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「ラスボスは“違和感”だった」孤高のラッパー・般若が語る成功への渇望と、表舞台へのこだわり

 約24年のキャリアを誇り、“孤高のラッパー”としてヒップホップシーンで独特の存在感を放っている般若。2015年9月より放送が始まったテレビ朝日系のMCバトル番組『フリースタイルダンジョン』(現在は放送終了)では、約3年半にわたり初代“ラスボス”として君臨し、若者を中心としたシーンの人気を支えた。2019年1月には、東京・日本武道館にてワンマンライブ『おはよう武道館』を開催するなど、現在も第一線で目覚ましい活躍を見せている。今月25日より、自身初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』が全国公開される。それに先駆けて般若にインタビューを敢行し、映画に込めた思いのほか、自身の活動や現在のヒップホップシーンについて語ってもらった。

自身初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』への思いを語ったラッパー・般若 (C)ORICON NewS inc.

自身初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』への思いを語ったラッパー・般若 (C)ORICON NewS inc.

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■自ら番組降板を申し出「俺はMCバトルの人間じゃない」

 『フリースタイルダンジョン』に出演する以前から、ヒップホップシーンにその名を轟かせていた般若。同番組に出演したことで、一躍“全国区”の知名度となった。自身もその影響について「ポジティブに言えば大きかったんじゃないですかね。ある意味、社会現象にまでなった。デカかったと思う」と好意的に受け止めた。

 一方で、2008年12月に大阪で開催された『ULTIMATE MC BATTLE 2008 決勝大会』で優勝して以降、MCバトルから遠ざかり、音楽活動に勤しんでいた自分が番組内で“ラスボス”と呼ばれることに違和感もあったと明かす。「全然ありますよ。それまでやってきた十何年の音楽活動は『何だったんだろう?』って思う瞬間もあった」と戸惑いを吐露。

 「俺はここ(MCバトル)中心の人間じゃないっていうのが元々あった。この話を受けたら、『この人はここの人間なんだ』っていう認識をされたような気がした。けど、当の本人は(MCバトルで)現役じゃない。やってはいたけれども、他の大会に出てる現役の人間が(番組に)たくさんいて、その人たちのことを考えた時に『ちょっと申し訳ないな』っていう気持ちになりましたね」と本音を漏らした。そして、番組が徐々に人気になっていくのと反比例するように、その違和感は次第に強くなっていった。「『あ、バブルになったな。絶対終わるわ、これ』って思ってた。だから自分の意志で辞めました。初期の段階からずっと引退を考えてましたよ。本当に続けた方だと思います」。

■映画オファーは喜びより不安「成功したと思ってない」

 この映画では、時代や流行に流されることなく、日本語によるラップにこだわり、その独特なリリックで日本のヒップホップシーン、そして音楽シーンに大きな影響を与えてきた般若の姿を描いている。壮絶ないじめを経験し、音楽との出会いとジレンマ、自殺をも考えた壮絶な過去。どん底から拾い上げた言葉は多くのファンを魅了し続け、ついに武道館ワンマンライブを成功させた。今まで語られることの無かった父への想いや、今後について赤裸々に語ったアーティスト・般若初の長編ドキュメンタリーとなっている。

 公開を控えた心境について、「正直言うと、あんまり実感ないんですよね。ちょっと恥ずかしい気持ちもありつつ、これを見て何かになってくれたらいいなって感じですね」と謙虚に語った。映画のオファーを受けた時は、意外にも喜びよりも不安が勝ったという。「『なんで俺なの? 大丈夫?』って感じでした。自分はうれしさよりも、逆に不安になるタイプ。ドキュメンタリーとか、人様に語れるほどの人生ではなかったんじゃないかって」とつぶやく。

 「決して成功してきた人間じゃないし、成功したと思ってない。この作品は、むしろヒップホップを聴かない人に見てもらいたい。何かしらのジレンマやしがらみを抱えていたり、くすぶってる人にも。その方が伝わるのかもしれない」と映画に込めた思いを明かす。今でこそ般若は全国的な知名度を得たが、そのアーティスト活動は決して順風満帆だったわけではない。少しでも自身の存在を認知してもらうため、他のアーティストのライブに乱入して“マイクジャック”をすることも多々あった。「反面教師にしてもらっても全然構わない。むしろその方がいいかもしれない。勇気を与えるなんておこがましいですけど、『こんなやつがやれてるならいけるでしょ?』って思ってもらいたい」。

 キャリア20年以上を誇る般若を今まで突き動かしたもの。それは「認められたい」という強い思いだった。「辞めたかった時もあったんですけどね。悔しかったんじゃないですか。認知もされずに消えていく。でも、そういう人の方が多いのかもしれないです」と打ち明ける。これまでの活動を振り返り、「認められたかどうかは全然わからないです。ずっと『違うんじゃないか』って思う瞬間もあります」と、ぽつり口にした。

 昨年開催した自身初の日本武道館ワンマンライブは大盛況のうちに幕を閉じた。それでも、その不安は拭えていないという。「この顔と名前は知ってるけども、音楽を再生するっていう行為には至ってない。そこを増やしていかないといけない。音楽を聴かせるための行為を考えていかないといけない。それを常日頃考えることが闘いです」と苦悩を告白した。

 アーティストとして成功したから半生を振り返る映画を制作したわけではない。本作には「今も自分は闘ってるんだ」という思いが込められている。「(自分の活動は)完結はしてない。完結してたら、俺は武道館で辞めてますよ」。

■表舞台にこだわり、“孤高のラッパー”のスタンス貫く

 目標としていた日本武道館公演も達成し、自身の半生を描いた長編ドキュメンタリー映画も公開。次に見据えるものを問うと、「もっと音楽を広めたい」と言葉に力を込めつつ、「ヒップホップのことはどうでもいいです。それは俺以外の人間たちがやるでしょ。それは俺が決めることじゃないです」ときっぱり。「今ごろ(活動を)辞めて、適当に若い奴らから金をとってプロデュースすることもできる。でもそうじゃない。そうじゃないからこそ、(音楽活動を)やってる」と、表舞台に立つことへのこだわりを見せた。

 今抱えている課題も冷静に分析している。自身のファン層について「20代後半〜30代後半」としつつ、「家庭を持ったり、ファンの人生の環境も変わってきて、受け取る言葉も変化してきている。『今でも好きだけど、昔のほうが好きだった』っていう人もたくさんいる。そこをミックスさせていくのが今後の課題かなと思いますね」と考えを明かした。そのためには「自分の気持ちに素直になることじゃないですか。上手さよりも、気持ちがあるかどうかだと俺は思って。だけど勉強、研究しなきゃいけないところもたくさんあるのも事実。うまい人から盗むのもいいと思います」と向上心は尽きない。

 そのストイックな姿勢は引き締まった体にも現れている。「仕事だと思って割り切ってトレーニングをやっている。そうじゃなきゃ(つらすぎて)やらないですよ。でも説得力ないじゃないですか。MCバトルでだらしない体のやつの言葉は、はっきり言って何一つ俺に響かないんですよ。人前に立つのに、『なんでそんなダラシない体してるんだよ』って思うんですよね。そこはしっかりしていきたい」と自分にあえて厳しいトレーニングを課す理由を説く。「俺は今年の3月からライブをやってないが、今でも1時間半〜2時間のライブを120%でやれる頭とフィジカルはある」と自信をみなぎらせる。

 これからも“孤高のラッパー”としてのスタンスを貫こうと考えている。「アルバムも出さないでキャリアだけ長くなったり、ずっと審査員や司会をやるような人間になるつもりはない。あくまでそこは現役でやっていきたい」と強調する。そして最後、「自分の身の丈に合った言葉で、自分の身の丈に合った曲を作っていきたいなっていう思いがある。だから、楽曲も肉体も衰えたら辞めます。響かないです」と般若らしい言葉で、自らの引き際について語った。

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  • 自身初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』への思いを語ったラッパー・般若 (C)ORICON NewS inc.
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  • 自身初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』への思いを語ったラッパー・般若 (C)ORICON NewS inc.
  • ラッパー・般若初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』より
  • ラッパー・般若初の長編ドキュメンタリー映画『その男、東京につき』

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