ネットでシェア買い 注目 匿名でOK、決済など個別

2023年9月21日 08時24分
 インターネットで同じ商品を買おうとする他人や知人同士が、一緒に購入することで割引を受けたりポイントを得られたりする共同購入(シェア買い)サービスが注目を集めている。現状と、上手な使い方を探った。 (神谷慶)
 シェア買いは一般的に、スマートフォンアプリなどで商品を選び、制限時間内に定められた人数以上が購入を申し込めば「成立」となる=図参照。既にある購入者グループに加わっても、交流サイト(SNS)などで自ら呼びかけてもいい。人数に達しなければキャンセルとなる。匿名で参加でき、決済や商品発送は個別で行われる。
 まとめ売りで単価を抑えられることや、商品PRを利用者が行うために広告費を減らせること、出店料が無料であることなどから、安く出品できる。国内では現在、数社の運営会社がアプリやサイトを手がける。

◆高い割引率

シェア買いアプリ「カウシェ」のホーム画面の例=カウシェ提供

 8月、記者はシェア買いアプリ「カウシェ」を初めて使った。参考価格(ネットでの通常価格)1750円の無塩ミックスナッツ(850グラム)は、初めての利用者がいるグループに適用される割引を利用すると999円(送料無料)となり、注文2日後に届いた。9月半ばには三重県産の焼きのり全型50枚999円(同)を注文。1日1回引けるくじで手に入れた8%引きのクーポンも使い、920円だった。最低2人で成立する商品だが、既に61人が購入していた。
 ただ、品ぞろえは大手サイトにまだまだ劣るようで、記者が普段買っているチョコレートやガムなどは扱っていなかった。
 カウシェは今年4月、累計ダウンロード数が150万を超えた。1年で2・5倍に。飲食品が充実し、セールをほぼ毎日実施しており、平均割引率は参考価格の1~3割引きという。
 廃棄される食品を減らそうと、外観は劣るが味は変わらない「訳あり」品も多く扱う。毎日アプリをチェックする静岡県富士市の主婦(33)は「賞味期限が間近の物も積極的に買っている。食品ロス削減につながれば」。門奈剣平社長(31)は「特売で人だかりができる市場(いちば)のような、人肌を感じられる空間を目指してきた。物価高騰の中で家計の助けになりたい」と意気込む。

◆仕様 “進化”

 カウシェは今月中旬から、ほとんどの商品を1人でも買えるように仕様を変更した。時間切れによる「不成立」をなくす狙いで、購入者が商品の感想をアプリ上やSNSで共有し、それをきっかけに別の人も購入すると、ポイントのように使える「コイン」を両者に付与。「広い意味のシェア買い」(担当者)の仕組みに変えたという。
 感想の正しさを担保できるかなどの懸念もあるが、「アプリ内の感想は、内容が適切か担当部署が随時確認している」としている。一方、従来の2人以上の購入を条件とする商品も、現時点で少数だが残る。
 アプリは他にも。19年9月に開始の「シェアモル」は、マスクやアクセサリー、スマホ関連雑貨などに力を入れる。多くは希望小売価格から3~6割引きだ。72時間以内に必要人数が集まれば購入が成立する。斎藤康輔社長(40)は「大手サイトで売れ残った商品も多く扱うことで廃棄を減らし、持続可能な社会に貢献したい」と話す。
 22年4月にサービスを始めたサイト「CoSTORY(コストリー)」も、24時間以内に、設定個数以上を買うことでネット通常価格よりも安くなる。お取り寄せグルメや、アウトドア用品など趣味性の高い商品が充実している。運営会社の手島湖太郎執行役員(37)は「サイト限定セットや受注生産品など『誰かと語るべき部分がある商品』を多くそろえている」とアピールする。

◆無駄遣い防ぐ「自分発」消費

八ツ井慶子さん

 家計のコンサルティングを専門とする「生活マネー相談室」代表の八ツ井慶子さんに、シェア買いサービスの上手な使い方と注意点を聞いた。
 クーポンやセール情報が次々現れる中では、「流されない」との意識が大切。クーポンは買いたい物がある時だけ使うものと捉え、常に「自分発」で消費行動を起こすことが無駄遣い防止につながる。「クーポンがあるから、セールをしているから、買う物を探そう」とは考えないことです。
 共同購入サイトを巡っては、届いたおせちが見本と大きく違ったというトラブルが過去にあった。ネットショッピングに共通して言えることだが、販売元の情報はよく確かめて。特に、食べ物や肌につける物は健康に関わるため、成分も調べる。送料も事前に確認を。その商品が合うかどうかは人それぞれなので、他人の口コミや評価は参考程度にとどめるべきです。
 物価高騰の折、「商品○グラム当たり○円」という単価を意識しつつ、例えば「ちょっと試してみたいから、安ければ、あわよくば…」という物を、安い時を狙って買う、といった使い方が賢明だと思います。

関連キーワード


おすすめ情報

ライフスタイルの新着

記事一覧