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米欧と中国の間でスパイ戦が激しさを増している。米中対立の長期化に伴い、機密情報の収集や漏えい防止の重要性が高まった。従来は明るみに出なかった水面下の攻防が次々と公表され、双方が強く警戒を呼びかける事態となっている。(ワシントン 向井ゆう子、北京 川瀬大介)
AIなど先端技術を駆使
「中国は現代の決定的な脅威だ。米国の安全保障をこれほど脅かす国はない」。1月31日、米下院特別委員会の公聴会で米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官が、中国によるスパイ活動の活発化に警戒感をあらわにした。
米メディアによると、FBIが捜査中の中国に関するスパイ事件は数千件に上る。主戦場はサイバー分野だ。昨夏、中国のハッカー集団の攻撃で米政権幹部のメールが流出した。米国の20以上の重要インフラ施設が中国のハッカーに侵入されたことも判明した。
最近はAI(人工知能)など先端技術を駆使した手法もみられるという。レイ氏は米メディアに対し、中国とのスパイ戦は対ソ連と比べ、より多角化しているとの見方を示した。昨年8月には、米軍の機密情報を中国に漏らしたとして米軍人2人が逮捕された。米軍基地に侵入を試みた中国人は昨年だけで十数人に上るという。
中国のスパイ活動に対し、米国は英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドと構成する情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」で対抗する構えだ。昨年10月、米CBSの報道番組に、レイ氏ら5か国の情報機関トップが出演した。異例のそろい踏みで、企業の機密窃取のため中国スパイがSNSで英国人に接触を試みた事案が約2万件あったことなどが示された。広く注意喚起し、中国に警告する意図があったとみられる。
CIAを名指し
対する中国のスパイ摘発機関・国家安全省は1日、昨年夏以降に摘発を公表した米中央情報局(CIA)や英対外情報部(MI6)関連のスパイ事案を例に「反スパイ闘争の情勢は厳しく複雑だ。国家安全当局は十分に職責を果たし、力強く我が国の主権や安全を守った」と成果を誇った。
同省は昨年以降、国民の大多数が利用するSNS・微信(ウィーチャット)の公式アカウントで米CIAなどを名指ししてスパイ事案を公表してきた。詳細な手口も明らかにする異例の対応には、米国との対立長期化を見据えて国民に注意喚起を促し、スパイ摘発への協力を求める狙いがある。
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