ようこそ!マイホームタウン つのだ☆ひろ × 春日

2019年11月13日 09時00分

今月の街先案内人

今回はミュージシャンのつのだ☆ひろさんがゲスト。生活の場として、そしてライフワークのひとつである音楽学校を運営する場として長年親しんでいる文京区の春日エリアを、たっぷりと紹介してくれました。

福島で生まれ東京・新宿で育つ

 昭和24年(1949年)に福島県白川郡で生まれた、つのだ☆ひろさん。
「もともと父親は浅草で理髪店を経営していたんですが、戦時中に実家のある福島に疎開して、戦後もしばらくそこに住んでいたんです。自分はこの疎開先で生まれました。一家揃って東京に戻ったのは1歳4ヶ月の時です」
 東京で新たに移り住んだのは新宿の十二社。現在、新宿中央公園のある辺りだ。ドラムに出会ったのも、十二社に住んでいた頃だった。

運営する音楽学校ワイルドミュージックではフルセットのドラムをレコーディングできるスタジオも完備。

「ある日、家で宿題をしていたらたまたまドラムのスティックを見つけたんです。うちは8人兄妹(きょうだい)なんですが、そのスティックは一番歳の近い兄が映画の『嵐を呼ぶ男』を見てから自分で作ったものだったんです。そのスティックで布団や缶を叩いて遊ぶようになりました。中学生になってから、近所にある熊野神社の能楽堂で毎週日曜日にロックのバンドが練習するのを見に行っていました。ある雨の日に外から練習を見ていたら、中に入らないかってバンドのメンバーから声をかけられて。その時に初めてドラムセットに触りました。
 我が家では中学三年生になると父親に、自分は将来何になりたいか宣言しなきゃいけない習わしがあったんですが、この時にドラマーになるって言い切りました。高校生になってからフリージャズのドラマーとして活躍していた冨樫雅彦さんに弟子入りしました。冨樫さんの家も参宮橋にあって、十二社から歩いて通っていました」
 高校在学中にすでにプロデビューしていた、つのださん。ドラマーとしても新宿という街に育てられたと言っても良いだろう。

聴覚障害者のための音響システム「夢のフォンシステム」の開発やプロモーションに関わるなど現在も精力的に活動中。

「辞める」ことは「始める」ことにつながる

 19歳の時に渡辺貞夫カルテットに参加したこと、そして自分から辞めたことが人生の大きな転機だったと語るつのださん。
「渡辺貞夫カルテットといえばジャズで日本トップのグループ。スイスのモントルー、アメリカのニューポートなどのジャズフェスティバルにもカルテットの一員として参加しました。渡辺貞夫さんの元、いつも良い演奏をしなければならないプレッシャーがあったのですが、自分としてはアベレージで良い演奏ができなかった。良い時と悪い時が出てしまう。それが自分としても許せなかったんです」

「ここは宮沢賢治が住んでいたところ」と案内をしてくれたつのださん。春日には歴史の痕跡が数多く残されている。

 しかし「辞める」ということは次に「始める」ことにつながる。一流のジャズカルテットを自ら辞めることで、ゼロから何かを始めることを学んだという。
 その後、ハードロックやポップスなど様々なジャンルの音楽にゼロから取り組んで来たつのださん。ここ春日に住まいを移したのも、音楽学校を始めるという新たなチャレンジがきっかけだったそうだ。
「子育ても終わったので、音楽学校を作ろうと思って3ヶ月間、学校が運営できそうなビルをネットで探しては夜に見に行くということを繰り返していました。そうして見つけたこの建物に越して来たのは14年前のことです」

細い路地のさらに奥にあったのは樋口一葉が使っていたという井戸。一葉の等身大の生活がうかがえるスポットだ。

歩いて見つかる街の魅力

「この辺りは、まだ裏路地がたくさん残っています。一本細い路地に入ると、別の景色が見つかる。子どものころ住んでいた新宿を思い出しますね」
 ウォーキングも好きだという、つのださん。取材中、一緒に街を歩くと自ら路地に入り、地元の人ならではの見所を教えてくれた。
「この近辺は、明治や大正時代のいわゆる文豪が数多く住んでいた地域です。歩いているとそういった人たちの生活の場が見えるのが面白いですね」
 樋口一葉、宮沢賢治、石川啄木、夏目漱石など国語の教科書でもおなじみの作家たちがこの地域には住んでいた。そういった見所を網羅した地図も販売されているが、つのださんは自分の足で歩いて見つけたそうだ。
 今回、紹介していただいたお店の多くも、つのださんが街を歩くなかで出会ったそうだ。
「昔からずっと続いているお店もあるし、ここで生活しているから分かるんですが、この辺りはお店を通じて人付き合いする文化が残っていますね。お店にちゃんとファンがついているんですよ」
 買い物のついでに立ち話をしたり、どこかに行ったらお土産を買ってくるといったことも自然に行われているそうだ。
 最後に、春日という街の魅力は何か、つのださんに聞いてみた。
「大きな武家屋敷があったお陰か、歴史の教科書に載っているような人の子孫が住んでいたり、小さなお店や路地にも歴史的な逸話があったり、知れば知るほどただものじゃない街だと分かりました。これからも歩いて色々見つけたいと思います」

◇春日図鑑 つのださんオススメスポット

1)まるや肉店
「菊坂コロッケで有名なお店です。このコロッケを差し入れにして持って行くと本当に喜ばれます。冷めても美味しいですよ」
東京都文京区本郷4-36-4 03-3812-0654 10:00~18:00ごろ 日曜・月曜休
2)石井いり豆店
「店頭で豆を炒っている、炒り豆のお店。お煎餅などもありますが、ひな祭りのあられが絶品なんです。毎年、予約して買っています」
東京都文京区西片1-2-7 03-3811-2457 9:00~19:00 日曜・祝日休
3)自家焙煎珈琲庵
「遅い時間まで営業しているしウォーキングの合間にここで一休みすることが多いです。コーヒーはもちろん、ホットケーキも美味しいです」
東京都文京区本郷4-25-11 03-5802-4810
[月~金曜]8:00~22:00 [土日曜・祝日]9:00~21:00
4)バールオステリア・コムム
「イタリアの家庭料理を食べさせてくれるお店です。お店のご夫妻がイタリアの様々な地方で食べた美味しい料理を再現してくれます」
東京都台東区谷中1-2-18 03-3823-4015 15:00~23:00(LO) 火曜休

◇PROFILE
つのだ☆ひろ 1949年8月1日生まれ。高校三年生の時に、鈴木弘とハッピー・キャッツのメンバーとしてプロデビュー。その後、ジャズやハードロック、ポップスなど多彩なジャンルのドラマーとして活躍。1971年にリリースした「メリー・ジェーン」など作曲家やシンガーとしても知られる。音楽学校ワイルドミュージック(https://wildmusic.jp/)も主宰している。

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