日大が、違法薬物問題に揺れるアメリカンフットボール部の廃部を決めたことが28日、分かった。複数の関係者によると、大学本部がこの日「競技スポーツ運営委員会」を開き、部の存続を認めず廃止する決定を下した。27日には、警視庁薬物銃器対策課が麻薬特例法違反の疑いで新たに3年生部員を逮捕。8月の寮の家宅捜索後、この問題を巡る部員の逮捕は3人目となっていた。18年「悪質タックル問題」以来となる来季の関東大学リーグ1部下位BIG8への降格は確定していたが、部がなくなる最悪の事態に進展した。

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不死鳥フェニックスが愛称の名門が、消滅する。学生日本一を決める甲子園ボウルで関東最多21回の優勝を誇り、社会人と頂点を争った時代のライスボウルでも88~90年度の3連覇を含む4度の制覇。日大を代表する部活動だったアメフト部の廃止が、この日の競技スポーツ運営委員会の議論をへて中村敏英監督ら幹部へ決定事項として伝えられた。

くしくも同委員会は、同部が18年に悪質タックル問題を起こした際、各競技部の適切な運営、管理について審議するため設置されたもの。社会問題になった5年前から改革を推進してきた委員会が廃部を決めた。

事件を巡っては、今年8月に3年生部員が麻薬取締法違反罪で起訴された。10月には同部屋だった4年生部員が2人目の逮捕者となり、麻薬特例法違反容疑で略式起訴。さらには前日27日、新たに3年生部員が同法違反の疑いで3人目の逮捕者となっていた。8月8日の会見では、競技スポーツ担当の沢田康広副学長が部の存続について問われ「仮定の話で分からないが、もし(逮捕者が)複数ということであれば(廃部も)考えなければならない」との認識も示していた中、約3カ月後に現実となった。

チームとしては、既に来季の降格までは確定していた。関東学生連盟から8月10日に「部関係者全員が違法薬物に潔白であると保証できない」などの理由で「当面の間の出場資格の停止」を科され、大学側も同月末で寮を閉鎖。2度目の無期限活動休止処分とした。関東大学リーグ1部上位TOP8の全7試合も中止。今月8日には関東学連が出場停止を「当面の間」から「今季」へ変え、下位BIG8へ自動降格していた。

その後は経営陣の内紛に話題が移った。酒井健夫学長と沢田副学長の辞任が避けられない情勢となった一方、同副学長が、事件後に合理的な理由なく辞任を強要された等のパワハラを訴え、林真理子理事長に1000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。学生全体を置き去りにする醜態をさらして荒れた水面下で、取り沙汰されていた廃部の協議が進んでいた。今後、大学側が経緯や理由の説明を部へ伝えるという。

 

◆日大アメリカンフットボール部 

★創部 1940年(昭15)に創部。フェニックスの愛称は50年代に最強を自負した全日大の不死鳥〓(人ベンに貝の目が組のツクリ)楽部に由来。チームカラーは赤。

★初優勝 55年、のちにカリスマ監督となる篠竹幹夫が4年時に関東初優勝し、甲子園ボウルで関学大と引き分けて初優勝した。57年には単独で優勝。

★黄金期 59年に篠竹幹夫が監督に就任。特徴的なパス攻撃を繰り出すショットガン隊形を導入。徹底したスパルタ指導で常勝軍団を作り上げた。61年から4連覇、78年から5連覇を達成。03年に定年退職するまで44年間の監督在任中、17度の学生王座に導いた。

★低迷 関西勢中心に他大学が強化してきたこともあり低迷。甲子園ボウルは90年を最後に優勝から遠ざかった。17年に27年ぶりで甲子園ボウル制覇。21度目の優勝で名門復活と思われた。

★悪質タックル問題 DL宮川が18年5月の定期戦で、パスを投げた後で無防備だった関学大QB奥野に背後から激しくタックル、腰などに3週間のけがをさせた。社会問題に発展。日大の第三者委員会は当時の内田監督とコーチの指示を認定。日大は2人を懲戒解雇処分とした。