トランプ前大統領に米上院が無罪評決 米議会襲撃の「扇動」の責任を巡る裁判はわずか5日で終了

2021年2月15日 19時20分

13日、米上院でのトランプ前大統領の弾劾裁判で、有罪評決への賛成57、反対43の結果を示すテレビ映像=上院テレビ提供、AP

 【ワシントン=金杉貴雄】米上院は13日、米連邦議会襲撃を巡る弾劾裁判で、共和党のトランプ前大統領に無罪評決を下した。トランプ氏は襲撃を扇動したとして史上初めて2回目の弾劾訴追を受けたが、同氏の根強い影響力を恐れ共和党内で有罪支持が広がらなかった。ただ、有罪票も過半数あり、同氏が受けた傷は小さくない。

◆新型コロナ対策を優先してスピード決着

 裁判はわずか5日で終了する過去に例のないスピード決着となった。バイデン大統領が最重視する新型コロナウイルスの経済対策法案の審議が遅れることを懸念したためだった。
 有罪には議員100人の3分の2(67票)が必要だったが、評決は有罪57、無罪43。共和党全50人のうち賛成は7人で10票足りなかった。過去に弾劾裁判を受けた大統領はほかに17代アンドルー・ジョンソン氏と42代クリントン氏の2人だけ(ともに無罪)だが、自らの党からの有罪票はなかった。

◆共和党幹部は「襲撃の扇動で実質的な責任ある」と認める

 共和党のグラム上院議員は14日、「共和党で最も強大な力はトランプ氏だ」と、今後の選挙でも協力が不可欠だと強調。同党上院トップのマコネル院内総務は「襲撃の扇動で実質的で道義的な責任があるのは疑いがない」と認めつつ、無罪票を投じたのは「退任した大統領を弾劾することは憲法上できない」からだと釈明した。

トランプ前米大統領=UPI・共同

 有罪票を投じなかったが、トランプ氏と決別した共和党員もいる。トランプ政権で国連大使を務め2024年の大統領候補の1人とされるニッキー・ヘイリー氏は「われわれは彼に従うべきではなかった」と批判。「大統領選への再出馬はできない。あまりに落ちぶれた」と語った。

◆トランプ氏は「魔女狩りの続きだ」と反発

 一方、トランプ氏は「弾劾裁判は米史上最悪の魔女狩りの続きだ」と批判した上で「米国を再び偉大にする取り組みはまだ始まったばかりだ」との声明を出した。
 1月6日の米議会襲撃事件では、警察官を含む5人が死亡。米メディアによると、失明や指の欠損、心臓発作など警察・警備当局者に少なくとも146人のけが人が出たほか、事件後に警察官2人が自殺した。
 弾劾裁判の審理では、トランプ氏が大統領選の結果が不正で盗まれたと根拠のないうそを主張し続け、集会で「死に物狂いで戦わなければ国が失われる」と数1000人の支持者をあおっただけでなく、襲撃を知りながら3時間以上も放置していた様子が時系列で克明に指弾された。

おすすめ情報

国際の新着

記事一覧