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企業におけるマーケティング組織の果たす役割とは!?

日本企業は、よく「マーケティングが弱い」と言われます。そう言われる理由は何か?そして本来マーケティング組織はどのような役割を企業内で果たす必要があるのか。今回はこんな話題を取り上げます。


マーケティングは何をやる人?

読者の皆様の会社で、周りの人に「マーケティングって何をやる人だと思いますか?」と聞いてみると、どんな答えが帰ってくるでしょうか?

ある会社では「イベントやセミナーをやっている人?」という答えが帰ってきます。B2Cで広告をバンバン打っている会社なら「広告をやっている人?」と返ってくるかもしれません。もしくは「販促資料を作ってくれる人」「商談推進支援をやってくれる人」みたいな答えもあるかもしれません。そもそも企業によってはマーケティング部門が存在せず、営業部門で同等の機能を担っている場合もあります。

ぜひ皆様の周りの人にも聞いてみてください。どんな答えが返ってくるか楽しみです。

企業の命運を握る "戦略を作る" 組織

なぜこんなことを言ってみたかというと、周りの人からどんな答えが返ってくるかによって、その会社でのマーケティングの立場や成熟度が分かるためです。

もし、広告宣伝の実施、販促資料作成、商談推進支援など、「マーケティングは活動を計画して実行する人」と思われている場合、マーケティングの成熟度が高くないか、マーケティング外の組織へのコミュニケーションや連携がまだうまくいっていない可能性があります。

前の記事で、マーケティングの目的は「(顧客を良く理解した上で)セリング (販売活動) を不要にすること」「売れる仕組みを実装すること」と書きました。一方、日本人の経営層や管理職にはMBAホルダーやマーケティングに関する知識を持った人が少ないことも紹介しました

そのため、日本企業では、これらのマーケティングの目的をよく理解しないままマーケティング組織を運営している、もしくはマーケティング組織と付き合っている人が少なくありません。私も外資系企業から日本企業中心の環境に移ってきて、これは強く感じました。

マーケティングが本来「活動を計画して実行」以上に求められる機能は、「戦略を作る」機能なのです。戦略とは、つまるところ目的を達成するために組織の中の人、モノ、カネ、情報の統制と再配分を行うことが含まれます。

これらの機能は、マーケティングがやらなくても人事、経理、IT部門等で既に実施されていると思うかもしれません。たしかに、これらに相当することは他の部門で実施されていることが多いです。しかし、問題はそれらが「ひとつの目的を達成するために戦略的に実施されているか」ということです。多くの場合、これらの機能は意思なく実施されていたり、別々の組織で別々の意図を持ってバラバラに実施されています。

かつての高度経済成長の時代のように、いま実行している施策の精度を高めて改善するだけで成長できる時代でない限り、不確実性への対応や、競合他社よりも売れる仕組みをいち早く実装するといった、企業の経営戦略の是非が企業の命運を決めることも多くあります。これらをバラバラの組織でバラバラに進めるのではなく、企業としてひとつになって進めるために、マーケティング組織が必要になってきます。

マーケティング戦略の作成機能と実行機能

さて、マーケティングには戦略を作る機能と実行する機能があります。それぞれ中身を見てみましょう。以下の図は、その機能の大まかな分類を示しています。企業によってどの機能がどこに分類されるかは多少異なる可能性がありますので、あくまでもひとつの例としてご覧ください。

マーケティング戦略の作成と実行
マーケティング戦略の作成と実行機能の全体像

右側の「マーケティング戦略の実行機能」には、おそらく多くの企業で実施している「商品/価格/チャネルの構築と管理」「キャンペーンの企画、実行、計測、管理」といった機能が含まれます。これらは、「マーケティング組織でやるべき仕事」として真っ先に思いつくでしょう。「商品/価格/チャネルの構築と管理」については、企業によってはマーケティングではなくて商品開発部門等の他の部門で実施しているかもしれません。

そして左側の「マーケティング戦略の作成機能」は、ともすると日本企業のマーケティング組織では実施されておらず、部分的に経営戦略部門、商品開発部門、人事部門、経理部門等で実施されている可能性があるものです。これらの戦略作成機能は、企業のどこかの部門で担当していればいいというものではなく、内容に一貫性があり、目的達成のためにひとつの方向を向いて最適化されている必要があります。

多くの企業における現実

この「内容に一貫性があり一つの方向を向く」ために、実はマーケティング組織が企業内で重要な役割を果たす必要があります。

"バリューオーケストレーション"機能

少し話を変えますが、楽器を演奏したことがある人なら、複数のパートがある楽曲を演奏する際に多くの演奏者を集めて音を奏でる「オーケストラ」のやり方を知っているでしょう。それぞれのパートを演奏するのに、それに適した楽器や演奏者が集まり、思い思いに曲を弾き始めます。それぞれの楽器や演奏者は一流なのですが、これらを集めて演奏させるだけだと、全体としてはいまいちな演奏となってしまうことが多いです。

では、そこに必要なものは何か?皆様はもうお分かりですね。そうです、「指揮者 (マエストロ)」です。曲の強弱、テンポ等を細かく指揮者が調節することで、全体としてひとつになって生きているかのような曲が奏でられます。

実は、企業でも同じことが起こります。それぞれの部門の機能や担当者は一流であっても、それらをただ集めただけではひとつの組織として機能しません。では、これらの組織を戦略的に一つの方向に導くのは誰の役割でしょうか?社長、経営企画室長、商品開発本部長、人事本部長、営業本部長?

最近は、企業の顧客接点に関する戦略を組織内でひとつの方向に導く役割をCMO (チーフ・マーケティング・オフィサー、最高マーケティング責任者)に担わせる場合が増えてきているようです。CMOはマーケティング部門の長でもあるわけですが、顧客接点の戦略という観点で商品開発戦略、プロモーション戦略、営業戦略、それに伴う経営資源の配分と効果の計測、そして組織をひとつの方向に導くための社内外のコミュニケーション、社内協業、従業員教育・採用までを組織横断で「オーケストレーション (組織化、編成、調整)」することで、企業を成功に導くミッションを担うというわけです。

図: オーケストレーション機能としてのマーケティング

このように、企業内に存在する「価値」あるものを「オーケストレーション」するような機能を「バリューオーケストレーション」と呼び、企業の顧客接点の改革 (デジタルトランスフォーメーションを含む)、人財の改革、経営資源の再配分、チェンジマネジメントを組織横断的に行うことで、社内エンゲージメントと競争優位性を高めて顧客体験を向上させる機能が、最近は注目されてきています。

私が在籍する富士通でも、この考え方に則り改革が進んでいます。

それではまた!

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