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「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「天空の城ラピュタ」など数々の名作アニメーション映画を世に輩出している「スタジオジブリ」。 新作が発表されるたび、その作品は大きな話題に上り、日本のみならず、世界中から賞賛と脚光を浴びています。 今回は、スタジオジブリの原点とも言える、宮﨑駿が原作、監督、脚本を務めた、日本アニメを代表する傑作「風の谷のナウシカ」に注目してみました。

明見 マイコと深井 映一
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宮崎アニメ|風の谷のナウシカ徹底解剖

宮崎アニメ|風の谷のナウシカ徹底解剖

1984年(昭和59年)公開の「風の谷のナウシカ」は、日本のアニメーションを世界に冠たる地位にまで引き上げた功労者のひとりである、巨匠・宮﨑駿監督の世界観や価値観が大きく反映された作品です。

ここでは、不朽の名作「風の谷のナウシカ」を映画の枠だけに留まらず、宮﨑監督が自ら描いた渾身の原作にも注目。

魅力と謎に満ちた「王蟲(おうむ)」「腐海(ふかい)」「巨神兵」など、ナウシカの世界を構築する重要な鍵となる項目を徹底的に解剖するとともに、当時の制作秘話も紹介していきます。

日本アニメ不朽の名作と言われる「風の谷のナウシカ

映画「風の谷のナウシカ」は、宮﨑駿が原作、監督、脚本を務め、1984年(昭和59年)に公開されたアニメーション作品です。

隆盛を極めた高度文明を崩壊させた「火の七日間」と呼ばれる大戦争から約1,000年。生き延びた人類は、瘴気(しょうき)と呼ばれる有毒なガスを噴き出す「腐海(ふかい)」や、巨大な虫などの脅威に虐げられながら生きていました。

海から吹く風によって、「腐海」の毒から守られている辺境の小国「風の谷」。ある日、虫から襲撃を受けた謎の飛行船が「風の谷」に墜落し、船内には「火の七日間」で世界を焼き払ったと言われる「巨神兵」の胎児が積まれていたのです。

やがて、その巨神兵を奪い合う人間同士の醜い争いが始まり、「風の谷」の王妃であるナウシカも否応なく巻き込まれていきます。

「風の谷のナウシカ」は、高畑勲、鈴木敏夫、久石譲など、以後の「スタジオジブリ」作品に欠かせない面々が集結しているところも特徴。また制作スタッフの中には、「新世紀エヴァンゲリオン」の監督で、世界に知られる庵野秀明も名を連ねています。

“ナウシカ生みの親”巨匠・宮﨑駿監督の略歴

“ナウシカ生みの親”巨匠・宮﨑駿監督の略歴

「風の谷のナウシカ」原作者であり、映画の監督・脚本を務めた宮﨑駿。

1963年(昭和38年)、東映動画(現在の東映アニメーション)に入社し、そこから何社かのアニメ製作会社を渡り歩きながら、「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」などのTVアニメ番組に携わりました。

劇場版の初監督作品は、1979年(昭和54年)の「ルパン三世・カリオストロの城」です。

続く1984年(昭和59年)に「風の谷のナウシカ」をヒットさせた宮﨑監督は、翌年「スタジオジブリ」を設立、「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「もののけ姫」などの名作を次々と送り出し、「スタジオジブリ」の名前を世に定着させることに成功します。

宮﨑作品の中でも2001年(平成13年)に公開された「千と千尋の神隠し」は、国内で2,310万人を動員、興行収入304億円という日本の歴代最高興収記録を樹立。

同作は、アカデミー長編アニメーション部門賞、ベルリン国際映画祭・金熊賞など、名誉ある数々の映画賞を受賞し、高い評価を獲得しています。

映画と原作、意外と違うナウシカの舞台設定

「風の谷のナウシカ」の原作は、雑誌「アニメージュ」で連載されていた宮﨑駿監督の同名漫画です。1982年(昭和57年)から4度の連載中断をはさみ、1994年(平成6年)に約12年間の連載を終了しました。

全7巻59話で完結となった原作と、1~2巻までの内容が映像化された映画では、舞台背景などが随分と異なります。

映画では、「トルメキア王国対ペジテ市」という「巨神兵」を巡っての物語ですが、原作では、「トルメキア王国」と、映画には登場しない「土鬼(ドルク)諸侯国」の両大国が、各地で勢力抗争を繰り広げている設定です。

また最終的に溶解してしまう一兵器としての扱いだった映画の「巨神兵」も、原作では、非常に重要な役割を担い、その存在感を際立たせています。

他にも「トルメキア王国」の皇女クシャナは設定を完全に変えられました。

原作では、頭脳明晰、冷静沈着、部下からの信頼も厚く、映画の悪役クシャナと比べるとほぼ正反対の非常に優れた好人物です。ちなみに原作のクシャナは、映画のように手足を失っていない五体満足の状態でした。

王蟲(おうむ)」の生態と衝撃の正体

「王蟲(おうむ)」の生態と衝撃の正体

劇中において、その体のように大きく重要な存在感を見せる「王蟲」

有毒な森「腐海(ふかい)」に棲む王のような存在で、14個の複眼と十数枚の体節から構成される、硬く濃い緑色の体に無数の脚、治癒能力を持つ糸状の触手を口腔内に備えています。

普段は青い目の色が、怒りなどで精神的に高ぶると赤くなり、成体は80mに達する程巨大な姿から「王蟲の怒りは大地の怒り」と言われ、人間から恐れられる程です。

宗教的な意味合いからナウシカの世界では、神聖視する者もいます。映画では、詳しく描かれなかった「王蟲」の正体、それはテレパシーのような念話をも使いこなせる「人工生物」であったことが、原作の終盤で明かされました。

その正体を知ると、また別の角度から本作を楽しむことができます。

ちなみに、2011年(平成23年)にミュージシャンの布袋寅泰が、自身のTwitterで「王蟲の鳴き声は僕のギター」というツイートを投稿し、話題沸騰となりました。

当時、「風の谷のナウシカ」の音楽を担当していた久石譲からの依頼だったとのこと。また劇中歌の「ナウシカ・レクイエム」は、久石譲の娘・麻衣さんが、4歳のときに歌った曲を使っています。

スタジオジブリ」以外で制作された「風の谷のナウシカ

「スタジオジブリ」以外で制作された「風の谷のナウシカ」

「スタジオジブリ」の初期作品だと思われている「風の谷のナウシカ」は、厳密に言うと「トップクラフト」なる制作会社の作品になります。

当時、海外作品のアニメーション制作下請会社だった「トップクラフト」に今作のプロデューサーである高畑勲が制作を依頼、そこに他プロダクションやフリーアニメーターらを揃え、宮﨑駿監督指揮の下、「風の谷のナウシカ」は誕生しました。

ナウシカが制作された1984年(昭和59年)当時は、まだ「スタジオジブリ」が設立されていません。そのため、TVなどで「風の谷のナウシカ」を放映する際は、「スタジオジブリ作品」ではなく「宮﨑駿監督作品」という表現がされています。

現在、その「トップクラフト」は、1985年(昭和60年)に「スタジオジブリ」の制作母体となって改組され、解散の形を取りました。

ちなみに地上波においても安定した人気を誇る「風の谷のナウシカ」は、2017年(平成29年)までに17回も放送されています。

腐海(ふかい)」の謎とナウシカたち人類の関係

「腐海」は、ナウシカたちが生きる近未来の世界の中でも、最も異質な空間として扱われている独自の生態系を持つ森です。

人間や動物が吸い込むと死に至る、瘴気(しょうき)を吐き出す腐海植物や大小様々な蟲(むし)が棲み、「腐海」へ立ち入るには防毒マスクと蟲への知識や備えが必要とされています。

また、発芽の場所を選ばない腐海植物は、すぐに一帯を「腐海化」させるため、「腐海」から戻るときには、衣服や荷物などに付着した胞子を徹底的に除去しなければなりません。

約1,000年前に起こった「火の七日間」と呼ばれる大戦争後、突如出現したとされる「腐海」は、その謎を解明されることなく映画では幕を閉じました。ただし、宮﨑駿監督が描く原作では、「腐海」の衝撃的な謎が明かされています。

あの「腐海」に生い茂る腐海植物が吐き出す瘴気、その正体は、「純粋な酸素」だったのです。しかし、ナウシカは映画の中で、瘴気を吸い込めば「5分で肺が腐ってしまう」と言っていました。

原作と本作との相互関係を知ると、「純粋な酸素」を呼吸すると命を奪われる人類という、矛盾するような話になる点は、ますます謎が謎を呼ぶ事実として知られています。

この「腐海」を拡大させる役目を持った「王蟲」をはじめとする蟲たちとの関連性も非常に気になるところ。映画のみならず、原作を読んでみると「風の谷のナウシカ」の新たな世界観や魅力に気付かされます。

巨神兵と若き日の庵野秀明の繋がり

ナウシカたちが生きる時代から、約1,000年前に世界を壊滅させた「巨神兵」。彼らが世界を焼き尽くしたと言われる「火の七日間」は、映画の冒頭にも一場面だけ描かれています。

燃え盛る街の中を「巨神兵」の群れが一列に進軍する光景は、観る者に強烈な印象を与えました。

映画の終盤では、クシャナの命により、未成熟の状態ながら覚醒させられた「巨神兵」。口や額から放つプロトンビームの破壊力は、一撃で「王蟲」の群れの一部を殲滅(せんめつ)します。

この「巨神兵」の正体も「王蟲」と同じく、1,000年以上前に人類の手から生み出された「人工生物兵器」でした。

原作に登場する「巨神兵」は、人間を相手に会話をしたり、ナウシカに対して特別な感情を持ち合わせたりするなど、かなり高度な知性を備えているところが特徴です。

また、ナウシカが「巨神兵」の牙に「東亜工廠(とうあこうしょう)」と漢字で記載された商標を見つける場面があり、1,000年以上前に存在したアジア系企業が、「巨神兵」の製造に関与した可能性を匂わせています。

「風の谷のナウシカ」制作時、スタッフだった「新世紀エヴァンゲリオン」の監督である庵野秀明も「巨神兵」の作画を一部担当。「成長する巨神兵にクロトワが話しかける場面」と「最後の腐った巨神兵」の作画です。

ちなみに「巨神兵」の、前傾姿勢でゆっくりと歩く特徴的な姿は、徹夜続きで制作現場内を亡霊のように歩行する庵野をモデルに作り出されたとされています。

そんな「巨神兵」と縁のある庵野は、2012年(平成24年)に、「巨神兵」を主役とした約10分の特撮実写映画「巨神兵東京に現る 劇場版」を公開しました。

※この記事は、2018年5月時点の情報に基づいて作成されています。

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