ファッション

ローラからの進捗報告 “作りたくても素材は限られている。その中で挑戦すると決めているの”

PROFILE: ローラ

ローラ
PROFILE: 16歳でモデルデビュー。ハーフモデルとして独自のアイデンティティーをもち、その愛くるしいキャラクターと個性溢れるスタイルで国内外を問わず活躍。多くのファッション誌の表紙を飾り、さまざまな表情でファンを楽しませている。2016年には米映画製作プロデューサーの目にとまり、映画「バイオハザードⅥ:ザ・ファイナル」(16年12月23日公開)の女戦士役に抜擢されハリウッド映画デビューを果たす。20年に「Essentials for a good life」をスローガンに掲げたライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー」を立ち上げ活動している。 写真は、「マックスマーラ」2024年リゾートコレクションで訪れたスウェーデン・ストックホルムで PHOTO:MAX MARA

ローラが自身のライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」を始動して2年半が経過した。環境再生型農業によるデニムや受注生産の採用などその取り組みは至極真面目で先進的だ。日進月歩のサステナビリティについて、今のローラに見えている世界とは?「マックス マーラ(MAXMARA)」2024年リゾートコレクションのためにスウェーデンを訪れた彼女を現地でキャッチして近況を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):1年半前でのインタビューでは、サステナビリティに関する学びやリサーチを1日数時間行なっていると話していたが、この1年半で何を進化させた?

ローラ:この1年は特にベトナムのデニム工場サイテックス(SAITEX)との話し合いの中で学ぶことが多かったかな。今回、デニム素材に初めてサイテックスの”リジェネラティブコットンデニム”を採用してプレミアムなラインを作ったの。これまで作ってきたトップスと合うように、ブーツカットと少しワイドで切りっぱなしのデザインをね。

WWD:”リジェネラティブコットンデニム”つまり環境再生型農業は、農地そのものを健全に保つ手法で、今注目を集めている。理解するには学びが必要だったのでは。

ローラ:勉強すればするほど深くなってゆく。不耕起栽培で土地も健康になり、循環がしっかり回ることが理想だけど、本当に深くて。それはエコに関する他のことも同じ。例えばオーガニックコットンを目指す農家さんがいて、90%実現しても10%できていなかったらオーガニックとはうたえない。私は最初から100%パーフェクトでなくていいと思うから、そういう農家の人も応援したい。

WWD:認証の有無ではなく、対話をして本気だとわかったらサポートしてゆく姿勢ですね。それにしても少し前まで服を作る人が綿花の作り方まで考えることはなかった。ローラさんにとってはそれも含めてデザイン?

ローラ:そうだね。ベーシックなアイテムをエコな素材で作れたらいいな、といつも思っている。だけど農地の土を含めて環境に優しい生地はまだすごく少なくて、作りたいものがあっても素材は限られている。その中でチャレンジしようと決めているの。

WWD:「ステュディオ アール スリーサーティー」はベーシックなアイテムが多いから一見すると変わらないけど、使用する素材は進化しているのですね。メーンは、オーガニックコットン、リサイクルポリエステル、ウール。

ローラ:リサイクルポリエステルは今回は、ペットボトルからリサイクルした生地を使ってトラウザーを作った。

WWD:繊維由来のリサイクルペットボトルは使っていない?

ローラ:それもすごいいいことだけど、まだ値段が高くて、量も多く使わないといけないから今回はペットボトル由来にしたの。リサイクルウールのコートも作りたかったけど、同じ理由で断念。作る量はたくさんではなく、ほど良い数にしたいから。

リサイクル素材は再生するまでのプロセスが多いから当然価格が上がるでしょ?それなら、ヴァージンウールの方が良いのかな?とか今のベストを常に探している感じ。断念することが多い中でなんとか見つけてやっている。リサイクルでなくてもノンミュールジングウールなら、羊に痛みを与えない形で作られているし、ウールは天然繊維だから海に流れても大丈夫だしとか、一つ一つがすごく深いの。エコの価値、リサイクルの大切さがもっと広がったら変わると思う。

「ステュディオ アール スリーサーティー」は
“タイムレスとエコの2つのエネルギーが同時に入った服”

WWD:知らないと選べないことだらけですね。バングラディシュの縫製工場が崩落し多くの方が亡くなったラナプラザの事故から10年。ファッションの世界は良くなっていると思う?

ローラ:あの事故は私も本当にショックで今も覚えている。あれから10年だ……。どうかな、時間はかかっていると思うけど、少しずつ良くなっているかな。私は私ができる形でバランス良くやっているけれど、世界にも少しずつサステナブルやエコの話題が多くなっていると思う。紙ストローにするとか、マイカップを持つとか、物をたくさん持ちすぎない大切さだとかね。

WWD:「ステュディオ アール スリーサーティー」はどんな女性に支持されている?

ローラ:年齢は関係なく様々な女性にタイムレスに着て欲しいと思っていて、共感してくれる人が買ってくれていると思う。エコな服って見つけるのが大変。だから自分で作ろうと思ったのだけど、これをきっかけにエコな服という選択肢があることを知った方も多いのかな、と思う。

WWD:アイロン不要のシャツはいいアイデアですね。"アイロンが面倒で結局着ない服”はタイムレスじゃないから、毎日着ることを考えたデザインは大事だと思う。

ローラ:あのシャツは、オーガニックコットン自体が柔らかいから、アイロンをたくさん使うより、生地の良さが生かされると思ったのもあるの。タイムレスとエコの2つのエネルギーが同時に入った服をデザインチームと考えるのは楽しい。大変だけど少しずつやっている。

WWD:以前、食やアロマなどライフスタイルにも関心があると話していて、実際アロマテラピー検定の1級を取得したとか。他に今、学んでいることは?

ローラ:今は禅について学んでいる。茶道も好きだから千利休さんについて学んだりね。エコは心ともつながっていて、心に余裕がなければ、家に物が溜まっちゃう。「部屋の汚れは心の汚れ」は本当だと思う。エコは自分磨きとつながっているね。

WWD:本質的ですね。

ローラ:ヨガもそう。自分のこと、食、世界のことまでつながっているから楽しくて、学びながら行動している感じかも。

WWD:スウェーデン滞在は楽しんでいますか?

ローラ:このサステナブルの国に前から本当に来たかったから嬉しい。空港に降りてすぐ色々な物が目に入ってきた。子供達の遊具が木で作られていて自然を大切にしていることが感じられたり、お手洗いに使い捨ての紙ではなく繰り返し使えるタオルが置かれていて使い捨てを減らしていこうと言う意識が感じられたり。

WWD:ゴミ箱の分別が細かいですよね。「生ゴミ」「分けられない」という分類まである。

ローラ:それいいよね。30%分解性はどっちだろう?とかゴミって時々難しいから。

WWD:ストックホルムに来た理由である「マックスマーラ」は70年続くブランド。ブランドのクリエイティブ・ディレクターとして長く続けることについて、想いはあるのでは?

ローラ:これだけの長い歴史があり、ベーシックで色々なものに合わせられるタイムレスなデザイン、それが「マックスマーラ」の美しいところだな、といつも思う。色もベーシックカラーが多くて好きな世界観。タイムレスであることもサステナブルにつながると思う。

WWD:タイムレスでい続けるって難しいことで、どこか進化し続けることも必要。

ローラ:そうだね、でもどうだろう。ものを大切にする日本の文化では漆の器は1000年以上持つと言われていて、これは飽きるものではない。だから人それぞれの見方かな、と思う。何年も前に買った大好きなドレスはいつ着ても飽きない。物に対して自分がどう思うか、が進化することも大切。何が程よいバランスなのか常に考えている。

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