トランプ氏に大統領免責特権を認めず 米連邦控訴裁

トランプ米大統領

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米首都ワシントンの連邦控訴裁判所は6日、ドナルド・トランプ前大統領(77)について、大統領免責特権を認めず、2020年大統領選の結果を覆そうと企てた罪で起訴されうるとの判決を出した。

トランプ氏は、大統領としての職務の範囲内の行為については刑事責任を問われないと主張していた

しかし、連邦控訴裁の判事3人は全員一致でその主張を退けた。

判決は、「選挙結果の承認と実施という、行政権に対する最も基本的なチェック機能を無力化するような犯罪も犯せる、無制限の権限を大統領はもっているとするトランプ前大統領の主張は、受け入れることができない」とした。

また、「この刑事裁判のため、トランプ前大統領は他のすべての刑事被告人と同様、『市民トランプ』となっている」とした。

トランプ氏は何年にもわたり、大統領免責特権を盾に複数の裁判を闘ってきた。そのため今回の判決は、トランプ氏にとって逆風となった。

トランプ陣営の広報担当スティーヴン・チャン氏は、判決直後に声明を発表。「(前大統領は)DC巡回控訴裁判所の判決に謹んで異を唱え、上訴する」とした。

また、「大統領に免責が認められないなら、今後退任する大統領はすべて、対立政党から即座に起訴されることになる」、「完全な免責がなければ、米大統領はまともに機能できない」と主張した。

この訴訟は最終的に、保守派が6対3で多数派を占める連邦最高裁に行き着く可能性がある。トランプ氏は12日まで上訴できる。

トランプ氏支持者は反発

トランプ氏を強く擁護している人々は、連邦最高裁が判決を覆すことへの期待を表明した。

トランプ氏が今年の大統領選で共和党候補となった場合の副大統領候補に取り沙汰されているエリス・ステファニク下院議員(ニューヨーク州)は、今回の判決について「危険な前例をつくり、憲法に違反し、国家の根幹を脅かす」と述べた。

判決は、大統領に免責特権を認めることは、三つの異なる部門が互いにチェックし合うとされる米政府のパワーバランスを脅かすと指摘。

「トランプ前大統領の姿勢は、大統領を三権が及ばない位置に置くことで、権力分立のシステムを崩壊させるものだ」と強い調子で説いた。

連邦最高裁はどう対応するか

トランプ氏については、2020年大統領選でジョー・バイデン氏の勝利を覆そうと共謀し、大統領職にとどまろうと不正を働いた罪で、司法省のジャック・スミス特別検察官が起訴した

この裁判は3月4日に予定されていたが、免責特権の訴えに関する判決が出るまで延期された。連邦最高裁に持ち込まれれば、数週間遅れる可能性がある。

連邦最高裁は、下級審の判決を保留する、そうした請求を認めない、免責の訴えについて自ら判断する――のいずれかを選択する。3番目を選択した場合、判事らは6月までに決定を出すことになる。

著名弁護士ニール・カティアル氏は、連邦最高裁はこの訴訟を取り上げないだろうとX(旧ツイッター)で予想した。

「トランプの主張は非常に弱く、控訴裁判所の判決は非常に綿密でよくできている。連邦最高裁は審理しないだろう」

トランプ氏の弁護団の主張は、議会で弾劾の有罪評決を受けない大統領は刑事訴訟の対象になり得ないとの考えに基づいている。トランプ氏は下院で弾劾されたが、上院で有罪評決を受けたことはないと、弁護団は指摘している。

今回の判決で判事らは、その理屈であれば、「大統領は弾劾され有罪評決を受けない限り、罰せられずにあらゆる犯罪を犯す自由をもつことになる」と書いた。