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2011年3月の東京電力福島第一原発事故で東電に巨額の損害を与えたとして、同社の個人株主48人が勝俣恒久・元会長(82)ら旧経営陣5人に対し、22兆円を東電に支払うよう求めた株主代表訴訟で、東京地裁は13日、勝俣元会長ら4人の賠償責任を認め、計13兆3210億円の支払いを命じる判決を言い渡した。
事故では、東電や国の責任を問う訴訟が約30件起きた。最高裁は6月、事故避難者らが国に賠償を求めた訴訟の判決で「津波の規模が想定より大きく、事故は防げなかった」と判断していたが、地裁の朝倉佳秀裁判長は「巨大津波の襲来は予見でき、対策を講じるよう指示すれば事故を防げたのに怠った」と述べた。
賠償額は国内の裁判で過去最高とみられ、この事故で東電元役員個人の法的責任が認められたのは初めて。賠償を命じられたのは、勝俣元会長のほか、清水正孝・元社長(78)、武黒一郎・元副社長(76)、武藤栄・元副社長(72)の3人。
判決は、国の「地震調査研究推進本部」が02年7月、三陸沖で巨大地震が起きる可能性を公表した「長期評価」を科学的に信頼できると評価。長期評価を基に「最大15・7メートルの津波が来る」とした東電側の試算結果も信頼できると判断した。
このため、旧経営陣は津波の襲来は予見できたとし、原子炉施設の防水化を実施していれば、事故を避けられた可能性があると述べた。
その上で被告5人の責任を検討。原発の安全対策を担っていた武藤元副社長は、08年6~7月に東電の担当者から試算結果を示されたのに、津波対策を先送りにして放置したと指摘。勝俣元会長と清水元社長、武黒元副社長についても、対策を実施するよう指示する義務を怠ったと述べた。
事故で東電に生じた損害は▽被災者への損害賠償費用(7兆834億円)▽廃炉・汚染水対策費用(1兆6150億円)▽除染・中間貯蔵対策費用(4兆6226億円)だと認定。勝俣元会長ら4人が全額を負うべきだと判断した。一方、事故の前年に常務になった小森明生氏(69)については、対策を講じさせられる期間が短いため、賠償責任を否定した。