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「師匠」立川志らくさん 談志との30年を振り返り

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 前から落語ファンの間での人気は高かったが、ここ数年、情報番組のコメンテーターや司会者を務めるなどして一般的な知名度も上げた。2011年に亡くなった師匠の立川談志は「落語家はとにかく売れなきゃいけない」と言い続けていたという。

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 今も談志から言われた言葉が深く根付いている。談志との出会いは、1982年。高座での〈 りん としたその たたず まいに かれた〉。その日から、出演する寄席へと通うようになり、85年に入門した。本書は弟子と師匠の30年近い濃密な日々をつづっている。

 「こんな怖い大人はいるのか」と思った談志だったが、不思議なほど、ことあるごとに褒めてくれた。〈こやつは五年後に小さな天下をとる〉と人に紹介することもあった。映画や歌謡曲など趣味は合った。だが、それだけで談志が受け入れたわけではなかった。亡くなる数年前、〈おまえが弟子でいてくれたから、助かったんだ〉とつぶやいた。談志は落語を「イリュージョン」と定義した。「何だか分からないけど面白い」という意味だという。「これがあるから、江戸時代の笑いは今も通用する」と言葉を補う。

受け継いだ志 業とともに生きる

 談志の弟子たちはそれぞれ際だった特徴を持っているが、イリュージョンとしての落語ができるのは、この人だと談志は見ていた。だからこそ、談志は〈志らくは弟子でありながら、同志でもあるのです〉と公言していたのだ。

 全国区の人気者となったが、最近、兄弟子である立川談春の「 粗忽そこつ の使者」を見た時、「こんな肩の力が抜けて面白くできるんだ」とショックを受けた。落語に 真摯しんし に向き合い、世間の評価と自己評価とのズレに苦悩し続けた師匠の姿を「死ぬまで苦悩し続けるのは嫌だ」と反面教師にしながらも、悩みは尽きない。 ごう とともに生きている。(集英社、1870円)前田啓介

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5063835 0 本のインタビュー 2024/02/23 15:30:00 2024/02/23 15:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/02/20240220-OYT1I50033-T.jpg?type=thumbnail

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