TBSの報道番組「NEWS23」でアンカーを務めた毎日新聞社特別編集委員の岸井成格(きしい・しげただ)さんが15日午前3時35分、肺腺がんのため東京都の自宅で死去した。73歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行う。後日お別れの会を開く予定。

 67年に毎日新聞社に入社し、政治部長や論説委員長、主筆を歴任。13年4月から16年3月まで、NEWS23でアンカーを務めたほか、TBSの情報番組「サンデーモーニング」にも、長年出演した。

 時の政権に厳しい立場を取った。第2次安倍政権が進めた特定秘密保護法案や安全保障関連法案などを批判する論陣を張った。16年2月、放送局に対する停波命令の可能性に言及した高市早苗総務相(当時)の「電波停止」発言には、田原総一朗氏ら他のジャーナリストとともに抗議声明を発表。岸井さんはこの時の会見で「政治的な公平公正と、一般の公平公正はまったく違う。権力が強くなれば腐敗し、暴走するのが政治の鉄則。そうさせてはならないのがジャーナリストの役割だ」と、訴えた。

 07年12月、「サンデー-」で大腸がんを公表。昨年10月の放送でも、がん治療のため入院していたことを明かし、同年12月3日の放送まで出演した。

 「サンデー-」の司会を務める関口宏は、15日夜の「NEWS23」にVTR出演し、今年春の少し前、岸井さんに最後に会った際の様子を明かした。「もうその時は、言葉がなかなか出ない状況だった。何か言いたいことはない? と聞くと、『たるんじゃったな、みんな』と言った。あれが最後に聞いた彼の言葉だった。残念です」と、涙をこらえながら語った。