太陽系と惑星の科学

宇宙惑星科学大講座の研究対象

宇宙惑星科学大講座の研究対象。背景、地球磁気圏。左上から右に、火星(HST撮影:STScI提供) ・太陽(ようこう撮影:宇宙研提供) ・かに星雲超新星残骸(VLT撮影:ESO提供)・惑星系形成の現場と考えられる恒星回りのダスト円盤HD141569(HST撮影:STScI提供)・ 地球オゾン観測(NASA/GSFC提供)

暗黒の宇宙に浮かぶ地球の写真を見ると、地球の何もない真空の空間に孤独に存在している印象を受けます。しかし、実際には地球は宇宙と絶えず 様々な形で物質やエネルギーのやり取りをして活動しているのです。例えば、極地方に見られるオーロラは、太陽から吹き出される太陽風の乱れが地球磁気圏と 相互作用して起きる現象です。オーロラは美しいですが、オーロラが強く光っているときには、地球磁気圏は激しく乱れ、多くの荷電粒子も降り注ぐことになる ため、周地球軌道を回る人工衛星にも大きな影響があります。この太陽風は、同じく太陽からやってくる紫外線と共に、惑星の大気(特に水素)を剥ぎ取る力を 持っています。この水素の散逸は、惑星の大気を徐々に酸化的なものへと変化させる主要な要因であることが分かっています。言い換えれば、太陽磁気圏の活動は、地球や惑星の大気環境の進化を大きく左右しているのです。

一方、宇宙・惑星の研究は別の角度からも重要です。私たち人類は、全員が地球という惑星に住んでいますから、明らかに地球が最も重要な惑星です。しかし、地球のみを観察していても、地球の起源や進化の過程を深く理解することはできません。むしろ地球に似た他の惑星を同時に調べた方が本質的な理解が進むものです。これは、地球に限らず、文化や言語を研究するときにも当てはまることです。 例えば、金星はなぜ灼熱地獄のような摂氏400度にもなる高温の表面温度を持つのでしょうか?また、地球の1割程度の全質量を持つ火星は、なぜ地球の500分の1にも満たない大気しか持たないのでしょうか? これらの他の惑星の大気の特徴が何に起因するのかを研究することで、現在の地球の気候環境がどのようにして成り立っているのかがより良く理解されるのです。

さらに、地球という惑星は非常に活動的な惑星であるために、形成当時の様子を物語る直接的な物的証拠(地質記録)を残していません。その一方、 小惑星のように小さくて活動どの小さい惑星からやってくる隕石には、地球を含む惑星系の形成当時の記録が非常に新鮮な形で残っています。それら隕石の精密 な分析により、原始太陽系星雲から現在の惑星系が生まれる過程が詳細に分かってきました。地球の年齢も平均化学組成も、地球の岩石の測定からではなく、実は隕石の測定に基づいて決められているのです。

このように、我々の住む世界である地球を理解するためには、その周りにある太陽、宇宙空間、惑星の理解が欠かせません。宇宙惑星科学とは、宇宙のこと惑星のこと自体を調べるだけでなく、地球をより深く理解することにも大きな役割を果たす学問なのです。

地球惑星物理学科で行っている宇宙の研究領域は、天文学や宇宙物理学とも共通点は多いのですが、基本的には科学衛星の直接探査できる地球周辺の 宇宙空間領域から太陽や太陽圏の領域を主な研究対象としており、いわば「身近な宇宙」の研究を中心に行っていると考えてください。そしてその延長線上とし て宇宙物理学や天文学の研究領域を位置づけています。

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