事で、一人暮らしも可能と言えるでしょう。

精神障害者手帳3級を2級にするには

精神障害者手帳3級の方で、手当や市町村の制度の面や現状の日々の生活の困難さからなんとか2級に変更したいと思われる方が多いと思います。

そこで、そのような場合に取れる対策についていくつかピックアップしていきます。

精神障害者手帳3級を2級にするポイント①:主治医へ現状を正確に伝える。

精神障害者手帳用の診断書には、以下のような用紙で判定され、

手帳用診断書参考

2年毎の更新となりますが

その診断書の内容が現状の生活実態とは乖離している場合は

主治医に、日常生活の実態が正確に伝わってない場合があります。

その場合は、あらかじめ自身で今回あげた8つの生活場面の困難さについてまとめるなどの工夫が必要です。

また、必要に応じて精神科訪問看護などを利用することで自宅での生活実態を医師に報告する事も可能です。

参考:精神科訪問看護ステーション福珠

精神障害者手帳3級を2級にするポイント②:主治医の変更

主治医とのコミュニケーションがあまり上手くいっていないと感じるときは、主治医を変更する事も考慮すべきでしょう。

精神障害者手帳用の診断書は実費にて平均8,000円以上もする高額なものとなっております。

精神障害者手帳の診断書代

しっかりとコミュニケーションが取れる主治医の元で診断書を発行するようにしましょう。

精神障害者手帳3級を2級にするポイント③:障害年金専門と社会保険労務士への依頼

精神障害者手帳2級の取得方法として、障害年金の年金証書の控えを持って市役所に提出する方法があります。

精神障害者手帳3級の期間は2年ですが、その間に症状が重くなり日常生活への制限を感じている場合は

障害年金の申請を行い、その上で障害年金2級と判断された場合は

そのまま精神障害者手帳2級を申請のみで取得できます。

精神障害者手帳3級は意味ない?メリットを紹介

精神障害者手帳3級は2級や1級と比べて、あまりメリットがないと感じておられる方も多いのではないでしょうか?

結論から申し上げると、確かに1・2級と比べると直接的な手当の対象でない場合もいいですが、

精神疾患で悩んでおられる方であれば、メリットは大きいと思います。

特に、メリットが大きいのは

民間の割引の面や障害者雇用の求人の応募できる面かと思います。

民間の割引については、以下の記事でより詳細に解説しておりますのでご参照ください。

精神障害者手帳3級の民間の割引

精神障害者手帳を持つことにより、割引で最も身近なものは

スマホ・移動、そして余韻に関するものが言えます

例えば、タクシー料金であれば全国の半数の事業者で約10%の割引を行なっております。

精神障害者手帳によるタクシー割引

さらに、鉄道でも半数の事業者が、バスや航空機、フェリーなども割引が適用されます。

 

そして、スマホ料金の割引もありNTT DOCOMOの全データ通信量のプランで、基本利用料7315円から5808円まで、約1500円程の割引となります。

精神障害者スマホ割引

また大手3大キャリアは全て独自の割引を実施しております。

他、様々な民間事業者が割引を行なっております。

障害者雇用の求人に応募できる

精神疾患の症状により、通常の働き方が難しい場合は

障害者雇用を検討するのも一つの方法です。

平成30年より精神障害者も障害者雇用義務化に加えられ、昨今急速に求人数が増えている現状があります。

精神障害者雇用の推移

平成30年4月時点では、約6万7000人だった精神障害者雇用の人数が

令和4年4月時点では、約11万人にも及びます。

精神障害者雇用の雇用率の推移

現時点での、障害者雇用率は2.3%(令和5年時点)、43.5人に一人障害者を雇わなければならない制度となっておりますが

令和8年の時点では2.7%まで引き上げられ、37人に1人を雇わなければならない事が決まっております。

 

また、大手の企業では精神障害者に向けて、短時間労働や積極的な休憩などの配慮も数多く行なっております。

 

悩んでおられる方は一度、ハローワークや就労移行支援などに相談へ行かれる事をおすすめいたします。

精神障害者手帳2級のメリットを3級と比べて紹介

それでは、精神障害者手帳3級と比べた際の精神障害者手帳2級のメリットをご紹介致します。

まず、医療費の面では市町村によっては

2級から全額免除を行なっている市町村もあります。

参考:愛知県「精神障害者医療費助成制度

 

生活保護受給者で、精神障害者手帳2級以上であれば障害者加算が適用されます。

1級地であれば、月額17,530円が適用されます。

参考:精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について

障害年金2級(障害厚生年金2級)又は3級の受給可能性が高い

精神障害者手帳3級と障害厚生年金3級を比較した時は、精神障害者手帳3級の範囲は障害年金3級の範囲より広く受給できるかどうかわかりません。

障害年金と精神障害者手帳の範囲2

しかしながら、精神障害者手帳2級となると障害年金2級の条件は全く同じではありませんが、日常生活状況の判定において、重なる部分も非常に多くなります

そのため、最低でも障害厚生年金3級は取得できると言えます。

従って、精神障害者手帳2級を取得できた場合は合わせて障害年金の申請を強くおすすめします。

精神障害者手帳の2級・3級の税金面での控除

税金面での控除は2級と3級は共通となります。

住民税で26万円、所得税で27万円の控除となります。

どの程度の節税効果があるか、所得税で例を出します。

年間150万円の給与所得がある場合、障害者控除がない場合は

課税所得は47万円となり、所得税額は2.35万円となります。

これが障害者控除ありだと、

課税所得が20万円となり、所得税額は半分以下の1万円となります。

障害者雇用の給与は低い場合もありますが、障害者控除や障害年金を活用する事で

所得が大きくなる側面もあります。

参考:「国税庁「No.1160 障害者控除

 

障害者控除で精神障害者である事が職場にバレる?

障害者控除などの税金面での控除を適用する事で職場にバレないか?心配で利用を躊躇している方も多いかと思いますが、

障害者控除を利用したからと言って、会社からの年末調整の際に

障害者(本人)」欄にチェックを入れる必要はありません。

チェックせずに提出し、翌年3月15日までに自身で確定申告をすると良いでしょう。

ただし、唯一発覚する恐れがあるとすれば

住民税の特別徴収を行なっている際の住民税額において

会社への通知には、障害者控除の旨が記載しておりませんが、

本人用には障害者控除と明記してあります。

 

市町村によっては、会社側にわからないように秘匿措置を行なっていますが、会社側が見てしまった場合は発覚する事があるでしょう。

心配な方は、普通徴収にて住民税を納めましょう。

「精神障害者手帳2級・3級の違いは?どんな人なの?」まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は精神障害者手帳2級・3級の違いや、それぞれの人物像

そして、メリットについて解説致しました。

 

他にも精神障害に関する記事を執筆していますので、ご覧くださいませ。