18歳選挙権 私はこう思う

弱者が住みやすい日本に はるな愛さん

 選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられることについて、性的少数者(LGBT)支援を行うニューハーフタレントのはるな愛さんにインタビューした。

 -18歳のころは何をしていたか。政治に関心はあったか。
 ニューハーフのショーパブでアルバイトをしていた。今で言う性同一性障害だったが、当時はそういう言葉もなくて、戸籍の性別を変えられるような制度もなかった。私たちはもっと影の存在で、人通りの多い道を歩くと指をさされるような時代。全然今とは違う時期を過ごしていた。そのころは全然政治に関心はなく、投票権もなかったから、流される時代だった。

 -初めて投票した時の記憶は。
 ある。20歳になってすぐに行った。やっと大人として認められた、社会に認められた、と思った。特に、こういう生き方をしているから、社会や世間からずれて生きているような気持ちが当時はあった。必要とされているのかな、社会の一員なのかなとか。不安な生き方をしていたから、選挙権をもらって投票に行った時に、やっとみんなと同じスタートラインに立っている気持ちになった。

 -LGBTの人の中には、投票所入場券の性別と外見が違うことで確認されるのが負担との声も。
 私も確認される。入場券は「男」で来ていて、見た目は女性。受付で確認される時に、そうですかで終わったらいいが、「なんや、女と思ったら男やんけ」と言われたこともある。関西なので、面白く言うのだろうが、せっかく選挙に来たのに、そういう曲がった目で見られるんだと思った。特別なエリアなんだなと思った。自分の物差しで見てしまうところが日本の特徴なのか分からないが、すごく残念だ。

 -要望はあるか。
 いろいろな人が普通にいるよというのを分かってほしい。私は女の子の戸籍を手に入れたいと思っているタイプじゃない。これは一概に言えなくて、LGBTも多様になってきた。私がバラエティーに出始めた時は、おネエ枠がいなくて、一人で男っぽい役をやったり、恋愛トークをしてみたり。それが逆に、LGBTの人たちから言わせると、女の格好をして男の声でしゃべって、私たちと一緒にしないでほしいという声もたくさん頂いた。

 -投票先はどう決めているか。その判断基準は。
 マニフェスト(政権公約)をしっかり見る。インターネットでも調べられる。一から見て、本当に社会を変えてくれそうな人を選ぶ。いろいろな人が一緒に日本で生きているんだと、きちんと理解している人を選びたい。そういう人は弱みも分かるし、痛みも分かってくれるから。

 -政治の世界でもLGBTをめぐる問題の解決に向けた意識は高まっているが。
 今でもマンションを借りられないとか、いまだに差別は根強くあって、理解できない年齢の人には、本当にできないことなのかもしれない。口先だけでLGBTのことを認めているような議員さんが増えるのは本当に困る。あそこ(の党)がやっているから、うち(の党)もやろうというようなやり方で票を集めるのは残念。差別的な発言をするなど残念なニュースはいっぱいある。
 今の日本は形ばかりで、米国で同性婚が認められたから追い付かなければという勢いだけで賛成と言ってみたり。逆に、LGBTのことを勉強もしないで、反対と言ってみたり。世界の基準に追い付こうとしても、全然まだまだだ。(2020年に東京で)五輪もある中で、真にグローバル化しているのか、国際社会から見抜かれると思う。

 -選挙権を持つ若者にメッセージを。
 LGBT、障害者、やりたいことができない若者。そういう弱者にとっても住みやすい日本に変えていこう。これからの日本を生き抜くみんなこそがリアルに考えないといけない世の中になってきている。今は自分の考えをしっかり持っている若者もたくさんいる。もっとみんなが声を上げていかないと、問題が増えていって、本当に住みにくい日本になるのではないか。諦めずにもっと考えていくことが大切だ。

 はるな 愛さん(はるな・あい)性同一性障害であることを公表し、タレントとして活躍。ニューハーフの美人コンテスト「ミス・インターナショナル・クイーン2009」で、日本人として初めて優勝した。43歳。

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