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日米長期金利の上昇傾向は続くか

2023/11/07 07:41

【ポイント】
・米長期金利はFOMCの結果や雇用統計を受けて低下
・日本の長期金利は日銀の結果や植田総裁の発言を受けて低下
・日米長期金利差は10月下旬から縮小傾向
・日米の長期金利は再び上昇基調となるか

11月に入って日米の長期金利(10年物国債利回り)が低下しています。

10月31日-11月1日の米FOMCは政策金利の据え置きを決定。声明文やパウエル議長の会見はハト派的だと判断されました。1日発表の10-12月期の国債入札額は市場予想を下回ったこと、3日の10月雇用統計がやや弱めだったことも、米長期金利の低下を後押ししました。

日銀は10月31日の政策決定会合でYCC(イールドカーブ・コントロール)の修正を決定。植田総裁が会見で金融緩和を継続する意向を表明。さらには上述の通り米長期金利が低下したこともあって、1日に一時0.97%と「上限の目途(めど)」に接近していた日本の長期金利も低下しました。

もっとも、米長期金利も日本の長期金利も今春以降の上昇トレンドが大きく崩れたわけではなさそうです。
米長期金利

日本の長期金利

米長期金利は、景気鈍化が鮮明になったり、シャットダウン(政府機能の一部停止)によって安全資産への逃避が起こったりすれば、一段と低下する可能性はあります。一方で、24年9月までに2-3回の利下げを予想する市場の期待はやや行き過ぎとも考えられ、それが修正される可能性があるでしょう。また、財政赤字の拡大やFRBのQT(量的引き締め=保有国債の削減)に伴う国債需給の悪化は引き続き金利上昇圧力となりそうです。

植田総裁は6日、「2%の物価安定の目標に向けた見通し実現の確度が少しずつ高まってきている」との見解を示しました。23年中に物価目標の達成を判断できる可能性は低いとしつつ、来春までを展望すれば、目標が達成されたと判断するケースもあり得るとも述べました。マイナス金利の解除やその後の利上げが現実味を帯びれば、YCCの再修正や撤廃も視野に入り、日本の長期金利は上昇しそうです。

米長期金利の低下幅が大きいため、日米長期金利差(日<米)は10月中旬をピークに縮小傾向にあります。今後、日米長期金利が上昇に向かうなら、日米長期金利差は再び拡大傾向となり、米ドル/円のプラス材料となる可能性はありそうです。

日本の長期金利
西田明弘

執筆者プロフィール

西田明弘(ニシダアキヒロ)

チーフエコノミスト

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