岸田首相(前列左から3人目)、松野官房長官(同4人目)と記念写真に納まる政務官ら=15日、首相官邸
岸田首相(前列左から3人目)、松野官房長官(同4人目)と記念写真に納まる政務官ら=15日、首相官邸

 岸田文雄首相が第2次内閣の再改造に併せて行った計54人の副大臣・政務官人事で、女性は含まれていなかった。閣僚に過去最多の5人を起用したことでよしとするなら、首相がアピールする「女性の活躍促進」の方針は、見かけ倒しと言わざるを得ない。

 先ごろ発令された副大臣は26人で、政務官は28人。岸田首相と一緒に官邸内で記念撮影に臨んだが、副大臣はモーニング姿、政務官はスーツ姿の男性がずらりと並んでいた。ジェンダー平等への取り組みが求められている中、異様な光景だった。

 「政治分野における女性の参画拡大は重要」とする第5次男女共同参画基本計画を推進すべき政府内の人事である。2020年に閣議決定された同計画は「20年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるように目指す」とも明記している。

 副大臣も政務官も、省庁ではトップの閣僚とともに「指導的地位」にある。自民党が政権復帰した12年の第2次安倍内閣以降、女性がゼロになったのは初めてだ。社会の要請に逆行した人事と批判されても仕方あるまい。

 首相は昨年8月の内閣改造時から女性閣僚が3人増えたことを踏まえて「どの閣僚にどの副大臣、政務官を付けるのか、チームとして人選した」と説明した。しかし、男女共同参画への道を開くという強い意識が首相にあれば、副大臣と政務官ポストを男性が占める結果にならなかったのではないか。

 前回の人事では副大臣4人、政務官7人が女性だった。自民党の国会議員で言えば、約12%にとどまる女性議員の多くが副大臣、政務官を一度は経験する一方で、男性議員には未経験の「待機組」が多く残る。

 自民党内の各派閥からこうした男性議員の処遇を迫られたことも、女性ゼロの要因だろう。閣僚にも当てはまるが、順送り人事では、首相が常とう句にする「適材適所」であるか疑念が湧く。能力があれば2度目、3度目であっても女性議員を充てることがあっていいのではないか。

 自民党は今年6月、党所属の女性国会議員の割合を、今後10年間で30%に引き上げる目標を打ち出した。首相は内閣改造後の記者会見でこの目標に触れ「女性議員の活躍促進を最重要課題としている」と強調。自民党四役に抜てきした小渕優子選対委員長には、女性候補者の発掘、支援の「先頭に立っていただきたい」と述べた。ただその際、小渕氏を「選挙の顔として期待している」とも語っており、女性の役割への偏見が垣間見えたと言えよう。

 政界に女性が進出するには、まずもって自民党を中心に国会で圧倒的多数の議席を占める男性の意識改革が必要だ。同時に制度的な対応を考えなくてはなるまい。

 政党に選挙の候補者数の男女均等を促す法律が18年に成立したが、努力義務で罰則はない。国会の現状を考えれば、実効性を持たせる方策を本格的に検討する時期だ。

 政党ごとの努力はもちろん欠かせない。次期衆院選で比例代表名簿の上位に女性候補者を位置付けるのも一案であろう。当選可能性が高まるためだ。首相は自民党総裁でもある。男女格差のない、多様性が尊重される社会構築に向けた本気度が問われることになる。