モンキー・パンチ(1937~2019年)の人気漫画「ルパン三世」。これまでテレビ・劇場アニメ、実写映画と数々の映像化がなされてきたが、ついに新作歌舞伎「流白浪燦星(ルパン三世)」として、東京・新橋演舞場で12月に上演される。主人公、ルパン三世を勤めるのは片岡愛之助。ほか石川五ェ門を尾上松也、次元大介を市川笑三郎、峰不二子を市川笑也、銭形警部を市川中車が演じる。
原作者は歌舞伎好き
11月上旬に都内で開かれた取材会。「ルパン三世」の歌舞伎化について、脚本・演出を担う松竹の戸部和久は「新型コロナ禍の中、古典作品として将来発展できるような題材がないかと探していた。『ルパン三世』のキャラクターを歌舞伎に当てはめても汎用性が高いというのが大きな決め手となった」と話す。
さらにモンキー・パンチが歌舞伎好きだったことを紹介しながら、「もし江戸時代なら『ルパン三世』はすでに歌舞伎になっているのではないかと思ってしまうぐらい、台本上キャラクターの設定を苦労なくできた」という。
逆に一番苦労したのは、歌舞伎らしく見せるビジュアル化だった。「ルパンといえばこれだ、というイメージがある。ただ、そのままやってしまうと古典の歌舞伎の世界にはまらない。どうやったら歌舞伎として成立するかを考えながら衣装を考えていった」
あのせりふ回しも…
演目の「流白浪燦星」という漢字表記については、大野雄二が作曲した「ルパン三世のテーマ」の歌詞に出てくる「空をかける ひとすじの流れ星」と、盗賊が活躍する歌舞伎のジャンル「白浪物」から漢字を当てはめた。
ストーリーは、大盗賊、石川五右衛門が実在した安土桃山時代を舞台にしたオリジナル。時の天下人、真柴久吉も登場し、秘宝・卑弥呼の金印を狙う者たちによって物語が展開する。
大野のオリジナルテーマ曲は和楽器にアレンジされ、見せ場で使われる。「古典の竹本(義太夫節)の演奏も入るので、音楽も楽しんでいただけたら」と戸部。
演出は、だんまり(暗闇の中で互いに探り合いながら争うさまを様式化)や、本水(本物の水)も登場するので、「歌舞伎らしさ全開の舞台づくりになっている」と愛之助。「漫画のスタイルのままやるわけではないが、やはりお決まりのせりふは入れさせていただいている」と愛之助は明かし、ルパンが峰不二子を呼ぶときの「ふーじこちゃあん」という独特の節回しも披露し、会場の笑いを誘った。
まさか土下座は
ルパンの印象について、愛之助は「ダークヒーローの格好良さがある。〝悪を以て悪を制す〟ようなところがすごく気持ちがいい。そして、あれだけだまされても峰不二子に一途なところや、おちゃめなところが、長く人に愛されるゆえんでは」と語る。
中車との共演については、「どんな銭形なのか、大体想像がつく。さすがに(中車=香川照之出演のテレビドラマで有名になった)土下座は出てこないと思うが、まずは稽古が楽しみ」と笑顔を浮かべた。
12月5~25日。問い合わせは、チケットホン松竹(0570・000・489)。
(水沼啓子)