320年の歴史があり、「世界最古の新聞」とされるオーストリアの国営日刊紙「ウィーン新聞」が紙媒体の発行を原則終了し、今後は主にオンラインで報道を続けることになった。AFP通信が27日に伝えた。

 ウィーン新聞の前身は1703年8月に創刊され、1857年から国有化された。現在は平日版が1万8千部、土日版が4万3千部発行されている。

 AFP通信によると、同国政府と同紙の間で長年、紙媒体の発行を続けるかが議論されてきたが、27日に議会の賛成多数によって廃止が決まった。紙媒体が完全になくなるわけではないが、その発行頻度は「資金状況に応じて年間10回以上」になるという。

 同紙のツィーグラー副編集長はAFP通信の取材に「今後の記事がどのようなものになるのか、まじめなジャーナリズムが維持されるのか、誰にもわからない」と語った。労働組合によると、200人超の従業員のうち40人が記者だが、半数ほどが解雇される可能性があるという。

 同紙は27日に「終わり」と題したオンライン記事を配信。野党幹部らが「きょうは暗黒の日だ」「重大な過ちだ」と政府に憤った議会の様子を伝え、「この日刊紙は今年6月30日に最終号を迎えることになる」と記事を結んだ。(藤原学思