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コウノイケ・レールゲートが紡ぐ、SCMの可能性

2021年5月27日 (木)

話題SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、原材料の調達から製造、そして消費者に商品が供給されるまでの、一連の生産、流通プロセスの全体最適化を図るものだ。だが、今までのSCMで求められる全体最適化とは、ほぼイコール、コスト削減ではなかったか。コスト削減は、確かに大事だ。だが、これからのサプライチェーンに求められる要素は変わりつつある。(坂田良平)

例えば、近年多発する台風などの災害発生時には、商品を供給し続けられる堅牢性と安定性が、コロナ禍においては、不測の事態に対応する柔軟性が求められた。今後は人手不足と「2024年問題」によって、トラックドライバー不足に拍車がかかり、長距離トラックの確保がますます難しくなると予想される。また、SDGsや地球温暖化対策といった環境への配慮も、これからのサプライチェーンには欠かせない。

(出所:鴻池運輸)

このような社会的に意義を持つサプライチェーンへのニーズは、間違いなく高まりつつある。そして、鴻池運輸が満を持して開設した「コウノイケ・レールゲート」は、現代のサプライチェーンが求める、さまざまな選択肢を実現する可能性を秘める。

同拠点は、東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)の構内に昨年完成した「東京レールゲートWEST」内にある。と言うと、JR貨物との連携に目が向きがちだが、この拠点が持つ可能性は、決して鉄道輸送だけではない。レールゲートのポテンシャルと、140年の歴史を持つ鴻池運輸のノウハウが結び付いた時、サプライチェーンはどのような化学反応を見せるのか。

サプライチェーンの選択肢を広げ、新たな可能性につなげる、「コウノイケ・レールゲート」を紹介しよう。

陸海空、適切な輸送手段を臨機応変に選択できるアドバンテージ

ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment/LCA)とは、商品やサービスでのライフサイクル(調達~生産~流通~廃棄/リサイクル)全体での環境負荷を算定するための手法であり、環境マネジメントに関する国際規格「ISO14000」シリーズ内でも標準化されている。

メーカーが、ライフサイクルアセスメントの観点から、自社商品の二酸化炭素排出削減を目指すのであれば、トラック輸送から、海運もしくは鉄道に輸送手段を切り替えるモーダルシフトが有効な選択肢となる。

だが、海運、鉄道輸送にも、課題はある。一番の課題は、天候の影響を受けやすく、輸送の遅延を招いてしまうおそれがあることだろう。

▲東京レールゲート営業所の花屋圭佑副長

「コウノイケ・レールゲートが持つアドバンテージのひとつは、陸海空の全モードの取り扱いができることで、安定した輸送手段を供給可能なことだ」(鴻池運輸関東中央支店東京レールゲート営業所の花屋圭佑副長)

コウノイケ・レールゲートは、東京港の外貨コンテナを迎える大井ふ頭から1.5キロ、羽田空港から3.5キロに位置し、成田空港にも1時間の距離にある。つまり、海上、トラック、鉄道、航空のいずれの輸送手段も臨機応変に選択できる物流センターなのである。

天候・リードタイム・貨物量に合わせて確実な輸送手段を選択

広域関東圏から北海道の工場まで原材料を輸送しているあるメーカーは、冬季の輸送に課題を抱えていた。普段は鉄道輸送を利用しているのだが、冬季は大雪などの悪天候により、商品の供給に支障をきたすことがあった。

▲鉄道輸送のイメージ(出所:鴻池運輸)

だが、コウノイケ・レールゲートを適切に利用することで、この問題は解消した。コウノイケ・レールゲートにいったん貨物をデポすることで、天気予報と照らし合わせ、トラック輸送、鉄道輸送のいずれか、確実に、遅延なく届けられる選択と判断ができるようになったのだ。

もちろん、鉄道輸送をトラック輸送に変更すれば、二酸化炭素排出量は増える。

だが、工場に原材料が届かなければ、最悪の場合、生産停止という事態にも発展しかねない。ライフサイクルアセスメントの健全な運用を考えれば、ときには最悪の事態に発展させないための、適切な対応手段(輸送手段)が必要だ。

▲東京レールゲート営業所の大西英生所長

「同じ貨物であっても、ボリュームによって、適切な輸送手段は変わってくる。『普段は大型トラックをチャーターしているが、明日は4トンしか物量がないから、鉄道輸送を選択しよう』というのも、コウノイケ・レールゲートを利用する顧客だからこそ得られる、選択肢の1つだろう」(花屋圭佑副長)

しかし、鉄道輸送を利用したことがある方であれば、鉄道を利用する際の煩雑さは、よくご存知であろう。こうした臨機応変な対応は可能なのか。東京レールゲート営業所の大西英生所長は次のように話した。

「コウノイケ・レールゲートは、東京貨物ターミナル駅構内にあるため、急な鉄道貨物を利用したいといった要望にも、融通が利く。これも、コウノイケ・レールゲートを利用することで得られる、アドバンテージのひとつだ」(大西英生所長)

▲コウノイケ・レールゲートに隣接する東京貨物ターミナル駅

都心と港、両方に近いという立地のアドバンテージ

圏央道を走っていると、次々と巨大な物流センターが完成していることが目につく。こういった郊外型のメガ倉庫は、確かに魅力的ではあるが、課題もある。ひとつは、輸送距離の課題だ。

▲デバンニングのイメージ

関東最大の消費地は、やはり東京だ。郊外型物流センターでは、東京港で陸揚げしたコンテナを、例えば、茨城、栃木、埼玉などに位置する物流センターまで一旦運んでから、デバンニング、仕分けをして、再度東京にいる消費者のもとまで届けるといった不効率が、日常的に行われている。ライフサイクルアセスメントを考えれば、間違いなくNGであり、最近では関東近県への中距離ドレージ輸送は敬遠されることも多いと聞く。

▲コウノイケ・レールゲートの所在地(出所:鴻池運輸)

このような課題も、大井ふ頭からわずか1.5キロのコウノイケ・レールゲートでデバンニングすれば解消できる。

もっと言えば、コウノイケ・レールゲートは、国内最大の消費地である東京23区内に位置する。これは、EC事業者などからすると、垂涎の立地だ。実際、同じ物流施設内には、大手宅配事業者とEC事業者がテナントとして入居している。

コウノイケ・レールゲートを利用するメーカーや商社などにとって、もっとも理想的な姿は、寄託で鴻池運輸に商品を委ね、鴻池運輸が140年の歴史の中で培ってきた、流通加工などの高い物流品質を享受することだろう(本ポイントは次項で詳しく言及する)。

だが、同拠点の立地条件を考えれば、先に述べたような荷捌き場としての魅力も捨てがたい。コウノイケ・レールゲートでは、朝に海上コンテナのデバンニングを行い、当日中に鉄道輸送に載せることも可能だ。

例えば、コウノイケ・レールゲートを利用するあるメーカーは、東京港の湾岸地域に基幹物流センターを備えているのだが、そのデバンニング能力には課題があった。荷量が増えると、基幹物流センター内のデバンニング能力が追いつかないことがあったのだ。

このメーカーは、コウノイケ・レールゲートに活路を見出した。コウノイケ・レールゲートは、基幹物流センターの能力をオーバーした分のデバンニングを負担することで、メーカーの課題解決に貢献したのだ。

「コウノイケ・レールゲートでデバンニングを担えば、その分、荷主にはプラスアルファのコスト増となるのだが、これまで荷主は、海運事業者に保管料金の過料を支払うことで、デバンニングの作業ボリュームをコントロールしてきた。コウノイケ・レールゲートを上手く活用することで、当方への支払いコストを考えても、コスト削減につながったと聞いている」(大西英生所長)

140年の実績に支えられた、物流品質のアドバンテージ

物流事業者の品質は、運ぶ価値によって磨かれる。創業140年、さまざまな物流を扱ってきたからこそ身に付けた、鴻池運輸の物流品質には大きなアドバンテージがある。筆者が今回の取材で、もっとも感心したのは、倉庫内と、フォークリフトを操る作業員たちの様子であった。

フォークリフトを含めた備品の管理場所がきちんと区分けされ、4S(整理・整頓・清掃・清潔)が徹底された倉庫内。目につくゴミはもちろん皆無だが、いじわるな筆者が、床面を指で拭ってみたところ、指に付着するホコリやチリもほぼ無い。オフィスでも、ここまで4Sが徹底されたところは少ないだろう。

さらに感心したのが、フォークリフトを操る作業員の、徹底した安全へのこだわりだ。

探りを含め、爪の二度差し工程を都度行い、爪のチルトと昇降工程を連続して行わず、きちんと段階的に実施。バック時には、目視確認とともに、指差呼称をはっきりとした声で行っている。運送コンサルタントとしても活動する筆者は、仕事柄、さまざまな物流センターを見学してきた。

その上で断言しよう。コウノイケ・レールゲートでの作業員の品質は、間違いなく最上級だ。

創業140年、文字どおり、近代物流の発展とともに歩んできた鴻池運輸は、顧客とともに、物流品質の向上に切磋琢磨してきた。同社ウェブサイトに掲載されている、エピソードインタビュー「期待を超えて挑戦し続けるストーリーがある」には、製鉄所でのコイル梱包業務から、医薬品輸送、病院内物流、危険物輸送、食品輸送、アパレル物流、羽田空港内での旅客業務まで、KONOIKEグループが手掛ける、さまざまな物流に携わる人の声が掲載されている。

「現場力で、魅了する」
「底力は、現場にある」

これらは、庫内に掲げられていた鴻池運輸の標語だ。

現場の底力、つまり、幅広い産業分野の物流現場で、常に最前線に立ち続けた実績が、鴻池運輸の物流品質につながっている。看板に偽りなし。その迫力が、鴻池運輸にはある。

物流ロボティクスの実証拠点を併設

併設するオープンイノベーション拠点「鴻池技術研究所イノベーションセンター(技研IC)」も紹介しよう。

技研ICには、無人フォークリフト、ピッキングロボット、AMRなど、複数の物流ロボティクス機器が用意されている。そして、自動化設備の検討を行いたい荷主のために、想定される庫内レイアウトなどを再現した上で、実稼働に向けた実証実験を行うことができる。

こういった施設は、各物流事業者が取り組んでいるが、大抵の場合、都心から少し離れた場所にある。当社では、より多くの方に、自動化の可能性を感じてもらいたいと考え、この場所に技研ICを開設した。鴻池運輸技術革新推進部の鳥飼一男担当課長

▲無人フォークリフト

これまで筆者が訪れたことのある、この類の施設は、あくまでデモンストレーションが目的で、デモ用に各種ロボットが動いているか、もしくは動いているロボットないし自動倉庫を見学させるものであった。

自動倉庫や物流ロボットを見たことがない方にとっては、デモンストレーションとして動いている様子をその場で観ることのほうが価値が高いと思う。だが、基礎知識があり、実際に物流の現場で日々を過ごしている方にとっては、自らの状況を再現し、文字どおり実証できる、技研ICのほうが、価値が高く、より実践的なのは明白だ。

「期待を超えなければ、仕事ではない」

コウノイケ・レールゲートが起こす化学反応

現代の企業には、社会が求めるニーズを満たし、自身も社会を構成する一員として、社会に貢献する責任と義務が求められる。ライフサイクルアセスメントはもとより、CSRやSDGsが注目される背景には、社会が企業に対して求めるニーズの変化がある。

冒頭、私はこのように言った。

「今まで、SCMで求められる全体最適化とは、ほぼイコール、コスト削減ではなかったか」

確かに、コスト削減は大切だ。だが、コストを費やしてでも、実現しなければならないことが、現代のサプライチェーンには増えつつある。

新たなニーズを実現するためには、まずニーズを実現するための方法論を選択できることが求められる。その点、陸海空の全モードを取り扱うことができるコウノイケ・レールゲートの可能性は、とても大きい。

ハード面だけではなく、ソフト面での対応力も必要だ。例えば、あなたが今利用している物流センター、もしくは物流事業者は、物流センターや輸送手段が日々排出する二酸化炭素量を算出してくれるだろうか。

ライフサイクルアセスメントを考えれば、二酸化炭素排出量の測定と把握は必須だ。鴻池運輸では、荷主の二酸化炭素排出レポートの作成も行っているという。

▲営業所のミーティングの様子

そして、筆者が見た、4Sが徹底された庫内と、作業員たちの品質。

安全が絶対正義であろう物流事業者にとって、庫内の4Sと、作業員たちの安全品質は、絶対的な武器となる。もっと言えば、これらが保たれていない物流事業者の行う流通加工や荷役、保管作業などが、高い品質を実現することはありえない。

「期待を超えなければ、仕事ではない」。これは、鴻池運輸が掲げるブランドプロミス「私たちの約束」だ。

「期待を満たして感謝、期待を超えて感動」という趣旨で語られる、顧客の事前期待に関する経験則を、同社のポリシーにあわせて語ったものであろう。ということは、鴻池運輸は、仕事に求められるレベル感を、顧客への感動体験レベルに位置づけていることになる。

もしあなたが、現代の企業が求められるニーズを実現可能な物流事業者と物流拠点を求めるのであれば、コウノイケ・レールゲートは、欠かせない選択肢のひとつとなるはずだ。

コウノイケ・レールゲートは、きっとあなたのサプライチェーンに、とても良い化学反応を起こしてくれるだろう。

▲東京レールゲート営業所の大西所長(右)と花屋副長(左)

寄託貨物を随時募集中
問い合わせ先:東京レールゲート営業所
担当:大西氏、花屋氏
電話番号:03-5755-9338
E-Mail:onishi.h@jpb.konoike.net、hanaya.k@jpa.konoike.net

■コウノイケ・レールゲートの概要
所在地:東京都品川区八潮3丁目3-22東京レールゲートWEST6階
総床面積:2447坪(うちバース部分370坪)
床荷重:各階1.5トン(1平方メートルあたり)
天井高:5.5メートル
バース:計8スパン(大型トラック24台が接車可能)
WEBサイト:https://www.konoike.net/logistics/tokyo-railgate/

■施設の紹介動画