南こうせつさん「希望の兆し」を歌う 絶滅寸前ウミガラス「100羽記念」イベント

2023年3月11日 16時00分

ウミガラスとの出会いや保護の必要性について話す歌手の南こうせつさん=東京都港区で

 鳴き声から「オロロン鳥」と呼ばれる絶滅危惧種の海鳥ウミガラスの北海道・天売島てうりとうへの飛来数が昨年、33年ぶりに100羽を超えたことを記念して14日に東京都内であるイベントで、歌手の南こうせつさん(74)がウミガラスをモチーフにした自作曲を含むミニライブを開く。環境破壊に胸を痛めてきた南さんは100羽超の飛来を「とても大きな一歩。会場で参加者と幸せを共有したい」と語る。(加藤益丈)

◆14日都内、15日札幌で「オロロンの伝説」

 自作曲の題名は「オロロンの伝説」。コンサートで天売島を訪れた際、民宿にあった本で読んだ「おろろん伝説」に着想を得た。船で旅だった恋人の帰りを待ち焦がれるうちに命を落とした女性がオロロン鳥になった—という物語だ。
 南さんがウミガラスの国内唯一の繁殖地、天売島を初めて訪問したのは1997年。「船に乗り、島が見えた時、聞く人いるかなという不安がまずあってね」と振り返るが、実際には大勢の人が出迎え、杞憂きゆうだった。この時に初めて「オロロンの伝説」を歌い、その後は北海道ツアーの定番曲になった。
 この年のウミガラスの飛来数は24羽。島にいても実物を見ることはできなかった。推定8000羽が飛来した1960年代から激減していた。14日の記念イベントを企画した島在住の自然写真家寺沢孝毅たかきさん(63)から「絶滅寸前」と聞いてショックを受けた。
 フォークグループ「かぐや姫」時代の曲「おまえが大きくなった時」で「おまえが大きくなった時 あの枯れた大地に 咲いた名もない花が命を語るだろうか」と歌った南さん。原点は、大分県の川と山に囲まれた自然豊かな村で過ごした少年時代にある。
 「山で虫を追いかけ、川で魚を釣り、夕方に家から煙が上がるのを見て帰る。親は『大学に行って勉強しないと、食べていけない』と言うけど、星や川がこんなにきれいで、十分だろうと思った」と話す。
 5年前に島を訪れ、崖の上にいるウミガラスを見て「ペンギンに似ている」「かわいい」と感動し、「よー来てくれたね」「来年もおいで」と声をかけたという。ミニライブを「希望の兆しを感じるものにしたい」と意気込んでいる。

天売島の海岸近くの岩場に立つ2羽のウミガラス=2020年6月、北海道羽幌町で(環境省提供)

 14日の記念イベントは「天売島ウミガラス100羽記念祭」。開演は午後6時半(開場午後6時)、東京都品川区旗の台1の昭和大学上條記念館で。席に余裕があり、当日は無料で参加できる。15日には札幌市で同様の催しを開く。

 ウミガラス 太平洋や大西洋の北部と北極圏に生息する体長40〜45センチセンチの海鳥。頭や背中が黒色で腹が白色。海に潜り魚を食べる。陸上を歩く姿がペンギンに似ていて「空飛ぶペンギン」とも呼ばれる。天売島には3月ごろ繁殖のため飛来し、5月下旬〜6月に産卵した後、ひなを育て、8月ごろ島を去る。10月ごろまでオホーツク海など北方の海で過ごした後、南下して本州などで越冬するとされる。

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