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「進撃の巨人」主演 梶裕貴さんインタビュー 渋谷区代々木の下積み時代には悔しい経験も

  • 2023年10月31日

アニメ「進撃の巨人」The Final Season完結編<後編>が11月5日(日)午前0:00(4日深夜)に放送されます。主人公を演じるのは埼玉県出身の声優・梶裕貴さんです。

現在は第一線で活躍する梶さんですが、過去には、アルバイトをしながら声優養成所に通い、なかなか作品に出演できずに悔しい気持ちを抱えていた日々もありました。

下積み時代をどう乗り越えたのか。完結編<後編>に対する意気込みは。アニメの放送を前に、梶さんにたっぷりインタビューしました。
(首都圏局/ディレクター・リポーター 西村美月)

声優を志したきっかけは…

人類と巨人の存亡をかけた戦いを描く「進撃の巨人」。その10年におよんだアニメシリーズが、完結を迎えます。

主人公、エレン・イェーガーの声を演じてきたのが、梶裕貴さんです。声優だけでなく、ラジオのパーソナリティーやナレーターとしても活躍しています。

子どものころからアニメやゲームが好きだったという梶さん。「声優という職業は、何を頑張っても全部、自分の力になる職業だ」という言葉に出会って感銘を受け、声優を志すようになりました。

梶さんの原点となった街 代々木

養成所に通っていたころの梶さん

高校生のとき、声優養成所のオーディションに合格。東京・渋谷区代々木にある養成所に週1回通い始めました。JR代々木駅周辺にはこの養成所だけでなく、多くの予備校や専門学校があり、若者たちが集います。

下積み時代を過ごした代々木の街には、特別な思い入れがあると梶さんは語ります。

梶裕貴さん
「週に1回のレッスンのためにドキドキしながら電車に乗って向かいました。埼玉の実家から東京のいわゆる大都会に行くのは、自分の中で大きいプレッシャーというか緊張感はありました。

それでも、それを乗り越えてでも実現したい夢というのが自分にとって声優でしたし、夢を目指し始めてから、自分にとってあまり経験がないことや、苦手なこと、不安に思うことでも、挑戦して乗り越えていかなきゃ、という覚悟はありましたね。

養成所と同じく代々木に声優事務所があるんですけど、いつかこういう町で事務所に所属して、こういう場所に住んで、声優の仕事をできるような人間になりたいなっていう思いが詰まった町です」

梶さんは高校を卒業してからも、アルバイトをしながら養成所に通い続けました。アルバイトの合間、週1回代々木を訪れる日だけは、声優になる夢を実現するために全ての時間をささげていたといいます。

代々木公園

午前中はクラスメートと代々木公園に集まって稽古をしてから、養成所へ行ってレッスンを受講。レッスンが終わったあとは駅前にあるカラオケ店を訪れ、その日の復習をしていました。

「みんなで原稿を読み上げて、お互いにダメ出しをしたり。店員さんには、マイクも持たず、音楽もかけずに何やっているのかなって思われたかもしれないですけど、僕たちにとっては“もう1つの稽古場”のような感覚もありました。

ご褒美的に、最後にみんなで歌って盛り上がることもありました。アニメ好きな仲間が多かったので、はやりの主題歌を歌って、いつか自分もそういう作品に出て、自分の主演作のアニソンを歌ってみたいなという夢を共有していました。

その1日は本当にへとへとになりましたけど、アルバイトでの疲労感とは違う、自分の夢に少しでも近づいていると思える時間だったので、それだけが生きる活力みたいなところはありました」

苦しい日々を支えたのは

声優として仕事をするためには、アニメなどの出演者を決めるオーディションに合格する必要がありますが、当時の梶さんには、役をつかむことは容易ではなかったといいます。

「声優の仕事でごはんを食べていきたいという思いはあるけど、下積み時代はうまくいかないこともたくさんありました。

レッスンの前とあとだけはアルバイトを入れずに、みんなでファミレスに行って、くすぶっている気持ちをぶつけ合ったり共有したりという時間に充てていました。ファミレスで語り合った時間やその景色は、今でも頭の中に残っていますね」

養成所でレッスンを受ける梶さんの後輩たち

同じ夢を志す仲間と過ごした時間が、支えになったという梶さん。

レッスンは週1回、3時間のみでしたが、「レッスンの時間で学ぼうとするのではなく、そこはあくまで発表の場であって、1週間のうち、レッスンの3時間を除いたすべての時間が稽古・学びの時間なんだよ」という講師の言葉を励みに、練習に打ち込みました。

「レッスンの日のために、他の週6日は頑張っていました。アルバイトでは、表に出るような仕事のときはもちろん作業に集中しますけど、バックヤードで物の整理をするときなどは、そこで、せりふを何回も繰り返し声に出していたときもあります。

休憩時間など合間の時間を狙って、レッスンの3時間でいかにその役を表現するか、自分をアピールするかっていうのを考えていましたね」

梶さんはその後、代々木にある声優事務所に所属。次第に声優の仕事が増えていきました。

声優になって20年。第一線で活躍するようになっても、夢の原点となった街は今も、梶さんの人生に寄り添い続けています。

明治神宮

「散歩が好きなので、事務所の近くにある代々木公園や明治神宮に目的もなく行って深呼吸するということを、頻繁にしています。

昔は代々木の街を仲間たちとキラキラした目で見ていた部分が強かったと思うんですけど、今は酸いも甘いもいろいろ経験してきた上で、それでもやはり声優という仕事が好きだなと思いますし、ずっと続けていきたいです。

そのために自分には何ができるか。声優業というのは、キャリアを積んでも基本的にオーディションで役をつかむという形なんですね。オーディションに向けてどういうアプローチをしたらいいのかなとか、反省も含めて歩くこともあります。

当時がいいとか、今がいいというわけではなくて、この積み重ねがあったから今の自分があると思うので、そういう意味も含めて代々木という町は特別です」

アニメ「進撃の巨人」The Final Season完結編<後編>の魅力は

そんな梶さんの代表作となったアニメ「進撃の巨人」The Final Season完結編<後編>が、11月5日(日)午前0:00(※4日深夜)から、総合テレビで放送されます。梶さんに、意気込みを聞きました。

「進撃の巨人はアニメがスタートして、完結編<後編>でちょうど10年なんですね。われわれ役者にとって、そのキャラクターの人生、そして物語の最後まで演じ切らせていただけるというのは本当にありがたいことです。

最後まで見ていただけるのが本当にうれしいなと思いつつ、物語のほうはクライマックスなわけで、結構気が重くなってしまうようなシーンが続きますが、ただ楽しいっていうだけではないのが進撃の巨人の魅力の1つだと思うので、ぜひテレビの前でいろんな感情を抱えながらご覧いただけたらうれしいなと思います。

魂を込めて演じました。ぜひよろしくお願いいたします」

アニメ「進撃の巨人」放送予定
The Final Season完結編<後編> 総合 11/5(日)午前0:00 ※4(土)深夜

  • 西村美月

    ひるまえほっと ディレクター・リポーター

    西村美月

    NHK水戸・新潟などを経て、2010年より「こんにちはいっと6けん」、2013年より「ひるまえほっと」にて番組制作・出演を担当。趣味は歌うこと。

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