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#234

習近平国家主席「3期目」政権に突入 “一強”態勢の確立

中国の習近平国家主席は、5年ぶりの共産党大会を経て、総書記に選出され、異例の政権「3期目」に突入します。2022年10月16日の『BS朝日 日曜スクープ』は、現代中国研究の第一人者、遠藤誉氏が出演。習近平氏の、「3期目」続投に向けた執念と、「3期目」政権で実現しようとするものを分析しました。

■「7回も台湾と連呼…台湾問題を重視」

上山

きょう(10月16日)、中国共産党の党大会が開幕しました。この党大会を経て、習近平国家主席の3期目の続投が確実と見られています。この続投を読み解くカギは、“父の仇(かたき)”を取りたいという習近平国家主席の執念にあると、中国問題グローバル研究所所長、遠藤誉は指摘しています。新型コロナウイルスの感染対策のため、きょうは別室からのご出演です。遠藤さん、どうぞ宜しくお願いいたします。

遠藤

よろしくお願いいたします。

上山

最初のテーマです。「習近平国家主席異例の3期目へ 続投を目指す執念の理由とは」という目線で見ていきたいと思います。

5年に1度開かれます、中国共産党大会、きょう(10月16日)が初日で、習近平国家主席による演説が行われました。この演説、5年間の活動を報告して、今後の新たな方針を打ち出すというものです。その注目ポイントをまとめてみました。習近平国家主席、「社会主義現代化強国」の実現に向けて、これは「次の5年がカギとなる」と述べました。そして台湾情勢については、「武力放棄は約束しない」としつつ、「祖国の完全統一は必ず実現しなければならない」と述べました。

習近平国家主席の演説、2時間近くに渡ったということですが、遠藤さんがそれを全編、聞いて注目されたポイント、どのようなところでしたか。

遠藤

まず感じたのは、いやにゆとりがあったなと。即ち2017年の第19回党大会の時よりも力んでないのが非常に印象的でした。だから、もう3期目のコンセンサスは得られているんだなと直感いたしました。それから、台湾問題に関してですが、何と7回も台湾と連呼したんですね。こんなことは初めてのことで、いかに台湾問題を重視しているかということが分かります。平和統一をしたいんだけれども、もしも外部勢力がその邪魔をするならば、絶対に武力行使を辞さないという決意も表明して、その時には長い時間にわたって拍手が起きましたね。

私が一番、えっと思ってびっくりしたのは、反腐敗運動に関して、「あれは腐敗の巣窟が軍部にあったので、その軍部にある腐敗の巣窟を除去するために行ったのだと言ったことですね。そのおかげで軍のハイテク化ができて、強力な軍隊を作ることができた、したがって、強軍大国になることができたと言ったことも非常に印象的でした。

上山

腐敗運動について言及するというのは、非常に珍しいことではあるわけですか。

遠藤

いえ、というよりも、軍に関して、軍に腐敗の巣窟があったんだ、だから、軍の腐敗を徹底して打倒しなければならなかったんだということを、習近平氏自ら、それを言ったかというのがありました。実は私は今までずっとそのように分析をしてきたんですけども、習近平氏が自らの口でそのように言ったということに対して、ある意味、感慨深いものがありました。

【遠藤誉】中国問題グローバル研究所所長 筑波大学名誉教授 幼少期に暮らした中国・長春市で、共産党軍による食糧封鎖に遭う。そのときの経験を1984年、『卡子(チャーズ) 出口なき大地』として出版。無辜の民が餓死に追い込まれた惨状を告発した。今年7月、その後の調査も盛り込み、復刻版『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(実業之日本社)を上梓。

■最大ポイント「習近平氏の3期目続投に尽きる」

上山

遠藤さんにはこの後、じっくり解説はしていただきますが、まず、きょうからの党大会は5年に1度の開催で、中国共産党にとっては最重要の政治イベントとされています。そのスケジュールです。

菅原

共産党大会は、22日まで1週間の予定であると、昨日発表がありました。その最終日に党規約の改定などが決定するということです。では、党の幹部の人事は、どのようにして決まるのか、共産党の組織図をもとに見ていきたいと思います。

まず、今回の党大会に参加するのは、全国の共産党員9671 万人の代表である、こちら2296人です。今回の党大会の最終日に、この中から中央委員およそ200人が選出されるということです。そして、今回の党大会が閉幕した翌日に、第1回中央委員会全体会議、いわゆる一中全会が開かれます。この一中全会で、政治局委員、そして政治局常務委員、党のトップである総書記がそれぞれ選出されるということです。

上山

遠藤さんは、この5年ぶりの共産党大会、1週間続きますが、最大のポイントは、どこだと考えていらっしゃるでしょうか。

遠藤

それはもう言うまでもなく、習近平氏が3期目を迎えることを確認したいということでして、ほぼ確実ではあるんですけれども。したがって他の、チャイナセブンになるのかチャイナファイブになるのかわかりません、すなわち、政治局常務委員が7人になるのか、5人になるのか。その辺の数はまだわかりませんけれども、そこに誰が就くかというのは、ほとんどもう問題ではないというくらい、習近平氏が3期目を続投するということは、大きなことだと思います。

菅原

木内さんは、今回の党大会はどのような点に注目されますか。

木内

3期目はもちろん確実ということだと思うんですけれども、習近平国家主席が政治的な、主導的な地位と、思想的なものと両方を確立する、「2つの確立」ということですけども、そうしたときに、やはり、力がかなり集中してしまうとか、場合によっては、かつてのように個人崇拝みたいなことにつながっていくということを恐れる、いわゆる長老派がやっぱりあるのであれば、3期目は確実だとしても、そこに何らかの歯止めをかけるような工夫、あるいは人事をしていくのか、してこないのかというのが今後、3期目後の習近平国家主席の色んな政策を見る上で、やはり重要なんじゃないかなと思います。

菅原

それは今後の中国経済においても関係してくるものなんですね。

木内

そこで歯止めがかからなければ、習近平国家主席の思想に基づいた、色々な今の経済政策などがずっと続くということになってしまって、私はやはり、経済にとってかなり逆風なんじゃないかなと思っているんです。そうなるかどうかもやはり、この人事などで決まってくる部分はあるんじゃないかなとは思います。

■国家副主席人事から見える習近平氏の“執念”

上山

きょうは経済に対する影響なども、この後じっくり時間をとって、お話を伺いたいと思います。さて遠藤さんは、なぜ習近平国家主席、3期目を目指すのか。ここを正確に分析しないと、中国政治の現在と未来を見誤ってしまうと指摘をしてきました。

その分析にあたっては、習近平氏の父親を失脚へと追い込んだ人物、“父の仇(かたき)への復讐”をひも解かなくてはならないと、遠藤誉さんは分析をしています。まずは現在の中国の最高指導者、習近平氏が担っているポストを確認しながら読み解いていきたいと思います。

菅原

習近平氏の主な役職ですけれども、まず党のトップである中国共産党の総書記、そして軍のトップである中央軍事委員会の主席、さらに対外的な国家元首である国家主席を務めています。このうちの国家主席については、任期が最大2期10年までという憲法の規定がありましたが、2018年に習近平政権がこの規定を撤廃しています。

ということは遠藤さん、この2018年の時点で3期目の続投については、もう既定路線になっていたということでしょうか。

遠藤

そうですね。2018年というよりも、むしろ2012年のときからすでに決まっていたと思います。というのは、国家副主席の一覧表を作ってみましたので、ご覧ください。このように、江沢民政権、胡錦涛政権ともに、2期目は、すなわち江沢民氏だと第15回ですね。そのときには胡錦涛氏が国家副主席になっていて、それが常務委員になっています。

菅原

政治局の常務委員も兼ねていると。

遠藤

はい、そうです。その状況で初めて、その次の回の党大会に国家主席になるというルールになっているんですね。第17回の党大会の時を見ていただきますと、習近平が国家副主席になって、やはり常務委員になっていますね。その上で第18回の党大会で、習近平氏が中共中央総書記になったあと国家主席になると、やはりこのルールに沿っているんですね。それなのに習近平氏の1期目、第18回党大会で国家副主席は李源潮氏、彼はなんと常務委員ではありません。それから次の王岐山氏、19回でも国家副主席は常務委員ではない。ということは、その次に国家主席になるということはあり得ないということがこの時点で明確にわかっていました。李源潮氏のときは予行演習で、国家副主席が常務委員でないということを慣れさせる、ショックを与えないように慣れさせるという意味で、その時点からやっていたんだなということがよくわかります。

■執念の理由①“父の仇(かたき)を討つ”

上山

そうしますと、まさに2012年、10年前の1期目を務めるときから、自分は3期務めるという構想が習近平国家主席の胸の内にあったのかといったことが推測できますが、では、なぜ習近平国家主席がそこまで3期目の続投にこだわるんでしょうか。遠藤さんは2つの理由を指摘しています。1つ目が“父の仇(かたき)を討つ”ということですね。

遠藤さんはかねてから、習近平国家主席を突き動かしているもの、これが父の仇への復讐心、つまり恨みだとも分析してきましたけれども、これがやはり3期目を目指す中で。1つポイントになってきているのでしょうか。

遠藤

そうですね、1番大きな理由はこれです。それは鄧小平氏への恨みでして、習近平の父、習仲勲氏は鄧小平氏によって冤罪で失脚させられた。実は毛沢東氏が後継者として習仲勲氏のことを考えていたんですけれども、それに対して、やっかみ、嫉妬心を持って、何が何でも蹴落としてやるという気持ちで、冤罪で鄧小平氏が父・習仲勲氏を失脚させたということに対する恨み、それが一番強いと思います。

上山

こちらで経緯をまとめてみました。実は2回、習仲勲氏、習近平国家主席の父は失脚しているんです。

1959年に習仲勲氏は副総理にまでなった人物です。しかし、1962年には反党活動を行ったという罪で16年間投獄されます。これについて遠藤さんの分析では、鄧小平氏による陰謀だったとしています。その後、習仲勲氏は、文化大革命後の1978年に名誉回復されて広東省に赴任、3年後には中国共産党中央の要職に就きました。しかし、1990年、全人代で常務委員会を突如、欠席し、再び失脚します。

遠藤さんは、2度目の失脚も鄧小平氏による強要だったと分析しています。遠藤さん、鄧小平氏にしますと、なぜ習仲勲氏を2度も失脚させたんでしょうか。

遠藤

先ほども少し触れましたが、毛沢東氏がものすごく習仲勲氏をかわいがっていて、習仲勲氏は延安という革命の根拠地を築いた人間ですので、中華人民共和国を建国するのに、ものすごく大きな貢献をした人なんです。したがって、自分の後継者にしようと、大人しい人で野心がないので、後継者にしようと毛沢東が思っていた。

それに対して、野心の強い鄧小平氏がこのままだと、習仲勲氏が毛沢東氏の後を継ぐことになるかもしれないというので、陰謀を働かせて蹴落としたという状況がございます。習近平氏にしてみれば、トップに立ったら、どんな人よりも長く絶対にこのトップの座から降りるものかという強烈な気持ちを持っているだろうなと私は思います。

上山

世の中で言われているのは、毛沢東氏に並び立ちたいんじゃないかということも指摘されていますけれども、それよりも、ある意味この鄧小平氏を超えたい。こういった意識があるということなんでしょうか。

遠藤

はい、その通りです。鄧小平を乗り越えて、そして毛沢東と並び立つ。あるいは、ひょっとしたらもう毛沢東を超えるかもしれません。それは今後の5年間にかかっていると思いますが、少なくとも鄧小平を乗り越えるんだと、少なくとも毛沢東と並び立つんだということが、心の中に非常に強い覚悟としてあると思います。

■執念の理由②アメリカとの戦い

上山

習近平国家主席にとっては、鄧小平氏を超える指導者になることがある意味、それが父の仇をとったことにもなるという遠藤さんの分析ですけれども、遠藤さんはこのこととも関連して、習近平国家主席が3期目続投にこだわる理由、もう1つ指摘しているんです。2つ目の理由、それがアメリカとの戦いということです。遠藤さん、具体的にはどういうことなんでしょうか。

遠藤

IMFが2030年には中国の経済、GDPがアメリカを超えるだろうと予測をしております。イギリスのシンクタンクが、いやいや2028年あたりにはきっと超えるよという予測をしているんですが、そのようなことをさせてはならないとアメリカは、あの手この手で中国の経済を衰退させるように、中国を潰していこうと、色々な手段を考えて、様々な制裁をやっているわけですよね、対中包囲網とかもそうですが。こんな時期に、中国で政権交代ということがあると非常に危険な状況がまいりますので、例えばソ連が崩壊したときのような、第2のゴルバチョフのような状況に万一にもなったらおしまいだと、どんなことがあっても退くわけにはいかないと思っていると思います。

きょうのスピーチでも習近平は、「今、人類は十字路に立っているんだ」と、大きな分岐点にあるんだということをものすごく強調していました。まさにその分岐点にある、だからそのときに自分は退くわけにいかないということで、反腐敗運動とかハイテク国家戦略、軍のハイテク化とそれから軍事大国を目指してきょうまで来ているわけですから、それを途中でやめることはできないという、外的な要因があると考えます。

■習近平氏の権力強化に異論は!?

上山

一方で、木内さんも指摘なさっていましたけれども、中国には長老と言われる人たちがいます。それから共産党という党の組織もあります。もちろん、国民もいるわけですね。こういった人たちは、習近平国家主席の3期目について、ポジティブに捉えているのかどうか。この辺はどのようにお考えですか。

遠藤

アメリカの制裁がございますね。その制裁に対して、愛国心がものすごく強くなっていて、もう中国は一定程度、強くなっていますから、中華民族の偉大なる復興ということで、アメリカに潰されてなるものかという思いが強い。もちろん言論統制に対する不満は多くの人に共通してあると思います。しかし、それ以上に、中華民族の尊厳というものを重視して、そちらを優先させて、アメリカにやられてなるものかという気概に燃えているというのが全体の平均的なムードではないかと考えます。

菅原

そういった中で1点気になる動きがありました。この党大会が始まる直前に、北京市内で橋の欄干に横断幕が掲げられましたよね。習近平国家主席を呼び捨てにしまして、「独裁者やめろ」と書かれていたわけです。党大会が迫る中でのこうした動き、どう見ればいいんでしょうか。

遠藤

この横断幕の内容自体は、私も賛同ですし、理解ができるんですけれども、ただ、これは単独犯の行動でして、この本人はツイッターで同じ文言を書いているんですが、(北朝鮮の)金正恩総書記を師匠としているとか、あれっと思うような言葉が色々とツイッターに書いてありました。これじゃ、何人かの追随者はいたとしても、みんながついていくという、大きなムーブメントにはならないなと感じましたね。14 億人もいれば、このような行動を起こす人は何名かはいるでしょう。

ただ、言論の自由を弾圧するということに対して、これは私自身も絶対に許さないと思うからこそ、私は『もう一つのジェノサイド、長春の惨劇、チャーズ』という本を書いて、どんなことがあっても中国が言論の弾圧をして無視している史実を絶対残してやるぞという気持ちで仕事をしておりますので、中国の人民の、その気持ちは、私はよくわかります。

■「習近平氏の3期目は経済“逆風”スタートか」

上山

3期目が確実と見られている中国の習近平国家主席。何を実現しようとしているのか。中国の経済については懸念も示されているような状況です。木内さんはこちらの数字に注目しています。中国政府は2022年の経済成長率の目標。中国政府としてはプラス5.5%前後としているんですけれども、しかし、この達成はほぼ困難と見られています。

世界銀行で出した9月下旬の発表ですと、中国の実質成長率の予想はプラス2.8%ということで、世銀の予想でも、4月からはGDPの予想かなり下げてきていることがわかります。木内さん、中国の経済かなり厳しくなってきているということですか。

木内

その通りですね。ちなみにIMFの見通しでも今年3.3%前後で、全体的に見通しが厳しくなってきているということだと思います。さらに来年、世界経済はもっと下振れれば、この2.8%よりも下振れる可能性もあると思います。ここから減速していった場合、政府の目標である5.5%は絶対、達成できないということになってくると思います。

これがたまたま、例えばコロナショックみたいな予期せぬものによってなったのであれば、まだ言い訳はできると思うんですけれども、今回の党大会を睨んで、習近平国家主席がその理念に基づいて、思想に基づいて主導してきた色々な政策が、やはり景気を悪化させてきた面があると思うんですね。習近平国家主席は経済の安定みたいなところの優先順位があんまり高くないのではないかなという印象があります。例えば不動産、バブル潰しのようなことをして、結局、日本の過去の例にも見られているように、不動産価格が大きく下がると、消費も弱くなるし、非常にダメージが大きいんですね。金融機関も痛む。

それからIT産業に対しては、統制を強化するということで、海外から中国への株式投資などにもかなりダメージが出てきている。そして足元ではゼロコロナ政策。これはやはり2000年に中国がいち早くコロナ問題を押さえ込んだことがありましたので、それを引きずっているという部分もあって、共産党大会で習近平国家主席の3期目が確実となるとしても、より思想的にも治世が確立してきますと、前の政策を間違ったから修正するというわけにいかなくなるので、今のまま続いてしまうと。来年に入ると世界経済も弱くなってくるということになると、3期目というのは、非常に経済の逆風に見舞われる形でスタートすることになるんじゃないかなと思います。

■中国経済“減速”懸念にどう向き合うのか

上山

遠藤さんは、中国経済に不安な要素もあると木内さんからも指摘がありましたけれども、どういったお考えをお持ちでしょうか。

遠藤

木内さんのおっしゃっているのは、現象としては、その通りだと思います。しかし、そこには色々な要因がございまして、例えば、ゼロコロナの政策を変えることができないのはなぜかと言いますと、中国では医療資源があまりに不足していて、もしもゼロコロナ政策を変えると膨大な量の死者が出ます。3カ月で160 万人の死者が出るというシミュレーションがあります。したがって、とてもじゃないけど、今の医療資源の状況でゼロコロナ政策を変える、解除するということはできない。

これができないと、なかなか経済は動かないということがありますので、木内さんのおっしゃった懸念は正しいと思います。しかし、2つおっしゃったことに関しては少々違う事情がございまして、例えば不動産。これはどういうことかと言いますと、大学受験の競争が激しいものですから、(子供が)優良な小学校に入るためにも不動産を持っていないとだめなんですね。その証明書がないと入学させてくれないというのがあるので、やむなく、いい大学に入るために小学校のときから親が不動産を購入するというようなことをやっているので、習近平としては大学受験の競争をやめさせようということで、塾を取り締まったりとか、色々なことをやっている。そこの根本的な原因をやらないと、教育費にあまりにかかり過ぎるので、2人目、3人目をどんなに産んでいいと言われても産まないという人が多くて、少子化問題で国力がどんどん弱っていくという非常に大きなジレンマを抱えています。

それからITのテンセントとかアリババのような大きな企業に関して、そこに手を加えていることをマイナスの面のようにおっしゃっているように思われますが、実は、中小企業及び零細企業が銀行に融資をお願いしても、例えばアリババの傘下にあるのならばすぐ融資してあげるけど、おまえ単独ならば融資してあげないというような状況があって、中小企業及び零細企業が全く育たない。したがって、独占禁止法でこれを何とかやめさせなければならない。しかも、アリババの傘下に入ってしまったら、もうイノベーションなんかもうどうでもいいやという感じになって競争が起きないので、中国のイノベーション力が下がっていきます。となると国力が下がっていきますね。そういう側面があるんだということも、頭に入れておかないといけないのではないかと思います。

上山

現実的に中国の社会状況があってのことだというご指摘ありましたけれども、木内さん、いかがですか。

木内さん

遠藤さんがおっしゃられた通り、色んな問題があるんだと思うんです。最後にされたIT企業に対する統制強化というのは、多分、いろんな狙いがあって、「共同富裕」の思想もあるので、非常にアリババとか、儲けてしまったところを押さえるっていうのもあると思うんですね。当初は新しい産業は目をつぶって、途中で問題が起きてから叩きに行くというのは常套手段だと思うんですが、アリババあるいは傘下のアントグループですね。

もう1つは個人のデータを非常に握っているということが多分あったと思うんですね。これはいわゆるECの中で、個人の色々な情報が集約されていると。テンセントであればSNSの個人の色々な投稿の情報があるということですが、それはやっぱり国家に対しても脅威でもあるので、個人のデータを民営企業が握っている。そういうこともあって多分、国に対する、国家に対する恐怖感、脅威もあって、ある意味、ちょっと過剰に叩いたのではないかなと、そういう事情もあるのかなとは思います。

■習近平政権「3期目」 日本の対応は!?

上山

習近平国家主席の異例の3期目続投が確定するのを受けて、今後、日本はどのように対応していけばいいのか、伺いたいと思います。遠藤さんはいかがでしょうか。

遠藤

習近平は、台湾問題も経済に絡めて囲い込んでしまって、そして平和統一をしていこうと思っています。武力統一をすると台湾の人たちが反中反共になりますね。台湾は一定の軍事力を持っていますから、そういった人たちが反中反共という心をもって一つの中国の中に入ってくると、中国共産党による一党支配体制が揺らいでしまいます。そのような危険な道を習近平は選びたくない。但し台湾が「中華民国」政府として独立を宣言すれば、当然武力攻撃をします。そのために反国家分裂法が2005年に制定されています。しかし習近平としては何としても平和的手段で統一したいと思っているんです。

平和と言うと、いかにも、いい言葉のように聞こえますが、平和主義というのではなく、中国にとって非常に得な状況を作ろうとしているだけなんですね。戦争をしない方が中国は経済的に繁栄できますので、アメリカに潰されないで済みます。したがって日本は貿易のあり方というものに関して検討していかなければならないのではないかと思います。平和という言葉に騙されることなく、全世界の190カ国のうち128カ国が中国を最大貿易相手国としておりますので、この恐ろしい事実をちゃんと見つめて、日本の貿易のあり方というものを今後しっかり考えていかないと、日本は結局、習近平のやりたい平和統一の方向の中で、そこに絡め取られていくという危険性があるのではないかと懸念します。

上山

木内さんどうでしょうか。経済の相互依存を使いながら、絡め取るというふうな表現がありましたけれども、こういったことも言われていますけれども。

木内

今のお話と、ちょっと流れがつながるんですけれども、やはり国内の経済が悪くなると、さらに海外の市場を広げていくという力学が働きやすいと。その過程では、安全保障上の軋轢も起こってくるということなんですが、その延長線上で、米中が対立する、それから市場が分断化していくという状況は、やはり避けなくちゃいけないと思います。

特に日本にとってもデメリットが大きいので、日本としてはやはり、米中両国に対して、経済貿易の有効性、メリットを見て、ちゃんと伝えて、両国の経済的な安全保障上の対立が決定的にならないように働きかけていくというのが、重要な役割としてあるんじゃないかなと思います。

上山

遠藤さん、習近平氏は、4期目はあり得るんでしょうか。

遠藤

あり得ます!

上山

なるほど。分かりました。きょうはご出演ありがとうございました。

遠藤

ありがとうございます。

 
(2022年10月6日放送)
 

中国共産党大会は10月22日に閉幕しましたが、閉幕式の場で、胡錦涛・前国家主席(79)が途中退席を促されました。国営の新華社通信は、胡錦涛氏の体調不良が理由とツイートしています。党大会閉幕翌日の23日、中国共産党は、第20期中央委員会第1回全体会議(1中全会)を開き、最高指導部を構成する党政治局常務委員を選出しました。習主席は総書記に3選されました。
新たな政治局常務委員は、習近平国家主席の側近の登用が目立ち、来年の全国人民代表大会(全人代)で確定する首相は、上海市共産党委員会書記を務める李強氏(63)が有力視されています。前指導部で序列4位だった汪洋・全国政治協商会議主席(67)が中央委員にも選出されませんでした。胡春華副首相(59)も政治局員から外れており、降格した形です。