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大学院生って何をしている? 入試や学生生活、研究内容を教えます!

皆さんは「大学院」と聞いてどのようなイメージを持ちますか?「研究が大変でつらいところ」「就職先が少なそう」などのネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれません。そこで、早大大学院生3名にインタビュー。入学したきっかけや大学生活、研究のこと…謎に包まれた大学院生の実態を把握すべく、話を聞きました。さらに、記事の最後には、大学院に関する質問集を掲載。大学院進学を検討する際に、ぜひ役立ててください。

(左から)吉川さん、岸さん、岡野さん

▼人間科学研究科:吉川 錬太郎(人間科学部出身)
▼アジア太平洋研究科:岸 朱夏(教育学部出身)
▼会計研究科:岡野 哲也(先進理工学部出身)
◎大学院に関するよくある質問

研究に没頭できる贅沢な時間を送れるのは今だけ!

大学院人間科学研究科 修士課程 2年 吉川 錬太郎(よしかわ・れんたろう)

――いつ頃から大学院進学を意識しましたか?

本格的に研究を始めた大学3年生の春〜夏ごろです。先行研究でまだ指摘されていない事象を見つけて問題化し、自分の力で仮説を組み立てていくことに大きなやりがいを感じたんです。研究の面白さに気付いてから、就職だけでなく進学も視野に入れるようになりました。

――大学院入学試験に向け、どのような対策をしましたか?

進学しようと決めたのは3年生の12月ごろで、試験まであまり時間がありませんでした。ただ、私が利用した「内部選抜入学試験」で課されるのは、研究計画書の提出と面接の2つ。志望先は学部生のときから所属していた研究室だったため、先生に相談しながら計画書の作成を進められました。面接対策として志望理由を考える際も、計画書を基に無理なく取り組めました。

――大学院での学生生活について教えてください。

毎週開催されるゼミに参加しています。その日は少し早めに大学に行き、研究室の先輩方や仲間たちと、研究に関する雑談などをして過ごすことが多いですね。修士課程を修了するために必要な単位は、専門ゼミ以外は1年次に取り終えたため、現在は授業を受けておらず、比較的余裕を持ったスケジュールで研究に打ち込めています。

現在はコロナ禍の影響もあり、研究室だけではなく自宅で研究を進めることもあります。修士論文執筆のアイデアを練ったり、参考文献を読んだり、パソコンでデータを分析したり…。集中して論文を書き進めることもありますが、趣味のゲーム中や食事中に考えがまとまることもあります。

自宅での研究風景

――どのようなことを研究テーマとしていますか?

学部生の頃から「なぜ教育格差が生まれるのか」という疑問を持っていました。また、データ分析にも興味があったことから、この2つを学べる研究室を選びました。現在の研究テーマは「ひとり親世帯における教育格差について」。先行研究では、ひとり親世帯出身者は学歴において不利になる傾向が知られていますが、そのメカニズムは十分に検討されていません。私はこのメカニズムを、ひとり親世帯を取り巻く幅広い条件に焦点を当てて探っていきたいと考えています。

所属する橋本健二研究室のメンバーと。雑談やディスカッションを通じ、いつも刺激をもらっているという(左端が吉川さん)

――将来の目標について教えてください。

以前から、将来はデータ分析のスキルを生かせる仕事に就きたいという思いがありました。幸いなことに、マーケティングリサーチを行う会社の内定をいただいています。社会に出てからは、今までに培ったデータの収集・分析・活用のスキルをさらに磨き、これを武器に活躍したいです。一方で、社会貢献活動の一環として、教育格差に関する研究実績をどこかの場面で生かせたらとも思っています。

――最後に、大学院を目指す学部生に向けてメッセージをお願いします。

私自身もそうでしたが、ゼミでの研究を面白いと感じている学部生の皆さんには、ぜひ大学院進学を考えてみてほしいです。後先を考えずに研究に没頭できる環境は、就職してからはなかなか得られない貴重なものだと思いますよ。

大学院人間科学研究科Webサイト:https://www.waseda.jp/fhum/ghum/

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「自分には無理」と諦めず、将来を見据えて進学を考えて

大学院アジア太平洋研究科 修士課程 2年 岸 朱夏(きし・あやか)

――いつ頃から大学院進学を意識しましたか?

以前から憧れていたものの、大学院は「専門性のある、選ばれた人しか行けない場所」と考え、半ば諦めていました。そんな私ですが、大学3年生のときに履修した「映像制作実習」(GEC設置科目)をきっかけに、考えが変化。もともと脚本を書くことに興味があったのですが、実習で映画の企画・脚本・監督を経験したことで、自分が物語を作り出す際に必要な、背景知識や歴史認識を本格的に研究したいと思うように。4年生に上がる直前の3月に進学を決めました。

 

 

 

写真左:中国民族楽器である二胡(にこ)を習っていたことがきっかけで、もともとアジア地域に興味を持っていた岸さん。「アジア太平洋研究科」の名前を初めて見たときには、自分にぴったりだと感じたそう
写真右:「映像制作実習」で制作した映画『ななめの食卓』の制作メンバーと(前列中央が岸さん)

――大学院入学試験に向け、どのような対策をしましたか?

利用したのは「学内推薦入試」です。4年生の7月に研究計画書を作成し、9月に出願書類を提出、11月の面接試験を経て合格発表という流れでした。アジア太平洋研究科は学部を持たない独立研究科のため、私と同じ教育学部出身で院に進学した方やゼミの先生に入試に向けた相談をしました。また、この研究科では一定の英語力が必要とされるので、志望される場合は入学前に勉強しておくのがお勧めです!

――大学院での学生生活について教えてください。

この春学期は週2コマの授業と、週1回のゼミに参加しています。1年次はゼミに加えて週4〜6コマの授業がありました。ゼミがない日は、各授業の予習として論文を約3本ずつ読み込みますが、英語の論文が含まれることもあり、それだけで1日が終わってしまうことも。また、會津八一記念博物館で週1回スチューデント・ジョブ(学内アルバイト)をしています。

授業は英語と日本語の両言語で開講されていて、いずれかを選択できます。とはいえ、さまざまな国・地域からの留学生が多く在籍しているので日常的に英語が飛び交い、まるで留学をしているような感覚ですね。

写真左:週1回働く會津八一記念博物館(早稲田キャンパス)
写真右:学内推薦入試説明会に登壇したときのスライド。1年で大きな成長があったと後輩たちに話した

――どのようなことを研究テーマとしていますか?

現在、映画やドラマなどの映像作品において、国際共同制作の機会が増えています。私が注目しているのは、多様な国籍の人々と歴史を題材とした物語を作る際、どのように共通の歴史認識を作り上げるのかという点。特に東アジア地域を対象に、歴史学の観点から研究しています。

――将来の目標について教えてください。

博士課程に進み、現在の研究を深めていきたいです。歴史学は資料などに記された情報を基に研究が進みますが、資料からこぼれ落ちてしまう出来事もたくさんあります。そうした「資料に残されていない出来事」をいかに研究していくかを考えながら、脚本の勉強も続けていきたいです。記された歴史と、そうでない出来事の間を埋めるような脚本を作るのが大きな目標です。

『ななめの食卓』は、若手映像クリエイターの登竜門とされる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」でも上映された

――最後に、大学院を目指す学部生に向けてメッセージをお願いします。

大学院には仕事と両立している方や、子育てを終えて時間に余裕ができた方などさまざまな方がいます。学部生の皆さんには、卒業後の進路を「就職」「大学院進学」の2択だけではなく、より長い目で見て考えてみてほしいです。

また、私は歴史学について研究していますが、実は高校生の頃は歴史が苦手でした。大学院ではひたすら暗記をするのではなく、知りたいこと・分からないことを突き詰めて考えるからこそ、研究を楽しめています。大学院でやりたいことがあるなら、勉強に自信がないからと諦めず、ぜひ進学を選択肢の一つに加えてほしいです。

大学院アジア太平洋研究科Webサイト:https://www.waseda.jp/fire/gsaps/

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資格取得に「プラスワン」を 活躍する人材を目指す

大学院会計研究科 専門職学位課程 2年 岡野 哲也(おかの・てつや)

――いつ頃から大学院進学を意識しましたか?

大学3年生まで、漠然と研究者の道を考えていました。その思いがはっきりしたのは、祖母ががんに罹患(りかん)し、抗がん剤治療の強い副作用を目の当たりにしたとき。先進理工学部応用化学科に在籍していた私は、化学の力でがん患者を救いたいと考え、副作用の少ない抗がん剤の開発に関連する研究室を志望するようになりました。一方で、こうした薬は高コストで、服用者の経済的負担が大きいという課題があったんです。

そんなときに知ったのが、数理業務のプロとして保険商品の開発にも携われるアクチュアリーという職業。がん保険を開発することで経済的に苦しむ患者をも救えると考え、会計研究科アクチュアリー専門コースの進学に向けて大きくかじを切りました。

 

学部生の頃、所属する研究室で実験している様子

――大学院入学試験に向け、どのような対策をしましたか?

そもそもアクチュアリーになるには、日本アクチュアリー会の資格試験(※)に合格する必要がありますが、私は学部生の頃から資格試験の勉強を始め、第1次試験の2科目に合格していました。一方、入試ではGPAの基準をクリアしていたため、「学内推薦入試」を利用。4年生の7月に行われた書類選考と面接の口頭試問には、資格試験対策で身に付けた数学力を生かして対応できました。

(※)第1次試験と第2次試験に分かれ、年1回(毎年12月)に実施される。第1次試験では5つの基礎科目(「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」)全てに合格し、第2次試験では3つの専門科目コースのうち1つを選択した上で、コース内の専門科目2科目に合格する必要がある。

――大学院での学生生活について教えてください。

授業は1日2コマ程度と他の研究科よりも多く、空き時間には授業で課されるプレゼンテーションの準備などをします。また、毎週月曜は同期と、隔週日曜は教授や院生、修了生とともに、第2次試験に向けた勉強会をオンラインで開催。その他にはスチューデント・ジョブとして、週1〜2コマのティーチング・アシスタント(TA)業務を行い、研究科の後輩の学びをサポートしながら縦横の人脈を広げています。

勉強やTA業務の時間以外は、朝や就寝前に好きなお笑い番組を見たり、勉強の合間に戸山公園で筋トレをしたり、趣味の時間も楽しんでいます。

写真左:資格試験に向けて使用する教材は膨大な量になる
写真右:勉強会での一コマ

――現在どのようなことを勉強していますか?

勉強する際は西早稲田キャンパスにある理工イノベーションラボをよく使うそう

保険商品の開発や、決算業務、リスク管理などが主なテーマです。特に、保険会社の使命である「いかなる事態が起ころうとも保険金を安定的に支払う」ためには、高度なリスク管理が求められます。常に最新の論文や経済の動きも把握し、アクチュアリーとしてどのような行動をとるべきか考えています。ゼミではこうした情報の共有やディスカッションを通して知見を広めています。

加えて、ビジネス英語やデータサイエンスの授業を履修したり、医学部の友人に参考書を借りて独学で医学を勉強したりもしています。

――将来の目標について教えてください。

まずは、がん治療に精通するアクチュアリーとして活躍したいです。保険商品の開発に必要な医学的データを理解し、医者と詳細までディスカッションすることで、医者とアクチュアリーの架け橋になれると考えています。そして、将来はリスク管理のプロとして、増加・多様化する企業のリスクを一般企業の方々にも分かりやすく情報発信していき、「岡野が必要だ」と思われるようになりたいですね。

――最後に、大学院を目指す学部生に向けてメッセージをお願いします。

資格試験対策だけでなく、演習科目や実務に沿った授業も充実しているこのコースは、アクチュアリーを目指す人に最適な環境です。私が英語やデータサイエンス、医学を学んでいるように、時間に余裕のある学生のうちに「+1(プラスワン)」の学びとして周辺知識を得ることができるのも、資格取得を目指しつつ大学院に進学する大きなメリットだと実感しています。

大学院会計研究科Webサイト:https://www.waseda.jp/fcom/gsa/

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取材・文:萩原あとり

大学院に関するよくある質問

Q. 大学院に進学した際の学費や奨学金が気になります。

A. 学費の情報は、入学センターWebサイトで一括して確認できます。

また、早稲田大学では、大学院生向けの多様な奨学金を用意しています。奨学課Webサイトでは、奨学金の一覧奨学金申込から採用までのスケジュールおよび奨学金制度の採用実績(受給状況など)についても掲載していますので、確認してみましょう。加えて、研究科独自の奨学金制度も多く、今回取材した学生が在籍する会計研究科のように、入学前に申請し、入学後に受給できる奨学金制度を用意している場合もあります。さらに、全研究科の博士後期課程在学生を対象とした奨学金も充実しています。

Q. 修士課程は修了するのに2年かかるのでしょうか。

A. 研究科によっては修士課程1年制を設けている場合があります。さらに、学部在籍中から先取り履修をすることで、2年分の学びを1年に凝縮して身に付ける「学部・修士5年一貫修了制度」を設けている研究科もあります。

Q. 学部卒に比べて、就職が難しくなるイメージがあるのですが。

A. 大学院生の就職活動では、学部生と比較して「課題解決力」を期待されるようになります。「課題解決力」は、大学院での研究生活(自ら課題を設定し、仮説を立て、検証・分析し、結果を論文にまとめたり、プレゼンをしたりする)を通して身に付けることができ、その結果、より高いレベルの就職活動が可能となり、業種の選択の幅がぐっと広がります。

大学院での研究をしっかりと行った上で、自己理解と仕事理解を深めて就職活動に臨みましょう。各研究科修了生の就職率・就職先はキャリアセンターWebサイト(2021年度の情報は7月頃公開予定)や各研究科Webサイトで公開しています。

Q. 学部卒業後、一度就職してから大学院に入り直すことを検討しています。

A. 社会人経験を積んでから、早稲田大学大学院で学び直す方も多く、中には社会人入試、AO入試などを実施している研究科もあります。また、働きながら学ぶ学生のために、夜間に授業を開講している研究科もあります。入学センターの専用Webサイトを活用し、自身のライフスタイルに合った研究科を探してみましょう。

6月11日(土)大学院合同相談会

早稲田大学大学院進学を目指す方を対象として、多くの研究科が一堂に会する大学院合同相談会を実施します。今年は3年ぶりの対面開催を予定。進学を決めている方のみならず、学部1、2年の方を含め、大学院に興味を持つ方は大歓迎。各研究科などの教職員との個別相談を通じて、大学院に関するさまざまな悩みを解消しましょう。詳細はWebサイトを確認してください。

  • 日時:2022年6月11日(土)<第一部>12:30~14:30 /<第二部>15:00~17:00
  • 場所:早稲田キャンパス 総合学術情報センター国際会議場(18号館)
    ※要事前予約。予約はこちらから。 

大学院に関する詳細な情報は、各研究科のWebサイトなどで発信しています。また、入学センターWebサイトでは入試情報を始め、大学院の幅広い情報を提供しています。興味のある人はぜひ確認してみましょう。

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