老舗ホテルを“案内役”とする、一風変わった歴史ガイド本が出版された。タイトルは「横浜の時を旅する―ホテルニューグランドの魔法」。著者の作家山崎洋子さん＝横浜市南区在住＝は「横浜の歴史に興味を持つ人が増えてほしい」と出版の狙いを語る。
関西出身の山崎さんは、中学校の修学旅行で中区の山下公園を訪れてから「強烈な横浜びいき」に。ホテルを舞台とする小説を書き続けるうち、「いつかはニューグランドを通して横浜の歴史を知る本を書きたい」と思うようになったという。
現実になったのは、ニューグランドが開業85周年（２０１１年12月１日）を前に全面的な取材協力を申し出たことから。この結果、同ホテルにまつわるエピソードを介して山下町、山手、関内地区などの歴史をひもとくユニークなガイド本が出来上がった。
例えば、ロビーで使われている調度品から「横浜家具」が誕生した経緯を語り、同ホテルを仕事部屋とした作家大仏次郎の作品から「二人の『おはな』」が暮らした時代とその痕跡をたどる、といった具合。記述も「です、ます」調で読みやすい。
同ホテルが関東大震災の復興のシンボルとして、官民協働で建設されたことは、原範行会長兼社長からインタビュー。宇佐神茂総料理長には「ホテル・レストランの楽しみ方」を聞いた。随所にちりばめられた「ホテル・スタッフの打ち明け話」も興味深い。
春風社刊。Ａ５判、２７８ページ。１６８０円。
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