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フェニックス 日大アメフト部廃部の方針固める 撤回求め要望書部員が…日大生「廃部は当然」「実績もあったと思うので悲しい」

  • 2023年11月30日

「フェニックス」の名で知られる日本大学アメリカンフットボール部。
学生日本一を決める「甲子園ボウル」では21回の優勝を誇り、長く日本のアメリカンフットボール界をけん引する存在でした。

日本大学は、アメリカンフットボール部の薬物事件でこれまでに部員3人が逮捕されたことなどを受けて部を廃部にする方針を固めました。

これを受けて、現役部員13人が方針の撤回を求めて180人分の署名を添えた要望書を大学に提出しました。

日大の学生たちの受け止めや専門家の見解は?

大学の競技スポーツ運営委員会…廃部方針示す

日本大学によりますと、11月28日開いた大学の競技スポーツ運営委員会でアメリカンフットボール部を廃部する方針が示されたということです。
今後、学内の手続きを経て正式に廃部が決まる見通しです。

関東学生アメリカンフットボール連盟によりますと、日本大学アメリカンフットボール部は7月末までの時点で選手とスタッフあわせて122人が所属していて、廃部が決まれば連盟から退会することになるということです。

日大アメフト部とは

日本大学アメリカンフットボール部は、戦前の1940年に創部されました。

チームカラーの赤と「フェニックス」の名称で知られ、1959年から2003年まで40年以上監督を務めた篠竹幹夫氏の指導のもと、「ショットガン」と呼ばれるパスを多用する攻撃のフォーメーションで日本のアメリカンフットボール界を席巻しました。

そして、1978年からは学生日本一を決める「甲子園ボウル」を5連覇し、歴代優勝回数は関西学院大に次ぐ21回、日本一を決める「ライスボウル」でも優勝4回と、輝かしい実績を誇っています。

多くの卒業生が社会人リーグのトップチームで活躍し、長く日本のアメリカンフットボール界をけん引する存在でした。

しかし、2018年、関西学院大との定期戦で起きた重大な反則行為、いわゆる「悪質タックル」をめぐる問題で指導法やチームの管理体制について大きな批判をあびて当時の監督などが辞任しました。

その後、新たな監督を公募するなどして立て直しを進め、2020年には3年ぶりとなる「甲子園ボウル」出場を果たし、今シーズンは関東学生リーグ1部の「TOP8」でリーグ戦の開幕を迎える予定でした。

日大の学生たちは…

日本大学のアメリカンフットボール部が廃部の方針になったことについて、日大の学生からは「しかたない」や「残った学生が気になる」などの声が聞かれました。

このうち東京・世田谷区にキャンパスがある危機管理学部の3年生の男子学生は、「今までいろいろ問題があったので、今後のことも踏まえて廃部にしたほうがリスク管理という意味で悪くないと思う。アメリカンフットボール部以外でも大学生は身近に薬物に手を出しやすい環境にある人もいると思うので、気をつけたい」と話していました。

この男子学生によりますと、きのう(28日)大学から一連の問題を受けた謝罪の手紙が届いたということで「大学もしっかり反省しているのかなと思った。今後また犯罪が起きないように期待したい」と話していました。

危機管理学部 3年生 男子学生
「競技者にとって薬物はだめなので、廃部は当然。しかたないかなと思った」

スポーツ科学部 2年生 女子学生
「だめなことはだめなので廃部はしかたないと感じている。同じ学部にはアメリカンフットボール部の部員の友達もいて、つらそうな表情をしている」

危機管理学部 2年生 女子学生
「廃部によって残された部員は今後どうなるのか気になる。家族も今回の件を気にしていてそれだけ大きい出来事だと感じている。私は来年就職活動なので今後どういう影響がでるのか分からず、気にしている。経営陣は問題が大きくなる前に対処してほしかった」

文理学部 1年生 女子学生
「部員の友人は部活を今後続けられると思っていたので、廃部をすごく悲しんでいると思う。練習再開を待ち望み、活動が停止になっても自主練習を毎日行っていたことを知っているので心苦しい」

2年生 男子学生
「ちゃんとやってきた人たちの伝統があるので、途絶えてしまうのはかわいそう。また、部活をするために日大に来たという子もたくさんいたので、かわいそうだと思う」

3年生 男子学生
「存在感がある部活で、日大の象徴的なところでもあった。いろいろ問題を起こしてきたと思うが、実績もあったと思うので悲しい」

4年生 女子学生
「関係のない学生にも悪影響があるのはよくないし、やめてほしい」

関東学連の対応

部員の薬物事件を受けて関東学生アメリカンフットボール連盟は、8月10日日本大学に対し当面、リーグ戦の出場資格を停止することを決め、日本大学が関係する試合が組まれた1か月前を期限としてその都度、出場の可否を判断してきました。

そして、10月27日には逮捕された部員以外の潔白が保証できないなどとして、最後の1試合となっていた慶応大学との試合も中止が決まり、日本大学が関係するリーグ戦7試合はすべて中止となりました。

日本大学のリーグ戦がすべて実施されないのは、いわゆる「悪質タックル」をめぐる問題で公式試合の出場停止処分を受けた2018年のシーズン以来です。

また、連盟は11月8日、臨時の理事会で日本大学の今シーズンの出場資格の停止と、来シーズン、関東学生リーグ1部の上位チームで戦う「TOP8」から、下位チームで戦う「BIG8」に降格させることを決めています。

専門家“寮での薬物事件 非常に厳しい判断”

日本大学がアメリカンフットボール部の薬物事件を受けて部を廃部にする方針を固めたことについて、スポーツのコンプライアンス問題に詳しい追手門学院大学の吉田良治客員教授は「非常に厳しい判断が出た理由の1つは、寮で行われた薬物事件ということだと思う。部活動の運営費は大学がある程度負担している。不祥事が起きた時に厳しい意見が出るのも理解しないといけない」と話しました。

一方で「チームとしての不祥事なのか、チームの一員が不祥事を起こしたのかで線引きは必要だと思う。真相究明をしっかりしてこれ以上、関わった人がいないという状況を作って活動を再開させることが望ましかった」と指摘しました。

廃部の方針がほかの部員に与える影響については「近畿大学のボクシング部は廃部になって数年間復活しなかった。ほかの大学へ編入ということもあるだろうし、このまま日本大学で一般学生として残るなどいろいろな方法があるが、日本の場合はほかの大学への編入はハードルが高い。すごく不安な状況だと思う」と話しました。

吉田客員教授は日本大学の『悪質タックル』をめぐる問題のあと、当時の部員たちにスポーツマンシップについての講義を行うなどチームの再建にも携わっていました。

吉田客員教授は「大学側が慌ててアリバイづくりの研修をしてアピールするのはいいが、継続されていないのは残念だった。ずっとやり続ける流れを作ってほしい」と提言していました。

現役部員…撤回求めて署名を

日本大学がアメリカンフットボール部を廃部にする方針を固めたことについて、現役部員13人が29日、都内の大学本部を訪れ、方針の撤回を求めて180人分の署名を添えた要望書を提出したことが大学への取材でわかりました。

大学側は、競技スポーツ部の職員が対応し、訪れた部員から意見を聞いた上で、大学として廃部の方針を決定するまでの経緯を説明したということです。

また、方針が正式に決まったあとに部員に対して説明会を開く予定だとしています。

一方、事件を受けて関東学生アメリカンフットボール連盟は、来シーズン、日本大学を上位チームで戦う「TOP8」から下位チームで戦う「BIG8」に降格させることを決めていますが、大学側が廃部を決定した時点でチームは「退会」となるとしています。

大学日本一を決める「甲子園ボウル」で日本大学と数々の名勝負を演じてきた関西学院大学アメリカンフットボール部は、次のようにコメントしています。

関西学院大学アメリカンフットボール部
「複数の逮捕者が出ているとはいえ、特定の学生の事案なのか、チーム全体で責任を負うべきことなのか、警察の捜査による最終結果が出ていない段階で、日本大学がこれほど歴史のある部を廃部とする決定をしたという報道に同じく大学スポーツに携わるものとして驚いています。日本におけるアメリカンフットボールの歴史をともに築いてきた日大フェニックスがなくなるということに、残念という言葉で表せないほどの衝撃を受けています」

大学スポーツ 過去の廃部

学生スポーツをめぐっては、これまでも部員が起こした事件をきっかけに大学の名門チームが廃部となったケースがあります。

~1999年 国士舘大学剣道部~
1999年、強豪として知られた国士舘大学の剣道部が男子寮として使っているアパートで当時、4年生の部員が1年生の部員を殴ったり蹴ったりして死亡させる事件が起き、部が解散を申し出て廃部となりました。

2年後、事件についての裁判が終わったことや死亡した部員の遺族から活動再開の要望を受けたことなどから学内サークルとして活動が再開され、その後、部として活動を再開しました。

~2009年 近畿大学ボクシング部~
2009年世界チャンピオンなどを輩出した近畿大学ボクシング部の部員2人が同じ大学の学生に殴ったり蹴ったりする暴行を加え現金を奪ったとして逮捕されました。

これを受けて、大学は部を無期限の活動停止としていましたが、事件の重大性を考慮して廃部としました。

その後、部員だった学生たちが地元の清掃活動などボランティア活動に取り組んできたことや、部の活動再開を願う署名が4万人以上、寄せられたことなどから、2012年に活動再開が発表されました。

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