東電旧経営陣4人に13兆円の賠償命令 原発事故で株主代表訴訟

東日本大震災で破壊された福島第1原発

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画像説明, 東日本大震災で破壊された福島第1原発(資料写真)

東京地裁は13日、東京電力福島第一原発事故をめぐり、東電の株主48人が旧経営陣5人に対し損害賠償を求めた訴訟で、元会長ら4人に連帯して13兆3210億円を支払うよう命じた。原発事故について、旧経営陣の民事上の責任を認めた司法判断は初めて。

2012年に株主代表訴訟を起こした原告の株主たちは、経営陣が「津波対策を怠り、会社に巨額の損害を与えた」として22兆円を東電に賠償するよう求めていた。

朝倉佳秀裁判長は、東電が巨大津波を予見できたはずが対策を「先送り」して事故を招いたと認定し、勝俣恒久元会長ら4人が取締役としての注意義務を怠ったと、賠償責任を認めた。

判決は、原発事故が起きれば「国土の広範な地域、国民全体に甚大な被害を及ぼし、我が国の崩壊にもつながりかねない」と指摘。原子力事業者には「最新の知見に基づき、万が一にも事故を防止すべき社会的・公益的義務がある」と明示した。

さらに、国が2002年に公表した地震予測「長期評価」や、これをもとに東電子会社が2008年に計算した最大15.7メートルの津波予測の信頼性も認定したうえで、対策を講じなかった幹部らの「不作為」を「津波対策の先送りであり、著しく不合理で許されない」と指摘。「経緯をつぶさにみると、東電では、事故前、万が一にも過酷事故を起こさないよう、いかなる対策が可能かなど、原子力事業者として当然に、また極めて厳しく求められる安全確保の意識に基づいて行動していない」としている。

経営幹部が任務を怠ったことによる東電の損害として、廃炉について約1兆6150億円、被災者に対する損害賠償費用について計7兆834億円の支払い、除染・中間貯蔵対策費用計4兆6226億円を認定した。

判決について東京電力は、「個別の訴訟に関することは回答を差し控えさせていただきます」とした上で、「原発事故により、福島県民の皆さまをはじめ、広く社会の皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて、心からおわび申し上げます」とするコメントを出した。

Plaintiffs in a lawsuit over Fukushima nuclear accident in 2011 walk toward Tokyo district court in Tokyo, Japan, 13 July 2022.

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画像説明, 東京地裁に向かう原告団(13日、東京)

判決が出ると、原告たちは「株主勝利」、「責任認める」などと書かれた横断幕などを地裁前で掲げた。原告弁護団は、国内の民事事件の賠償額として過去最高だとしている。

株主で原告の木村結さんは、「原子力発電所は、ひとたび事故を起こせば、取り返しのつかない被害を生命と環境に与えるもので、その重責を担う覚悟を持たない者は、取締役などになってはいけないと示していただいた」と、判決を歓迎した。

弁護団は、賠償額13兆円は元会長ら4人が個人として支払える金額をはるかに超えていると認めた上で、各自がそれぞれ可能な範囲で支払うことを原告は期待していると述べた。

弁護団は、「この判決は、福島原発事故の原因に関して最も包括的な証拠調べを実施し、これにもとづいて判断されたものである。被告らは、原発事故によって甚大な被害を多くの住民に与えたことについて少しでも反省する心があるなら、住民に対して深く謝罪をし、この判決に対して控訴することなく、これに従うべきである」と声明を出した

Children are tested for radiation following damage to the Fukushima nuclear plant after the Japanese tsunami and earthquake of March 2011.

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画像説明, 2011年3月の原発事故後に被ばく検査を受ける子供たち

他方、東電の勝俣元会長ら3人は、福島県の入院患者など44人を原発事故からの避難の過程で死亡させたなどとして、検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で起訴されている。この刑事裁判について1審の東京地裁は2019年9月、3人に無罪判決を言い渡した。昨年11月に控訴審が東京高裁で始まり、来年1月に判決が言い渡される予定。