<社説>米中首脳会談 衝突回避へ対話重ねよ

2023年11月17日 06時47分
 バイデン米大統領=写真(右)、代表撮影・AP=と習近平・中国国家主席=同(左)=が会談し、軍・国防当局間の対話を再開することで合意した。両国の覇権争いが過熱して衝突にエスカレートしないよう競争を「管理」するには、不断の意思疎通が不可欠だ。対話再開を歓迎する。
 米国はロシア、中東、中国の「三正面」で対応に追われ、一方、中国は不動産不況で経済不振に見舞われている。緊張を緩和して関係を安定させたい思惑が一致し、1年ぶりの首脳会談が実現した。
 だが、安全保障の現場では、米中両軍が偶発的な衝突に発展しかねない事案が多発している。米側によると、10月には南シナ海上空で中国軍機が米軍機の3メートル以内に接近した。
 南シナ海や東シナ海の国際空域では、この2年間で中国軍機による同様の危険行為が180件以上確認されているという。海洋でも中国の威圧的な行動が周辺国との間で摩擦を起こしている。
 軍・国防当局間の対話は、昨年8月のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に中国が反発して途絶えていた。接触の機会がなくなれば相手の意図が読み取れず、疑心暗鬼が膨らむ。米中は対話を積み重ねて相互理解を深めてほしい。
 首脳会談の前には核軍備管理をめぐる高官級協議も行われた。中国は不透明な核戦力増強に走っている。核協議が核軍縮とリスク軽減につながることを望みたい。
 両首脳は地球規模の課題である気候変動対策での協調や、人工知能(AI)に関する協議開始でも合意した。習氏は「両国は世界に重い責任がある」と述べた。実際に、米中ともに大国の責任を果たすよう期待する。
 話し合いが平行線で終わったのは台湾問題だ。習氏は米国に台湾への軍事支援をやめるよう求め、「中国の平和統一」を支持すべきだと迫った。
 中国は台湾の武力統一に含みを持たせ、対抗して米国は同盟国と対中包囲網の形成を進めている。台湾有事になれば日本も巻き込まれかねない。衝突を回避するため米中は対話を欠いてはならない。

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