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京産大生差別深刻 飲食店が入店拒否・就活で不当な扱い

2020年4月20日 02時00分 (5月27日 04時33分更新)

ツイッターに載せられた、京都市内の飲食店に張り出された京産大生の入店を断る文書の写真=一部画像処理

抗議電話やメールが殺到している京都産業大=京都市北区で

 新型コロナウイルスの感染拡大で、クラスター(感染者集団)の発生元となった京都産業大(京都市北区)の学生への批判がエスカレートし、一部で差別にまで発展している。感染と無関係な学生が飲食店への入店を拒まれたり、アルバイト先を解雇されたりするほか、就職活動で不当に扱われるケースもあるという。大学関係者は「無関係な学生への誹謗(ひぼう)中傷は控えてほしい」と訴えている。
 京産大では、三月に英、仏など五カ国を旅行した学生三人が、感染に気づかずにゼミやサークルの懇親会などに参加し、クラスターが発生した。京都市によると、大学外での濃厚接触者も含め、五日までに六十九人の感染が明らかになっている。
 京産大によると、感染公表翌日の三月三十日からこれまでに抗議や批判の電話、メールが数百件寄せられた。「殺す」「大学に火をつける」「感染した学生の住所を教えろ」と、脅迫的な内容もある。教員の一人は「SNS(会員制交流サイト)に学生の自宅の写真がアップされたり、感染した学生の就職先にまで誹謗中傷が寄せられた」と嘆く。
 「京都産業大生の入店はご遠慮ください」。そんなビラが一時期、飲食店の店頭に張り出され、ツイッターでも拡散された。入店時に大学名を尋ねられた学生が「京産大だ」と答えると入店を断られた。抗議すると店主に怒鳴られ、追い出されたという。
 別の飲食店でアルバイトしていた学生は店主から「客に聞かれても大学名は言わないように」と指示され、しばらくすると「この時期、京産大生を店で使うわけにはいかない」と休みを強いられたという。大学には「アルバイトを解雇された」との相談も入っている。
 就職活動にも影響が出ている。四年の男子学生(21)は、行く先々の企業で面接のたびに「君は大丈夫?」と感染を疑われ、京産大への風当たりの強さを肌で感じている。別の男子学生(21)は、大阪府内の会社説明会で、京産大生の二人だけが十メートルほど後方の席に「案内」されたと明かした。
 「企業への就職は難しそうだから公務員試験の勉強を始める」と話す学生も増えているという。
 複数の学生たちは「この時期、卒業旅行に出掛けたのは軽率かもしれない」と言いながら、「無関係な学生まで差別されるのは納得がいかない」と憤る。
 (浅井弘美)

◆過度な反応やり過ぎ

 ネットによるいじめや労働問題に詳しい小沢一仁弁護士(東京都)は「感染が意図的ではないのに、過度に拒否反応を示すのはやり過ぎ。就職活動であからさまに差別するのも不適切だ」と指摘。大学への抗議電話は「業務妨害にも当たる」と警告している。

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