呪術上、不吉だから?韓国の次期大統領、執務室を移転へ…研究者「凶地は間違い。原因は無能さ」
2022年4月11日 12時04分
韓国の尹錫悦 次期大統領が5月の政権発足に合わせ、大統領執務室を現在の「青瓦台 」から、国防省庁舎に移転させる事業を推進している。「帝王的権力の象徴を国民に返す」というのが表向きの理由。一方で歴代大統領の多くが悲惨な末路をたどったジンクスもあり、青瓦台がある地を「風水や呪術上、不吉だ」と恐れ、避けたい本音があるのではないか、と疑う声もある。(ソウル・相坂穣)
ソウル都心部の北端にそびえる北岳山 (標高342メートル)のふもとに青瓦台が立つ。12世紀に高麗の王宮、日本統治時代に朝鮮総督府が置かれ、独立後に大統領官邸となった。敷地面積は約25万平方メートルで、米ホワイトハウス(7万2000平方メートル)の3倍を超える。
◆「権威主義招いた」
尹氏は選挙期間中の2月、「青瓦台は王朝時代の宮廷の縮小版で権威主義を招いた。新しい空間での国政運営が必要」と主張。当選後の3月20日、大統領執務室を青瓦台から6キロ離れた龍山 区にある国防省庁舎に移転させ、青瓦台を国民に開放すると打ち出した。
龍山は、かつて旧日本軍が駐留し、戦後は在韓米軍基地となってきた地域だ。近年、約200万平方メートルの基地用地の返還が進められ、龍山公園の造成が計画されている。尹氏は、庁舎の近くまで公園を拡張し「国民とのコミュニケーションを強める」と説明した。
これに対し、文在寅 政権の大統領府高官は当初、朝鮮半島情勢が緊張するなか、「安全保障上の空白と混乱を招く」と批判。与党「共に民主党」幹部は「(尹氏が)風水師の助言を受けている疑いもある」と疑問を呈した。実際、尹氏は昨年10月、手のひらに「王」の漢字を書いてテレビ討論会に出演し、呪術を信じているのではないかと物議を醸したこともある。
ただ、執務室移転の必要性は、尹氏だけでなく、文氏を含め過去の大統領も主張。文、金泳三 、金大中 の各氏は青瓦台南方の光化門 、盧武鉉 氏は忠清南道 世宗 市への移転をそれぞれ公約に掲げたが、いずれも警備上の理由などで断念してきた経緯もある。
◆反対が5〜6割「移転が帝王の発想」
このため文氏は移転自体を否定できず、3月28日、大統領選後初めて尹氏と会談した際、「移転に関する判断は次期政権の役割」と協力を明言。6日の閣議で、関連予算360億ウォンの支出が決定され、史上初の執務室移転が6月にも実現する見通しになった。
ただ、龍山への執務室移転の是非を問う各種世論調査では、反対が5〜6割に上っている。ソウル市内の主婦(45)は「何百億ウォンかけて移転する発想が、既に帝王の発想」と苦笑。男性会計士(30)は「青瓦台は良くも悪くも韓国の歴史の象徴となってきた。簡単に移転してしまって良いものだろうか」と首をかしげた。
◆風水?いいえ、無能で権力乱用したから
日中韓の古代都市や住居建築で重視された風水を研究するウソク大の金枓圭 教授に、今回の移転を読み解いてもらった。
◆ ◆
青瓦台が風水上、不吉な「凶地」との解釈は間違い。全斗煥 、盧泰愚 、李明博 、朴槿恵 氏が退任後に刑務所に入るなど歴代大統領の暗い末路の原因は、彼らの権力乱用と無能さにある。
風水地理学の考えでは、青瓦台は北岳山の近くにあり、人物、権力、名誉を育てる閉鎖的な土地。一方、龍山は漢江の水に面して広がり、財、芸術、文化を養う開放的な土地だ。朝鮮王朝は国力が弱く外敵の侵入に耐えられないため、龍山を使う余裕がなかった。国力が増せば、海洋強国となる前線基地となり得る。
龍山を生かせるかは、大統領が、風や水のごとく柔軟に国民の意思に応え、和合の政治を進め世界に飛び出すことができるかにかかっている。(談)
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