レスリング女子で五輪3連覇した吉田沙保里(36)が現役引退を決断したことが8日、分かった。この日、自身の公式ツイッターを更新し、「この度、33年間のレスリング選手生活に区切りをつけることを決断いたしました」などと記した。2016年リオデジャネイロ五輪銀メダル以降、試合出場はなく、東京五輪への出場は明言していなかった。1年半後の五輪が刻一刻と迫る中、決断を下した。
3歳でレスリングを始め、亡き父・栄勝さんに教わった得意の高速タックルを武器に、百戦錬磨の活躍を見せた。01年から積み上げてきた個人戦の連勝記録は「206」。五輪(3度)と世界選手権を合わせて16大会連続世界一。霊長類最強女子の異名を持つ。12年には国民栄誉賞を受賞。明るいキャラクターで日本国内にレスリングを浸透させてきた。
一方、東京五輪に関しては明言を避けてきた。同大会の代表選考が本格化した昨年12月の全日本選手権(東京・駒沢体育館)には出場しなかった。大会初日には東京都内で行われたイベントに出席し「(リオ五輪後は)競技以外のことも経験することが増えて、ネイルとかマツエクとか女磨きもできるようになった。楽しい日々を送れている」と笑顔で話していた。
昨年2月に至学館大からの恩師で、日本協会の強化本部長だった栄和人氏(58)のパワハラ問題が発覚し、日本レスリング界は揺れた。吉田は同8月に同大の副学長を辞任。関係者によると「レスリングに集中したい」と申し出があった。現在は同大レスリング部コーチで、日本代表では兼任コーチとして活動する。日本代表合宿にも参加し、後輩らとスパーリングを行うなど精力的に取り組んでいたが、選手として再びマットに上がることは難しかった。
吉田沙保里(よしだ・さおり) 1982(昭和57)年10月5日生まれ、36歳。三重・一志町(現津市)出身。五輪は2004年アテネ、08年北京、12年ロンドンと3連覇。新階級導入に伴い、14年に55キロ級から53キロ級に転級。五輪と世界選手権で16大会連続世界一だった。157センチ。