日銀の植田和男総裁による先月下旬の金融政策微修正をきっかけに、市場は波乱含みだ。長期金利上限0・5%を「めど」と位置づけ、1%までの上昇を容認したのだが、「蟻の一穴」になりはしないか。
長期金利とは、国債金利のことである。国債の発行残高は5月末で1089兆円、このうち5割以上の575兆円を日銀が保有し、令和4年度の国内総生産(GDP)562兆円をしのぐ。その国債金利が0・1%上昇するだけでも新規国債の発行コストは大きく膨らむ。それに償還期間10年の国債金利の上昇0・1%はラフに計算して元本相場の1%に相当するので、日銀資産の目減りも数千億円規模になりかねない。
国債は証券市場で株式を圧倒する。国債発行残高は東京証券取引所の株式時価総額855兆円(5年7月)をはるかに超える。取引が行われる1日当たりの売買高はこの6月が183兆円で、株式売買4・8兆円の38倍にも上る。