新年度がスタートし、入学式シーズンが始まった。昨春、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、入学式が中止・延期となった各地の大学では、新2年生を対象とした1年遅れの入学式が企画されている。思うようなキャンパスライフを送れないまま1年を過ごした学生らは、感染防止に細心の注意を払いながら、再スタートの日を迎えた。
「昨年は週に1回しか大学に行けない時期もあった。やっと大学生になれた実感が湧いた」
3日午後、兵庫県西宮市の関西学院大上ケ原キャンパスで開かれた新2年生を対象とした入学式。参加した的場智也さん(19)は笑顔を見せた。
関学大では昨年4月の入学式がコロナの影響で中止になり、授業も大半がオンラインとなった。緊急事態宣言が発令されていたこともあり、新入生はほとんどキャンパスへ足を運ぶ機会がないまま、大学生活をスタートさせた。
この日は参加を希望した大学や大学院の2年生約2500人が集まり、2回に分けて式を開催。村田治学長は式辞で、コロナの影響を受けた1年間に触れ、「充実した大学生活とはいえない状況だったのではないかと思う。ポストコロナの社会を思い描いて残された3年間を集中して過ごしてほしい」と学生にエールを送った。
会場は学生以外の入場が制限され、式場の外ではスマートフォンでオンライン中継を見守る家族の姿も。式に参加した女子学生(19)は「1年たってから入学式というのは不思議な気分だけど、一度しかないことなので参加できてよかった」と話した。
2年生向けの入学式の開催は、各大学で広がっており、関西では京都大や大阪大でも挙行される予定。首都圏でも上智大が3月末に開催し、学生たちが入学の喜びをかみしめた。
一方、今年度の新入生向けの入学式は、規模の縮小や分散開催など感染防止対策を講じながら対面で実施する大学が多くなっている。
例年は卒業生のつんく♂さんがプロデュースする入学式が話題となっている近畿大(大阪府東大阪市)は3日、新入生向けの入学式を対面で開催。マスクの配布や座席の消毒などを徹底した上で、例年よりも時間を短縮し、2回に分けて新入生を迎えた。
ただ新型コロナは感染の再拡大傾向が鮮明になっており、予断を許さない状況が続く。横浜国立大や埼玉大は今年度も入学式を中止するなど、大学によって対応が分かれている。
■小中高でも実施
新型コロナの感染拡大に伴い、昨年は小中高校でも都心部を中心に入学式を中止や延期とした学校が相次いだ。今年は感染対策を徹底して実施されることとなり、保護者らは胸をなでおろしている。
「新しい友達ができたらいいな」。学校生活への期待に胸を膨らませるのは、大阪府吹田市立小学校に入学する大垣空翔(そら)くん(6)。府内では感染が再拡大しているものの、入学式は行われる予定で、母親の薫さん(42)は「当たり前が一変してしまった中で、入学式をしてもらえてありがたい。元気に楽しんでほしい」と話す。
昨年4月7日に発令された緊急事態宣言の対象区域となった大阪府などでは、多くの学校で入学式が中止や延期となった。大阪市は発令の決まった6日夜に一律中止を決定。ほぼ全ての市立小学校が7日に式典を予定し、準備を整えたところだった。市立中学校の多くは既に式典を終えていたが、約2割の学校で中止となった。
市立関目東小学校(同市城東区)でも、昨年は感染対策として運動場で実施予定だった式典がなくなったが、今年は7日に体育館で行う予定。「密」を避けるために来賓は招かず、換気などの対策を徹底するといい、浦源之郎(げんしろう)教頭は「再び入学式ができることは感慨深い」と語る。
同じく昨年は中止となった府立北野高校(同市淀川区)は1日、無事に入学式を終えた。会場の講堂が手狭なため、参列は新入生らに限り、保護者は各教室で式典の中継を見守った。佐々木里佳教頭は「入学式ができて安堵(あんど)している。今まで通り感染対策をし、平穏な学校生活を送れるようにする」と述べた。