ベルギー流クリスマスは恋人のものではなく、圧倒的「家族イベント」だった

クリスマスシーズンのブリュッセル

クリスマスシーズンのブリュッセル。2021年12月撮影。

Robin Utrecht/ABACAPRESS

12月上旬、私の住んでいるベルギーでは、0度を下回ることも珍しくない。ほぼ毎日雨ばかり降っていた11月を終えたと思ったら、雪に変わった。

今の時期は8時半にようやく少し明るくなる。日本との時差は8時間なので、私が朝の7時(日本時間の15時)に日本とミーティングをしていると、あまりの暗さに驚く人が多い。

厳しい冬のなかに見出した、ホッと一息付ける楽しみがクリスマスだ。日本では、クリスマスといえば恋人と過ごすという感覚が強いだろう。一方、ベルギーでは家族と過ごすのが当たり前だと言えそうだ。

家族といっても、伝統的な家族だけでなく、多様なあり方があることは以前の記事でも指摘したが、ロマンティックな要素は少ない。

東京ではお金ばかり使っていたが……

ベルギーの雑貨屋

ベルギーの雑貨屋もクリスマスムード一色になる。

撮影:雨宮百子

私は今年も昨年同様に、クリスマスの日にお世話になっている家族と家に集まり、みんなで普段より少しおしゃれな食事をし、プレゼントを交換しあうことになっている。

豪華な外食や、高価なプレゼントはいらない。恋人がいてもいなくても、疎外感なんて感じる隙間がない。

日本でクリスマスというと、企業の派手な広告戦略に踊らされ、東京でお金を使ってばかりいた私は本当の豊かさに気付かされた気がする。

プレゼント

ツリーの下にプレゼントを置いて、クリスマスを待つ。

撮影:雨宮百子

家族が中心単位になり家に人が多く集まるベルギーのクリスマスは、その分、準備にも時間をかける。

プレゼントは家族で送り合う。クリスマスの1カ月前、11月の第四金曜日、ブラックフライデーのセール付近になると、お互いに「ほしいもの」を伝え合う。

私は昨年、ほしいものを特に伝えなかったせいか、ベルギーの各家庭には必ずある「フライドポテト揚げ機」(フリッツ、いわゆるフライドポテトはベルギー発祥だ)をもらった。日本でいう、炊飯器だ。

お世話になっている家族のお母さんは、今年は家のランプをリニューアルしたいということで、みんなで資金を出しあい、私も80ユーロ(約1万2640円)を出すことになった。他にも、30ユーロ弱(約4740円)のパジャマなどを買い込んだ。

プレゼントは「通販で届いたままでいいかな」と思っていたら、「ラッピングしなきゃね」と言われた。確かに昨年もらったプレゼントは、きれいに包まれていた。プレンゼントはクリスマスが来るまで、ツリーの下に置いておくらしい。

クリスマス前のサンタクロース

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ベルギーを代表するお菓子「ロータス」

撮影:雨宮百子

クリスマスの前に、ベルギーではもう一つの少し大きなイベントがある。サン・ニコラ(Saint Nicolas)祭りだ。この祭りは、毎年12月6日に子どもたちを中心に祝われ、ベルギーの多くの家庭や地域で楽しまれている。

スーパーにも、ハロウィンが終わると、赤い服を着たサンタクロースにしか見えない白髭の陽気な老人が描かれたパッケージのお菓子が並ぶ。

12月5日の夜、ベルギー中の子どもたちがリビングルームに靴を置き、翌朝目覚めると、スペキュロス、チョコレート、マジパン、ミカンなどのプレゼントが用意されているのを見つける。

サン・ニコラの行列

サン・ニコラの行列。少女にキャンディを渡している。2023年12月撮影。

Valeria Mongelli / Hans Lucas.

ベルギーのお行儀の良い子どもたちは、サン・二コラからプレゼントをもらえるのだ。ベルギーのほとんどの家庭ではおなじみの光景だという。

また、サン・ニコラと一緒に登場することが多いのが、彼の助手である「黒いピート」だ。一般的には白人が黒塗り、巻き毛のカツラ、金色のイヤリング、赤い口紅で扮装して演じる。ベルギーの人々の多くは、この伝統を「無邪気な」子どもたちの祝日のキャラクターと見ているが、植民地時代の黒人を連想させるなどの批判もあり、時代に合わせて変えていこうという動きもある。

いずれにせよ、この祭りは、ベルギーの文化や伝統の一部として、家族の絆や地域社会の連携を祝う重要な機会となっているようだ。

あと何回?「会えなくなるまで」のカウントダウン

2022年のパリのクリスマス

2022年のパリのクリスマス。

撮影:雨宮百子

欧州は個人主義だと思っていたが、私はその意味を捉え違えていたようだ。意外なことに家族や地域の絆は非常に強かった。

東京での暮らしに慣れていた私は驚いた。ベルギーでは男女問わず、成人していても毎日親と電話することも珍しくないし、引っ越しや発表会など、誰かのイベントでは必ず手伝う。

日本ではどうだろうか? 私は父母と弟がいるが、全員別々に日本で暮らしている。東京に住んでいたときは、「いつでも会える」を言い訳に、結局年に1回会えばいいほうだった。しかし、異国に来て「いつでも会えなく」なると、意識が変わった。

日本人の女性の平均寿命は87歳、男性は81歳(厚生労働省による)だが、健康寿命で考えるともっと短いだろう。65歳を超えた親に、80歳まで年に1回会うとしたらたった15回しか会えない。より高齢の親戚や祖母となれば、その回数はもっと少ないかもしれない。こう考えると、1回1回がかけがえのない時間に思えてきた。

だからこそ、帰れるときは日本に帰り、親戚や家族・友人との時間を大切に過ごすようになった。

日本でも、お盆や年末年始に帰省する人は多いだろう。そのような特別な時期だけでなく、日常生活の中でもつながりを大切にすることが重要だと気付かされた。

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