中国の47万円EV車、米テスラを猛追

ジャスティン・ハーパー、ビジネス担当記者、BBCニュース

The Wuling Hong Guang Mini EV, an electric car that has quickly won over Chinese drivers.

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中国で4500ドル(約47万円)で販売されている低価格の国産電気自動車(EV)の売れ行きが、米EVメーカー「テスラ」の高級車を上回っている。 

大ヒットしているのは、中国国営の大手自動車メーカー「SAIC Motor」のコンパクトEV。

「宏光ミニEV」と名づけられたこの自動車は、米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁事業の一環として製造されている。

中国国内では先月、この低価格EVの売れ行きがテスラの約2倍に上った。テスラの車をめぐっては今月に入り、安全性の問題が浮上している。

4500ドルの「宏光ミニEV」が1番人気のモデルだが、空調つきのアップグレード・モデルでも価格は5000ドル(約53万円)を超える程度だ。こうした車は「市民の通勤手段」として販売されている。

合弁会社「SAIC-GM-Wuling」は中国では「五菱」として知られる。

自動車の専門家たちは中国のEVについて、バッテリーや航続距離、性能では明らかにテスラに遅れをとっているものの、その利便性と低価格によって、中国で最も売れている「新エネルギー」車の1つとなっていると指摘する。

昨年登場したベーシックモデルの場合、最高時速が100キロで、4人まで乗車できる。

The Hong Guang Mini EV is being built under a joint venture known as Wuling with US car giant General Motors (GM).

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画像説明, 中国の低価格EV「宏光ミニEV」

中国市場調査グループ(CMRG)のマネージング・ディレクター、ショーン・レイン氏はBBCに対し、「中国政府は大気汚染の削減に真剣に取り組んでおり、電気自動車の導入や技術革新の促進において世界をリードする存在になりつつある」と述べた。

EVを促進するため、中国政府はナンバープレートの無料提供を保証している。多くの都市ではガソリン車用のナンバープレートの取得に何カ月もかかることもある。

テスラに挑む

2020年下半期の「宏光ミニEV」の販売台数は約11万2000台と、テスラが上海工場で製造する「モデル3」に次いで2番目に多かった。

今月初め、中国の5つの規制当局がテスラを呼び出し、品質や安全性の問題について聞き取りを行った。テスラにとって、中国はアメリカ以外での最大の販売市場だ。

「宏光ミニEV」の売上台数は今年1月にテスラを2倍近く上回った。世界全体では、テスラの「モデル3」に次いで2番目に売れているとみられる。

中国乗用車協会(CPCA)によると、中国では今年1月に「宏光ミニEV」が2万5778台売れたという。「モデル3」は1万3843台だった。

しかし、テスラが昨年に中国での販売台数を3倍に増やすなど、高級志向のEVもまだまだ好調だ。

中国で製造していることから、同国での「モデル3」の販売価格は3万9000ドル(約410万円)ほどにおさえられている。

「宏光ミニEV」を製造する「五菱」は、中国国外への輸出を計画しているという。

「中国には小型で安価なEVの製造メーカーがたくさんあるが、その多くは低品質で走行速度も遅く、幅広い市場にはアピールできていない」と、予測調査会社「オート・フォーキャスト・ソリューションズ」のサム・フィオラーニ氏は指摘する。

「『宏光ミニEV』は、大手企業が本物の車を探している購入者をターゲットにしたシンプルなEVを製造し、事業を拡大した初めての例だ」

「五菱」は、同社のEVを欧州で展開してくれる可能性のあるラトヴィアの自動車メーカーとつながりがあると報じられている。ただ、欧州で販売するには環境への影響を考慮した要件を満たさなければならず、販売価格は中国国内の2倍になる可能性がある。(英語記事 The Chinese £3,200 budget electric car chasing Tesla