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従業員が退職した時の会社側の手続きとは?

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従業員が退職する場合は、雇用保険・健康保険・厚生年金保険・住民税・源泉所得税など各種の手続きを会社側で行う必要があります。届出先や届出様式、提出期限などもさまざまで複雑です。どれも非常に重要な手続きのため、処理モレのないようにしなければならず気を使います。
この記事では従業員が退職する場合に会社が行う手続きについて詳しく解説します。


退職手続きを始める前に

従業員が退職するときにはさまざまな手続きが発生します。社会保険や税金などの手続きにはいる前に注意すべきことがありますので確認しておきましょう。

(1) 退職願いを回収する

退職理由は雇用保険の届出書類に記載します。会社側が従業員の自己都合退職による退職として手続きしても、従業員がハローワークで退職を余儀なくされたと言えば退職理由についてハローワークから確認の連絡がはいります。また、退職勧奨で労働争議になる可能性もありますので退職願いは回収しましょう。

(2) 有給休暇を取得する意思の確認

有給休暇の買い取りは法律で禁じられていますが、例外として退職時の買い取りは認められています。退職者の有給休暇取得の意思を確認しましょう。その際、業務の都合で取得しきれない有給休暇が発生し、買い取りを求められた場合は、会社と退職者で協議して買い取り金額を決定します。有給休暇の残日数が多く、退職日までの日数を超える部分は買い取らなくてもよいことになっています。

例えば、退職の意思表示から退職日まで歴日数14日(公休日4日)、有給休暇の残日数15日なら有給休暇の買い取りは10日で問題ありません。15日分買い取るかは会社ごとに決めることになります。

ここでも退職願いは重要となります。退職願には退職希望日が記載されているためです。

退職の手続きの第一歩は「退職願いの回収」と覚えておきましょう。


雇用保険の資格喪失手続き

従業員が退職した場合は雇用保険の資格喪失手続きをします。また、退職者が失業手当の手続きをするためには離職票が必要です。なかには次の仕事が決まっていて不要という人もいますので確認しましょう。

●提出書類
雇用保険被保険者離職証明書
雇用保険被保険者資格喪失届

●提出期限
退職した日の翌日から10日以内

●提出先
所轄のハローワーク

●提出方法
持参・郵送・電子申請(e-Gov:https://www.e-gov.go.jp/

雇用保険被保険者離職証明書の賃金支払状況は、原則として12カ月分を記入します。離職の日以前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上の月が対象です。退職日が賃金締日と異なる場合は支払給与が確定していない可能性があります。その場合は「未計算」として提出します。

雇用保険と労働災害保険をあわせて労災保険といいますが、退職時点で手続きが必要なのでは雇用保険だけです。労働災害保険は毎年6月1日から7月10までに行う年度更新で、退職者の概算見込みで払っていた保険料と退職までの確定保険料を精算します。翌年の更新の時点までは退職者の届出は不要であることを覚えておきましょう。


健康保険の資格喪失手続き

健康保険は厚生年金保険と一括の届出様式を使用して資格喪失手続きをします。末日退職であれば喪失日は翌月1日となりますので注意しましょう。また、扶養家族分も含めて、発行している保険証を回収して届出と一緒に返却しましょう。

●提出書類
健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届

●提出期限
退職した日の翌日から5日以内

●提出先
所轄の年金事務所

●提出方法
持参・郵送・電子申請(e-Gov:https://www.e-gov.go.jp/

退職者から依頼があれば「健康保険資格等喪失連絡票」を発行します。これは協会けんぽの被保険者資格の喪失を事業主が証明するものです。二重加入を防ぐために国民健康保険の加入手続きをするときに提示を求められることがあります。

また、協会けんぽには任意継続制度があります。資格喪失日の前日までに「継続して2カ月以上被保険者期間のある退職者」が対象です。退職者自身で居住地の協会けんぽに退職後20日以内に届出すれば継続加入できます。会社側は通常の資格喪失手続きをするだけですが、任意継続制度の説明を退職者にすると親切でしょう。

任意継続を希望する場合も退職と同時に健康保険証は一旦回収します。任意継続手続きをすると、新たな健康保険証が協会けんぽから退職者に発行されます。


厚生年金保険の手続き

厚生年金保険の手続きは健康保険の資格喪失手続きを行うと同時に処理されます。別途提出する書類はありません。
会社側が入社時に従業員の年金手帳を預かって管理している場合は必ず返却しましょう。

健康保険でご説明した「健康保険資格等喪失連絡票」は国民年金加入時にも資格の喪失確認として掲示を求められることがあります。市町村が様式をさだめている場合で最初から「健康保険・厚生年金保険資格等喪失連絡票」として、健康保険と厚生年金保険のどちらも証明するパターンの書式もあります。


退職手続きに関係する税金

退職手続きに関係する税金は主に住民税と源泉所得税の2つです。それぞれの手続きを確認していきます。

(1) 住民税

住民税は会社が給与引きして翌月10日に市町村に納付する特別徴収が原則です。従業員が退職すると特別徴収できなくなりますので市町村に届出しなければなりません。届出をだすことで、退職者あてに住民税の通知が郵送され、退職者自身で住民税を納入することになります。
再度就職して住民税を給与引きする場合は、新たな就業先が特別徴収継続の届出を提出します。

●提出書類
給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書

●提出期限
退職した後すみやかに

●提出先
退職時の居住地の市町村

●提出方法
持参・郵送

前年中に転居している場合は転居前と後の二カ所に届出しなければなりませんので注意しましょう。

前年の住所地の市町村:特別徴収に係る給与所得者異動届出書
当年の居住地の市町村:給与支払報告に係る給与所得者異動届出書

引用:給与支払報告書等の作成及び提出についての手引書
http://www.city.hashimoto.lg.jp/material/files/group/36/R3tebikisyo.pdf

1月から5月に退職する場合には住民税は一括徴収します。普通徴収への切り替えではなく最終給与から未納分を一括で徴収するのです。まれに給与の振込額がマイナスになることがありますので事前に確認しておくとよいでしょう。また、一括徴収について退職する社員に説明しましょう。


(2) 所得税

退職者の当年1月1日から最終支払給与までの額で源泉徴収票を発行します。通称:退職源泉とよばれるものです。退職後1カ月以内に発行します。退職金を支給している場合であれば別々に発行します。退職源泉に退職金は合算しませんので注意しましょう。

退職者が同年中に新たに職に就いた場合は就職先に退職源泉を提出して前職の収入とあわせて年末調整するのが一般的です。同年中に再就職しない場合は所得税の納付は完了していることや、失業手当は所得税の対象外で確定申告が不要であることなどを説明しておくと親切でしょう。


まとめ

就業員の退職手続きは社会保険や税金など多くの届出が必要です。単純に届出書類と提出するだけではなく、健康保険では届出と当時に健康保険証を返却しますし、雇用保険では届出後に発行される離職票を退職者に郵送するなど対応は複雑です。会社によっては確定拠出年金(DC)や基金などから発行される退職後の書類もあり手続きについて説明が必要なこともあるでしょう。

処理モレのないようにチェックリストを作成して確認するなどの対応を検討するとよいのではないでしょうか。


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