1990年代の美少女ゲームを作るアニメが放送開始

 テレビアニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』が2023年10月4日より放送開始された。

 本作は、美少女ゲーム黎明期(1992年)にタイムリープした主人公・秋里コノハが、美少女ゲーム制作会社・アルコールソフトを舞台に活躍する新作アニメ。漫画家の若木民喜氏とアクアプラスのみつみ美里氏、甘露樹氏が手掛けたマンガ『16bitセンセーション』を原作としており、アニメでは完全オリジナルストーリーが描かれる。

 1990年代と言えば、『ToHeart』、『同級生』、『Kanon』など、名作美少女ゲームが続々とリリースされていた時代。そんな当時の美少女ゲームの制作現場の様子を伺いしれるとのことで、往年の美少女ゲームファンを中心に話題を集めている作品だ。

 ファミ通.comでは、本作に出演する

  • 古賀葵さん(秋里コノハ役)
  • 阿部敦さん(六田守役)
  • 堀江由衣さん(上原メイ子役)
  • 川澄綾子さん(下田かおり役)

へインタビューを実施。本作への印象や演じるうえで意識したことや、作品の魅力などを聞いた。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』(Amazon Prime Video)
アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』連動企画 設定考証森瀬繚氏による連載コラムはこちら

古賀葵(こが あおい)

8月24日生まれ。佐賀県出身。おもな出演作に、『ひろがるスカイ!プリキュア』(エル役)、
『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(四宮かぐや役)『古見さんは、コミュ症です。』(古見硝子役)、『原神』(パイモン役)など。(文中は古賀)。

阿部敦(あべ あつし)

3月25日生まれ。栃木県出身。おもな出演作に、『異世界のんびり農家』(街尾火楽役)、『とある魔術の禁書目録』シリーズ(上条当麻役)、『アイドリッシュセブン』(逢坂壮五役)
『プリンセスコネクト! Re:Dive』(主人公役)など。(文中は阿部)。

堀江由衣(ほりえ ゆい)

9月20日生まれ。東京都出身。おもな出演作に、『K』(櫛名アンナ役)、『DOG DAYS』(ミルヒオーレ・F・ビスコッティ役)、『とらドラ!』(櫛枝実乃梨役)、『<物語>』シリーズ(羽川翼役)、『魔法つかいプリキュア!』(キュアマジカル/十六夜リコ役)など。(文中は堀江)。

川澄綾子(かわすみ あやこ)

3月 30日生まれ。東京都出身。おもな出演作に、『「艦これ」いつかあの海で』(大淀役)、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(クラーラ・マグノリア役)、『ハヤテのごとく! Cuties』(天王州アテネ役)、『Fate』シリーズ(セイバー(アルトリア)役)など。(文中は川澄)。

好きなことに一直線なコノハと、それを支えるアルコールソフトの個性的なメンバーたち

――まずは、皆さんが演じられたキャラクターがどんな人物かを教えてください。

古賀秋里コノハちゃんはとにかくよく動いて、感情の起伏も激しいジェットコースターのような子です。好きなことに真っすぐに生きているし、目標もちゃんと持っていて、その目標に向かって一生懸命がんばって努力しています。自分の人生をしっかりと生きている子という印象です。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?
アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

古賀また、ゲームに描かれている“美少女”が大好きな子でもありますので、美少女のことになると感情が溢れて止まらない面がありつつ、初対面の人と話すときに恥ずかしがる人見知りな一面もある愛くるしい子でもあります。

 猪突猛進な女の子でもあるし、私たちが共感できるような一面も持っているので、応援したくなるキャラクターだと私は感じています。アルコールソフトの皆さんと関わっていく中で、コノハちゃんがどのように成長していくのか、今後注目していただけるとうれしいです。

堀江コノハちゃんはすごいテンション感で動いたり話したりする子ですよね。見ているときはその様子に共感して応援したくなりますが、見終わったときに疲れるくらい(笑)。でも、収録中の古賀さんは、自分があれだけしゃべっているにも関わらず疲れていない様子だったので、すごいなと。

川澄本当にまくし立てるように話す子だよね。表情もコロコロ変わるし。どこで呼吸しているんだろなと感じました(笑)。

――非常にインパクトのあるキャラクターですよね。元気いっぱいな子だけど、抜けているところもありますし、すぐ電池が切れるような一面もあったり。ユニークな女の子だなと思いました。

堀江あと、コノハちゃんを見て、最近のゲーム会社の人、髪のインナーカラーを青にしがちだと改めて感じましたね(笑)。

一同(笑)。

川澄ホント!?

阿部まあでも、インナーカラーを青にしている方はけっこういらっしゃる印象ですね(笑)。

――1990年代にはいないような子ですよね。続いて、守くんについてはいかがでしょうか。

阿部僕が演じる六田守くんは昨今珍しく学ランを着ている中学生なんですけど、年齢に似合わずパソコンへの知識も豊富で、かつ愛にも溢れている不思議な子となっています。

 アルコールソフトのメンバーたちとは仲がよくいっしょにいることは多いのですが、同年代の人はいないんですね。そんな状況で、年齢の近いコノハちゃんが会社に転がり込んでくることになります。彼女の影響を受けて彼が今後どのように成長していくのか、楽しみなキャラクターとなっていますね。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?
アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

堀江守くんは、第1話でコノハに抱きつかれて顔が赤くなるところがとてもかわいかったです。

阿部ですよね。「そりゃあそうだよね、思春期だもんね」と僕も共感しちゃいました。

川澄でもふつうに考えて、お手伝いとはいえ中学生で美少女ゲームを作るというのはちょっと照れると思いますね。ただ、恥ずかしい思いをしていることに文句を言いながらも一生懸命がんばっている姿はすごくかわいいです。

古賀私は、守くんはみんなと好きなものが違う中で、自分の好きなものはしっかりと好きだと言える、情熱のある子だと感じました。そうした一面があるので、コノハちゃんとは気が合うところもあるのかなと。

 一方で、コノハちゃんはストレートに自分の好きを表現しているのに対して、守くんはあまりほかの人に自分の好きを押し付けないところもあるので、お互いにどのように感化されて関係性を深めていくのかは気になります。

堀江私が演じる上原メイ子ちゃんは、性格が穏やかな、とってもかわいらしい子という第一印象を受けました。自分で好きなイラストを描きつつ、苦手なPC作業も行なっている子なのですが、慣れない作業だけど時代の変化に合わせてゲームを作ろうとしているがんばりやさんです。

 アルコールソフトのメンバーの中では、癒し系と言いますか、みんなをやさしく包み込むお姉さんのようなキャラクターになっています。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?
アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

古賀メイ子さん、かわいいですよね……!

阿部癒し担当だよね。

川澄大人な一面もあるよね。ゲーム開発の中で辛いことがあっても弱音は吐かないし。

阿部突然コノハが現れたときに、「外は寒いから会社に入れてあげよう」と自然と言えるところもすばらしいですよね。天使!

川澄本当に嫌なところが見つからないよね。いい子を演じているわけではないですし。

古賀どういう育ちかたをすればこんないい人になるのかなと思いました。ご両親の存在も気になります。

川澄最後に、下田かおりちゃんは、ネコ耳の帽子と糸目が特徴的な柔和な雰囲気を持っている女の子です。みんなのお母さんのような立ち位置の子なんですが、わりと感情の起伏が激しいですし、トラブルが発生したときに怒りの感情を露わにする場面もあります。一方で、言いたいことはビシッと言える子でもありますので、ある種真っすぐな女の子でもあると思いますね。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?
アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

阿部守くんから見ると、すごく面倒見のいい、お母さんのようなポジションだと強く思います。それと、アルコールソフトの社長のてんちょーを手玉に取っている描写がありつつ、厳しい一面も持ち合わせています。とてもリーダー感のある女性ですよね。

堀江なんというか、あの時代によくいた、マニアックな現場だけれどそれを気にせずしっかりとお仕事をしてみんなを引っ張っている人だなという印象を受けました。たとえば1990年代のコミケで同人誌を最前線で作っていた女性みたいなイメージを強く感じましたね。

阿部確かに、1990年代のコミケにはかおりさんのようなイメージの人はいたような気がします。

古賀頼りになる人ですし、迷っていても正しく導いてくれるような女性ですよね。あとは、メイ子さんとのバランスもすごくいいなと思います。かおりさんがみんなをビシッと引き締めた後、メイ子さんが後でフォローしているんだろうなと。そういったことを考えると、ふたりのバランス感はとても素敵だなと感じます。個人的には、いつもつむっている目を開眼したところも見てみたいですね!

1990年代のゲーム開発現場を再現。時代考証にも徹底的にこだわった作品

――そんな魅力的なキャラクターが登場する本作では、スタッフの皆さんの熱量がとにかく高いとお聞きしていまして。たとえばPC98の実機を用意していたり。収録現場で、実際にスタッフさんの熱気を感じた場面はありましたか?

阿部作中でキーボードを叩く音は、実際のPC98を使用して録音したというお話はお聞きしました。個人的には、コノハちゃんをドット絵で表現したキービジュアルを見て驚きました。あのころのゲームの味わいがあるなと。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?
制作チームが実際に用意したPC98(PC-9801VM)。秋葉原などを巡って確保したそう。お値段はそこまで高価ではなかったとのことだ。

古賀しかも、あのキービジュアルを使用したポストカードが配布されているのですが、匂い付きなのも驚きました!

阿部そう、“あのころの香りがするポストカード”だよね!

川澄え、どんな香りなの⁉

阿部僕的には、ゲームショップとかのエレベーターの香りかなと感じました。

堀江わかんないよ!(笑)

阿部なんか、たとえばソフマップさんとかのエレベーターの中にある芳香剤のような香りがしたんですよね。

川澄わかる人にはわかる香りなのかな?

阿部きっと理解していただけると思います!

――グッズなどからもこだわりを感じられたのですね。アフレコでのディレクションなどで熱意を感じた場面はありましたか?

古賀2023年のコノハちゃんと、過去の時代に生きている皆さんとで言葉のアクセントが違うので、そこは丁寧に表現してほしいとお伝えいただきました。そのために、当時の辞典で調べたりして演じたりしましたね。

堀江当時のガヤを表現するのも難しかったよね。

川澄ガヤのときに言ってはいけない言葉、当時はまだ一般的ではなかった言葉とかもあったから、ちょっとたいへんだったよね。待ち合わせをするときはスマホを使っていない時代だったし。そのあたりの当時の時代考証はスタッフさんたちはこだわってくださっていました。

堀江当時の秋葉原の資料はあまりなかったみたいで、そこは苦労されたようですね。いまの時代ですと、ネットを調べれば誰かが撮影したものをチェックできると思いますが、当時は撮影した写真をネットにアップするということもそこまで盛んではありませんでしたから、時代考証のための資料を集めるのはたいへんだったとお聞きしました。ピンポイントで作中の1992年の様子を再現するのは、骨が折れたことだろうと思います。

川澄そっか、その翌年にできるビルとかは映っちゃいけない、ということとかもありそうだよね。

堀江そう。深く当時の時代を見比べる人は少ないと思いますが、そこもしっかりとこだわっていらっしゃるというお話をお聞きして、改めてスタッフさんたちの熱意に感銘を受けました。

古賀あとは、資料として作成された、コノハちゃんの姿を美少女ゲームのパッケージで再現したアイテムからもこだわりを感じましたね。

川澄これは現実にあったものなのでは!? と錯覚させるぐらいの完成度だよね。

堀江どうしてあんなに厚いの?

川澄当時のPCゲームは確かディスクが何枚も入っていたから、かな?

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

堀江なるほど、だからいまみたいに薄いパッケージじゃないんだね。

阿部本作を観ていると、当時のオタク文化の一旦を感じ取れる気がしますね。僕も、当時の秋葉原の熱気がすごいとは噂で聞いていましたので、ある種“聖地”のように感じていました。中学生のころ、ちょうど1990年代の中盤に友人といっしょに秋葉原に行った当時の思い出が浮かんできて、懐かしい気持ちになります。いまでもお仕事で訪れることがありますが「昔に比べてきれいになったな」と、ふと思うことがありますね。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?
アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

――そうしたこだわりのもと表現された映像をご覧になられて、改めて驚いた点などはありますか?

阿部第1話の冒頭で、ブラウン管に映っているかのように表現された映像を見たときはビックリしましたね。音とかもフィルターがかかっているようでしたし。あのころの映像の味わいが楽しめて感慨深かったです。

古賀ゲームショップに訪れたときに、当時のゲームがカゴの中にいっぱい入っている様子とかも、趣がありましたよね。ほかにも、たとえばゲームショップの陳列棚など、たくさん細かなこだわりがあると感じましたので、そういったところを注目してみるとおもしろいのかなと思います。

川澄当時のゲームに親しんだ人たちは懐かしい気持ちになって、エモさを感じられるかもしれないよね。

堀江私は、「当時のゲームは16色で表現されている」というセリフを話しているのですが、完成した映像の中で実際に1マス1マス塗っている風景を見て、すごくたいへんな作業をしていたんだなという気づきがありましたね。

――マウスで線をなぞる、というようなシーンありましたね。

古賀出力するときに少し線を太くするような、当時の開発現場の苦労が伺いしれますよね。

堀江こんなにアナログな作業だったんだなとビックリしました。当時同じような作業をしていた人は懐かしさを感じられるでしょうし、いまデジタルの環境で開発している方たちにとっても驚きがあると思います。

川澄当時の開発現場を深く知ることができるよね。アニメではPCはもちろん、マウスも当時のもので描かれていたので、細かなところまで再現されている映像は見応えがありました。

 また、当時の街の風景とかは覚えていないですが、映像を見て、街の風景の変遷を知ることができました。街並みの移り変わりも表現されているのはすごいなと思いましたね。

 それと、やっぱりコノハの表情の豊かさは魅力的だなと。ほかのキャラクターたちはコノハに比べると表情が変化しないので、1990年代を生きていた人たちからすると、若干オーバーに感じる部分とか。当時の人たちの内に秘めたオタク感と、好きなことになると高速詠唱するいまのオタク感のギャップがおもしろかったですね。

――皆さんの中には、1990年代当時からお仕事をされていた方もいらっしゃると思いますが、その現場はあまりご存じなかったと思います。そうした中で、本作に触れてみて、新しい発見などはありましたか?

阿部我々が声を当てる段階は、作品制作においては後半戦に差し掛かっている部分だと思いますが、それに至るまで、たとえばドット絵で絵を描くたいへんさみたいなところは今回初めて知った部分ではありますので、そこは新しい発見でしたね。

川澄美少女ゲームがメディアミックス展開をしていくことはすごいことだった……ということを知れたのも新鮮でしたね。テレビアニメになったりすること自体が珍しいことだったんだなと。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

当時の美少女ゲームやテレビアニメに涙腺崩壊したキャスト陣

――本作では、のちにアクアプラスとなるLeafをモチーフにしたエピソードも登場します。川澄さん、堀江さんは、同社の『ToHeart』で神岸あかり、HMX-12マルチとして出演されていましたが、自分が出演している作品を作っている会社のお話が、物語として展開されるのは不思議な感覚だったのでしょうか?

川澄そうですね。私たちの関わった美少女ゲームの制作現場についてはまったく知りませんでしたので、不思議な感覚でした。また、美少女ゲームがすべて一般作になってメディア化されるのがすばらしいわけではないと思いますが、作品が大衆の方にも評価されてメディアミックス展開が行われるというのも、制作者の皆さんにとってひとつの喜びであると改めて気づくことができました。

 それとある意味、アングラまではいかないですけど、一般的ではない作品に対してたくさんの人たちが関わって、熱意を持って作り上げているということは、『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』だからこそ知れることですし、物語としての魅力でもあると思いました。

――少し本筋から外れるお話かと思いますが、皆さんは美少女ゲームに関する思い出などはあったりしますか?

阿部僕は『つよきす』が好きでしたね。きゃんでぃそふとさんから発売されていたのかな。お話がとにかくおもしろくて、かつ心が痛い描写もたくさんあったりして。物語の完成度が非常に高くて、夢中になってプレイしていましたね。

古賀私は、Keyさんの作品などをテレビアニメを楽しんでいた記憶がありますね。毎話号泣していたぐらい、感動する作品が多かった印象です。『CLANNAD』や『Kanon』、『AIR』、『リトルバスターズ!』……。いっぱい楽しませていただきました。

堀江私は家庭用ゲーム機でもリリースされた『君が望む永遠』を友人の家でいっしょにプレイした思い出があります。当時、物語がおもしろいということで話題になっていた記憶があり、それをきっかけに遊んだ気がします。

 あとは私、お正月は『君が望む永遠』のような恋愛アドベンチャーゲームを遊ぶと決めていたころがありましたので、『ときめきメモリアル』シリーズや、その男の子たちバージョンの『ときめきメモリアル Girl's Side』シリーズを遊んでいた時期がありましたね。

川澄私は美少女ゲームをプレイしたことはないんですよ。なので、『To Heart』のオーディションを受けたときに、原作が美少女ゲームだとは知りませんでした。

堀江そうだよね。私も知らなかったと思う。

川澄だから、美少女ゲームへの偏見とかもなくて。ただひたすらに「お話がいい作品だな」という印象をオーディション当時は抱いていたと思います。そうして作品に携わっていく中で、こんなにお話がおもしろいのかと気づいて。小説を読んでいるような、こういう世界があるんだなという驚きがありましたし、人気となったのも納得、という感じでした。一時期は、美少女ゲーム=泣きゲーとも言われていましたよね。そういえば、いまももちろん、美少女ゲームはありますよね?

――作品はありますが、当時よりはかなり数が減ってしまっているようです。

川澄そうなんですね。ちなみに、最初にPCの美少女ゲームが家庭用ゲーム機でも発売されたり、アニメ化した作品とかは何になるんですか?

――メジャーなタイトルでは『To Heart』とかだと思いますね。『同級生』も一般のOVAや家庭用ゲーム機で出ていたかなと記憶しています。

川澄あ、『同級生』! 懐かしいですね……! 確か『下級生』もありましたよね?

阿部『下級生』もありました!

堀江え、じゃあ『上級生』とかもあるの?

川澄『上級生』はないんじゃない?

一同(笑)。

※編注:『上級生』はありません。

――ノベルタイプのゲームで家庭用ゲーム機に移植されて人気が出た作品としては、『To Heart』が有名だと思います。

川澄なるほど。家庭用ゲーム機に移植された作品は遊んだことはありますが、画面に文字がたくさん出て、それを読んでいくという体験は新しくて、楽しませていただきましたね。

――当時、『To Heart』の人気は実感されていましたか?

川澄私は、まわりの人から人気作だと言われていましたので、実感はありましたね。この作品がPCゲームの中でどれだけ人気で、メディアミックス展開をできるのがどれだけ大変かは理解していました。イベントや制作発表のときとか、感じなかった?

堀江どうだろう。私はあまり盛り上がりを実感できていなかったかも。

川澄そっか。私は作品がリリースされる前からあかりとしてPVの音声とかを収録して、それを世に届けることもしていたので、『To Heart』のファンの方にあかりの声を受け入れてもらえるかめちゃくちゃ不安でしたし、収録のときはとんでもなく緊張していましたね。

堀江そうだよね。初めて声を聞いてもらうときは不安だよね。

川澄そういえば、制作発表のときの司会が雨上がり決死隊さん(当時)だったんだよね。当時は大きな会場を借りて、お笑いタレントさんをお呼びしてイベントをすることはあまりなくて。すごく衝撃的でした。確かその後、ラジオでも雨上がり決死隊さんとごいっしょしたこともありました。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

――当時としてはレアな出来事を経験されていたのですね。それでは最後に、演じてみた感想や作品の見どころなど、改めてお話しいただければと思います。

阿部『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』は、お仕事を題材とした作品ではありますが、その中でも、意外と語られていなかった部分のお話なのかなと思います。美少女ゲームは日本独特の文化ですし、それを物作りの観点から、タイムリープというSF要素も交えながら描くというのは新鮮でおもしろいです。そして、当時の“お仕事あるある”みたいなものも絡めながら成り立たせているので、とても魅力的な作品だなと思います。

 収録はすべて終えているのですが、演じてみて僕自身「こういう展開になるのか」と驚く部分もありましたので、皆さんには最後まで見守っていただけたらうれしいですね。

古賀コノハちゃんは、原作にはいないキャラクターではあるので、原作を読んだときに、コノハちゃんがここにどう入っていくのかなというワクワク感がありました。

 その中で、アニメでは原作マンガとは違う部分がありつつ、原作で表現されている当時の開発現場の歴史を感じられる描写もありますし、開発者の皆さんの想いも知れる作品になっていて。いまを生きている若い人たちの刺激にもなるだろうなと感じました。そこにSF要素も入ってくるので、ワクワクしながら楽しめる作品だなと思います。

堀江原作を読んでみると、わりとあるあるなお仕事ものの作品だなという印象を受けましたが、演じてみると、タイムリープの要素が加わることで、昔といまのゲームの作りかたの違いを知ることができるし、そのころがんばった皆さんのおかげでいまがあるということも感じ取れるので、めちゃくちゃおもしろい作品だなと思いました。きっと、皆さんに楽しんでいただけると思います。

川澄私はオーディションのときに作品について知ったのですが、オーディション資料を拝見した段階だと、ゲーム業界のことが語られるお話なんだと理解できつつ、コノハちゃんのセリフについては「どういうことなんだろう?」と感じる部分があったんですね。

 でも、読み進めていく中で、コノハちゃんはタイムリープした子なんだということを知って。そこで納得して、登場人物との会話にギャップが発生していたんだなと理解できてから、本作の魅力を知ることができました。そして、当時の皆さんはこうしてゲームを作っているんだなということがわかり、そこに現代の人の視点が入ることで、より理解しやすく描写されています。新鮮な驚きをたくさん味わえる作品となっていますので、ご覧いただけるとうれしいです。

アニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』古賀葵、阿部敦、堀江由衣、川澄綾子インタビュー。出演キャストがかつて親しんだ美少女ゲーム作品は?

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