震災から5年経った時、楽天三木谷オーナーが感じ、見ていたもの／インタビュー
楽天の三木谷浩史会長兼オーナーは、3月11日が誕生日。東北に本拠地を置く縁ができ、一層、特別な日になりました。震災から5年の節目に行ったインタビューを再掲載します。(2016年3月11日掲載。所属、年齢などは当時。敬称略)
プロ野球
楽天の三木谷浩史会長兼オーナーは、今日3月11日に51歳の誕生日を迎える。神戸出身で、95年の阪神・淡路大震災では親族を亡くした。海外出張のはずが、向かった場所は遺体安置所。天が与えるあらがえない試練に深く関わり、傷つき、奮い立ち、自らの人生を切り開いていく。東北楽天の経営者として、いち個人として。震災から5年の節目に聞いた。
◆三木谷浩史(みきたに・ひろし)1965年(昭40)3月11日、兵庫県神戸市生まれ。明石高から一橋大を経て88年日本興業銀行入行。93年米ハーバード大学院でMBA(経営学修士)取得。95年興銀退職、96年クリムゾン・グループ設立。97年エム・ディー・エム(現楽天)を設立。04年Jリーグ・ヴィッセル神戸のオーナーに就任。同年はプロ野球界にも参入し、東北楽天ゴールデンイーグルスを誕生させた。08年1月球団オーナーから退任、球団代表取締役会長に就任。12年8月から球団代表取締役会長兼オーナー。
2011年4月29日、試合前、ファンに向かってあいさつする三木谷浩史楽天会長
大きなテーブルを挟んで向かい合った。腰を下ろそうとすると、三木谷がグッと身を乗り出してきた。「この間、見に行ってきたんですよ」と笑った。
顔を寄せ合ってのぞいた端末の動画は、コボスタ宮城の外野。天然芝に張り替えられた、まぶしい緑だった。「いいですね。楽しみです。本当に。僕は天然芝にある程度…13年、ずっとこだわり続けてきた。やっと夢がかなえられた感じがあるんです」。
寒冷地で天然芝を維持することは簡単ではない。時間がかかろうとも、諦める気はさらさらなかった
「小さくまとまるんじゃなくてね。日本の球場がドーム化でまとまる中、天然芝に観覧車。『やるか、そんなこと』っていう。決断です。決断は、失敗することもある。けど、決断することで、東北の人に喜んでもらいたい」
天然芝は自分の夢。同時に、震災から5年の東北に向けたプレゼントでもあった。
東日本大震災、Kスタ宮城のスコアボードの時計は2時48分で止まっていた（Kスタ宮城）＝2011年3月11日
「すべてのスポーツは素晴らしい。その中で野球が、僕的に特にいいのは、自然環境が入ってきたりして、変化がある。球場にも多様性があって、そこで変化が生まれて、あらゆる楽しみ方ができる。見たいよね。オコエのジャンピングキャッチ。いっぱい見られるんじゃないかな！」
穏やかな言葉の端々に、イーグルスの果たす役割と「決断」という自分の軸がちりばめられていた。
質問を挟む必要もなく、三木谷はそのまま丁寧に語っていった。バックボーンには地震が深く関わっていた。
3月11日が誕生日
もともと会社を興したのも、95年の阪神・淡路大震災がきっかけだったのです。おじと叔母、友人をいっぱい亡くしました。
東日本大震災が起こったのも、私の誕生日である3月11日という。何と言いますか…。妙な縁と言いますか。原発の事故もあり、「このまま、日本が終わってしまうんじゃないか」と、覚悟をしました。
できることは、すべてやろう。そう決めました。楽天という会社もそうですし、イーグルスの選手、職員を含めても、三木谷浩史、個人でも。少しでもお役に立てればということで、さまざまな活動をしています(※)。
(※)東日本大震災発生直後、球場周辺にテントを設営。周辺住民の一時避難、携帯電話の充電などをサポートした。選手たちは開幕に向けた調整を続けながら、救援物資の運び出し、募金活動などを継続して行った。三木谷は個人として義援金10億円を寄付。楽天としても3億円を寄付した。チームは「東北ろっけん活動」を拡大。選手、OBらが東北各県を回り、地域住民とさまざまな交流をしている。
3月11日のKスタ宮城＝2011年3月11日
我々ができたことは、大したことはないと思います。その中で少し、3年前の日本一は、良かったのではないか、と思っています。
1999年入社。整理部―2004年の秋から野球部。担当歴は横浜（現ＤｅＮＡ）―巨人―楽天―巨人。
遊軍、デスクを経て、現在はデジタル戦略室勤務。
好きな取材対象は投手、職人、年の離れた人生の先輩。好きな題材は野球を通した人間関係、カテゴリーはコラム。
趣味は朝サウナ、子どもと遊ぶこと、PUNPEEを聴くこと。
