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第335回:アロンソが大怪我してたらどうなってたと思う?
言わずにゃおれんコージの富士F1グランプリ大改造計画!!

2007.10.04 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ

第335回:アロンソが大怪我してたらどうなってたと思う?言わずにゃおれんコージの富士F1グランプリ大改造計画!!

“管理F1”ってどうよ?

いやー行ってきました! 見てきました!! 富士スピードウェイ、31年ぶりの日本グランプリ! ハッキリいってレース内容は予想外に良かったです。結果として“ドライバーのサバイバル能力を観る”という意味ではこれ以上ないグランプリとなり、予選1位はもちろん、なんだかんだ決勝1位を獲得したハミルトンのドライビングは素晴らしかったし、チームのマヌケぶりにもめげず、3位をもぎ取ったライコネンもまた素晴らしかった。
逆に何度か失敗したあげく、単独クラッシュ&リタイアしたアロンソは特にいいところを見せられなかったけど、これは運不運もあるし、必ずしもドライバー能力の問題とはいえない。

しかしそんなことより気になったのは、“そもそもF1グランプリを富士でやってよかったのか? という疑問だ。不満タラタラのオーガナイズ問題もある。聞くところによれば、会場内での帰りのバス待ちが4時間かかったという証言もあるし、実は当初からバスによる観客のピストン輸送用に3000台が用意され、全部で6時間かかる! という試算もあったらしい。なんだ、わかってたんかい!

そのほか、例の1コーナーの観客席での3億5000万円の賠償問題をはじめ、俺自身、たかがバスの駐車場を出るだけで20分もの“歩き渋滞”があるのに驚いたし、細かい不満をあげたらきりがない。とにかく最初から問題が指摘されていた“管理F1”が、悪い意味で予想通りだったことに驚いたのも事実。

コージ、初のフジF1出撃! いってきまーす
コージ、初のフジF1出撃! いってきまーす 拡大
駐車場から出るのに渋滞。いきなりコレかー。
駐車場から出るのに渋滞。いきなりコレかー。 拡大
ここから先は一般車両は入れませーん! の交通規制。
ここから先は一般車両は入れませーん! の交通規制。 拡大

なんでもトヨタのせいにするのもいかがなものか

しかし、この問題は決してトヨタだけの責任ではないような気がする。もちろん責任は重いが、根本は、なにかあるとすべて企業側のせいにしてしまう国民性、行政側の問題も大きいと思う。

個人的には、富士スピードウェイは最初から混迷が予想されたパーク&ライドという観客輸送方式を採るべきじゃなかったんじゃないかと思う。多額の資金を使ってでも、高速道路からサーキットへ繋がる専用道を作り、サーキット近くに専用駐車場か民間臨時駐車場を誘致して、日本では珍しい“マイカーでいけるグランプリ”を開催してほしかったし、あるいは専用臨時電車をひくという方法もあっただろう。
そのほか、まわりにもっとアミューズメント施設を作ってヒマな時間を楽しませるとか、近くの温泉地に誘導するとか対処の仕方はいろいろあったはず。

だが、アミューズメント施設はともかく、専用道や専用列車はかなり行政の壁が分厚いだろうし、とにかくこれだけ“自己責任”という考えが薄い国だ。渋滞が発生すれば単純にトヨタの責任になり、事故が起こればトヨタとレースを観に来たドライバーの責任になり、いろいろ考えたあげく、安全と収益の面で無難(だと当初は思われた)パーク&ライド方式が採用されたのかもしれない。
それに比べると鈴鹿サーキットは幸いで、45年も前のいろいろ規制が緩かった時代にサーキットが作られたわけだし、絶対交通量も少なかったし、本田宗一郎という超一流のリーダーシップもあって、自然に今のようにファンと地域と一般人が共存するような関係が作れたんでしょう。単純に富士を鈴鹿と較べるのは不公平な気がする。

聞けばバス3000台だってさ。そりゃ渋滞するよね。
聞けばバス3000台だってさ。そりゃ渋滞するよね。 拡大
近所の人はどうしたんだろう……。
近所の人はどうしたんだろう……。 拡大

霧でレースどころじゃない

というか、俺が最も言いたいのはそういうことではない。昔っから富士周辺では霧の発生が多いという、超根本的欠陥だ。聞くところによると雨でも晴れでも曇りでも霧が発生しまくるという富士山麓。今回、俺はグランドスタンドで観戦していたのだが、当初はもしやこのままレースが行われないんじゃないの? と思った。
実は雨というより、霧の問題が大きい近代F1。土曜日のフリー走行がそうだったように、霧によって視界が制限されるとメディカル用のヘリコプターが飛べなくなり、結果としてレースを開催できないことになっている。
実際に俺が見ていた限りでは、スタート30分前はもちろん、5分前でも一向に霧は消えず、とてもヘリコプターが飛べるような状況じゃなかった。なにしろグランドスタンドから1コーナー、あるいは最終コーナーの先が見えないのだ。最悪、このまま赤旗で中止か? とも思った。

しかしほぼスタート予定時刻と共にマシンはフォーメーションラップに入り、セーフティカー先導の元にスタート! セーフティカーの後にハミルトンが続き、全車がグルグルと回り始めた。正直、俺は事態がよくわからないまま見つめていた。
しかし、一向に状況は変わらない。1周、2周……10周と過ぎ、スタンドには「このままセーフティカーが入ったまま、規定週回数を終えるんでは」というブラックなジョークまで飛び交った。ようするにそれだけ周りは霧が濃く、安全にレースができる状態ではなかったということだ。

ところがそう思った矢先の20周目、グリーンフラッグが出され、セーフティカーがピットインして本ちゃんスタート! F1マシン本気の轟音が鳴り響くと同時に、近代F1ではあり得ないであろう超リスキーバトルが始まった。1コーナーではみなが突っ込み、結構な確率でコースアウト。しかし富士はグラベルがないからそこから復帰でき、リベンジできるという超タフネスラウンド!
結果、1コーナーのお客さんの中には「早く帰ろうと思ったのに、楽しすぎて席を立てなかった」という人もいたし、「ハミルトンの強さがよくわかった」とか「コバライネンがやっと本来の強さを見せてくれて嬉しい」という人もいた。それはそれで喜ばしいことかもしれない。

しかし、それらは幸いになにもなかったから言えたこと。心配事はいっぱいあった。
一番わかりやすいのは、万が一、2年連続シリーズチャンピオンのアロンソがクラッシュし、瀕死の重症を負った場合はどうしたのだろうという問題だ。なにしろ300km/hで、ほとんど目隠ししたまま走っているような状態。なにが起こってもおかしくないし、実際に事故は起こった。そうなると一番問題なのは“霧”。ヘリコプターが飛ばず、時間遅れで最悪死亡となった時にどう責任を取ればいいのか? 当然、富士スピードウェイの責任問題、レース開催を決定した人間の問題となり、しまいには富士におけるF1グランプリも消滅していたかもしれない。

雨天決行。しかし本当の敵は霧かもしれない……。
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わりとずっとこんな感じ。ドライバーは“フォース”で走ってたんじゃないだろうか!?
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31年前のニキ・ラウダの警告!

そもそも富士スピードウェイでは、悪天候時の大事故がやたらに多い。国内レースだけでも雨の日、霧の日の事故が多く、例の太田哲也さんの事故もある。
というか実は、この問題はそもそも31年前からわかっていたことなのだ。当時のF1選手権のポイントリーダーであり、3度のワールドチャンピオンに輝いたニキ・ラウダが、76年の日本グランプリで雨と霧が発生し、「危険なので出場しない」と1周で走行を取りやめている。当時、ワールド・チャンピオンの決定が懸かっていたのにも関わらず、だ。

タダでさえ水しぶきで視界を妨げられるうえ、方向感覚を見失いやすい霧が発生し、さらにヘリコプターでの怪我人の緊急搬送もできない富士スピードウェイ。ここで世界ナンバーワン格式のF1グランプリを行うのは、そもそも無理なのではあるまいか? と俺は思った。
もちろんスピードウェイの歴史を考えるとF1をやりたくなる気持ちもわかるし、さらに晴れた日には富士山の麓で走れるという、まるで浮世絵も真っ青の景観も捨てがたい。だが、それ以上にこのリスキーさについて、もっと真剣に検討すべきなんではあるまいか。

というわけで俺は暴言であることを知りつつ、ここで大提案したい! それは今後、富士で行う日本グランプリは霧の発生が比較的少ない冬の11月に行うこと。もしくは思い切って、トヨタのホームサーキットを都内近郊に移転するということだ。個人的にはお台場、もしくは幕張あたりに、トヨタが新しい“東京サーキット”を作ってほしい。

ハッキリいって実現は相当に難しく、かなりの暴論である。富士は近くに東富士研究所もあってひとつのトヨタブランドのひとつだからだ。だが、これが実現したら利益、イージーアクセス性、安全性、ブランド性、あらゆる意味において最高な結果になるはず。少なくとも医療レベルでは世界最高の品質が得られるのも間違いない。
ってなわけでコージのほぼ暴言に近い日本グランプリ大改革! いかがでしょうか? って言うかかなり難しいことはわかってるんですけど、言わずにはおれませんでした!

(文と写真=小沢コージ)

ろくに座る場所がない。スポーツ紙に“F1難民”って見出しがおどってましたね〜。
ろくに座る場所がない。スポーツ紙に“F1難民”って見出しがおどってましたね〜。 拡大
トイレ難民もいた〜。
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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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