対話型AI ChatGPTの登場は、何であれ私たちに衝撃を与えた。これからやってくる未来に過去の枠組みやスキルは通用しないのではないか。私たちはどうすればいいのかと衝撃は不安に変わっていく。「なんで学校に行かなきゃいけないの?」という問いから始まる書籍『冒険の書 AI時代のアンラーニング』(以下、『冒険の書』)は、そんなモヤモヤした大人たちにアンラーニングの必要性を説く1冊だ。著者の連続起業家・孫泰蔵さんに、モヤモヤを直接ぶつけてみた。

(1)孫泰蔵「AIの登場でスキルなんて必要なくなる」とは? ←今回はココ
(2)正解を求めようとすると不幸になる むしろ問い続けろ!
(3)迷惑をかけて恩返し? 小さく頼り合う社会のつくりかた

編集部(以下、略) ご著書『冒険の書』は子どもたちに向けたメッセージであると同時に、大人こそアンラーニングが必要だと強く感じる内容でした。

孫泰蔵さん(以下、孫) この本のトリックに気づいていますね。

 子どもたちはアンラーニングする必要はないんです。この本の大きな問いである「なぜつまらない学校に行かなきゃいけないの?」の「学校」は大人にとっては「会社」のメタファーなんです。

 表紙のデザインや文章は子どもにも分かりやすいように工夫していて、ティーンエージャー向けのふりをしていますがアンラーニングがテーマ。つまり、大人向けなんです。

 書き始めたのは3年半前ですが、この本が出たタイミングでChatGPTが世の中で話題になりました。多くの人たちがAIの力を目の当たりにして、「ヤバい」と実感できたことで、この本のテーマを理解しやすくなったのかもしれませんね。

「AIの登場は人類が火を使い始めたと同じくらいの大きな変革なんですよ」と連続起業家の孫 泰蔵さんは語る
「AIの登場は人類が火を使い始めたと同じくらいの大きな変革なんですよ」と連続起業家の孫 泰蔵さんは語る

スキルなんて身に付けなくていい時代がやってくる

―― 実際、ChatGPTの登場に青ざめて、「新しいスキルを身に付けなきゃ」という焦りと「とても太刀打ちできない」というあきらめのはざまで息もできない私たち大人がいます。この閉塞感の正体は何なのでしょうか。

 身も蓋もない話を先にしてしまうと、リスキリングとか、どんなスキルを身に付けるべきかという議論が終わりを迎えていくと思っています。

 スキルを身に付けなければいけないというパラダイムをアンラーニングする必要がある。つまり、「スキルなんか身に付けなくていいんだ」という時代が訪れようとしている。何百年に一度の革新がAIの登場で起ころうとしているんです。

 人によって見解はさまざまですが、AIの登場って人類が火を使うようになったとか、羅針盤を作ったというくらいの大きな出来事だと僕は思っています。

 火を手に入れたことで食物を料理できるようになって、人類の生活は大きく変わりましたよね。羅針盤を持つことで航海ができるようになって世界は大きく変わった。鉄を使えるようになったことでまた大きく変わりました。それと同じようにAIの登場で、私たちの暮らしは大きく変わってくるんです。

 どのように変わるかというと、生計を立てるという考え方が終わっていくと僕は信じています。つまり、生活のためにお金を稼ぐ必要がなくなる。だからスキルなんか必要なくなるんです。

―― え? それはどういうことですか……?