被災地アレッポからBBC記者報告 トルコ・シリア地震

アッサフ・アッブード、BBCアラビア語シリア・アレッポ

A destroyed building in Aleppo

シリア・アレッポの市内に残るのは破壊の跡ばかりだ。6日に起きた大地震のずはるか前から、アレッポは長年の内戦による戦禍に苦しみ続けていた。シリア政府が支配するアレッポでは、今回の地震で400人以上が死亡した。そこに到達した外国の報道機関はまだ少ないが、現地入りしたBBCがアレッポの状態を報告する。

Presentational grey line

私たちはシリア政府の許可を受けて10日、内戦で引き裂かれたアレッポ市内の被災地に入った。

被災地区に入ると、目に映る被害が今回の震災によるものなのか、それとも12年続く内戦によるものなのか、見分けるのは難しかった。

がれきが転がる寒い広場に、住民の姿があった。その多くは毛布やコートにくるまっていた。

市内東部のアル・シャール地区では、複数階の建物がいくつも、ぺしゃんこになっていた。がれきを掘り起こす音が響いた。

「あの建物の1階に住んでいた人を知っていたけど……彼は逃げられなかった。間に合わなかった」。こう教えてくれた女性は、がれきの山を指さして続けた。「建物が崩れた時、彼はまだ中にいた。奥さんや子供たちと一緒に、死んでしまった」。

この家族では娘1人だけが、がれきの中から救出され、いま病院で手当てを受けているのだという。

今回の地震は、すでに危機のただ中にあった国に、一層の惨状をもたらした。

政府支配地域と反政府支配地域の両方での死者数は4000人近くに達し、負傷・行方不明者は7000人以上に上る。

シリアでは2011年、バシャール・アル・アサド大統領に対する平和的な抗議運動が衝突から戦闘へとエスカレートし、内戦に至った。現在まで続く戦いの中で、アレッポの大半は破壊された。

かつては国際交流の中心地として栄えたシリア北部のこの街を、再建しようとする動きはある。しかし、ロシアが支援するシリア政府と、それに抵抗する反政府勢力の戦いが残した傷跡は、まだ随所で明らかだ

かろうじて立ち続ける建物も、いずれ倒壊する危険があるものは、解体しておかなくてはならない。

Rescuers in Aleppo
画像説明, アレッポに入った救助隊は、危険な状態にある建物を解体しなくてはならない

「近くで2つの建物が崩れた。それぞれに30戸くらいが入っていて、1戸には少なくとも5人ずつ住んでいた」。こう言う男性は、「まだがれきの下に60人か70人いる。助かったのは4、5人だけだ」と話した。

崩れずに残った建物の多くが不安定な状態にあり、これが救助作業を妨げている。

「人を助けようと我々が作業している最中にも、見ての通り建物は揺れている。国際的な健康安全基準として、それは見過ごせない。なのでまずは住民を避難させた」と、陸軍将校が私たちに説明した。

「避難所に大勢が身を寄せている。住んでいる建物が危険なので避難した人がほとんどだ」

アレッポ市内では特に東部の被害が大きく、数千人の住人が避難所に行くしかなかった。

この街の人たちは、何年も続く戦禍に追い打ちをかけるように、大地震に見舞われた。この先どうなるのかは分からない。

(追加取材: マーリン・トマス)