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文系は役にたたないのか

文系学生自虐的にこう言う人結構いますよね。

理系学生とか他の人たちが勝手にいってるぶんにはあまり害なさそうですし、人によってはほんとに「文系なんぞいらん」ってこともあるとは思いまが、

学んでる本人がそう思ってるのはちょっと寂しい。かくいう私もそういうところがありました。
なので、なんで自分はそう思ってしまったのかを考えて、自分に反論してみたいと思います。

これは、自分肯定キャンペーンの一貫です。

①歴史的背景を見る

文系と理系がわかれたのは、日本の場合は学問の内容や学問の対象よりも制度によるところが大きいです。

明治時代、殖産興業・土木公共事業に携わる技官 or 法務に携わる文官という二分された官僚制度がまずあって、そこを合わせるようなかたちでおそらくかは大学入試試験が理系志望文系志望とわかれていったといわれています。

政府の両者の扱いは第二次大戦以降、基本理系重視・文系軽視となることが多いです。明確にいえるのは以下の二つの時代。

第二次世界大戦期、「科学技術」の重要性が盛んに叫ばれるようになり、一方で文系は抑圧されるようになる。

1960年代、「文系学生が中心となって発生した学生運動への対処」+「所得倍増計画」の二つの理由から、理系重視・文系軽視の政策が続くことになった。

②仮説をたてる
ここから、「技術に結び付けられるかどうか」が役に立つか立たないかの判断基準になっているのではという仮説が立てられそうです。

技術とは「価値を生み出すことができるメソッド」のようなイメージで考えればいいでしょうか。結び付くというのを「学問の理論で、メソッドの確かさを支える」と考えれば、いったんはそれっぽいような気がします。

いったんまとめると、
「理系は、その学問の理論で、『価値を生み出すことができるメソッド』の確かさを支えることができるため、役に立つといえる。」
と言えそうです。

これをそのままひっくり返すと、
「文系は、その学問の理論で、『価値を生み出すことができるメソッド』の確かさを支えることができないため、役に立たないといえる。」
ということになります。

化学や物理学が支えている製造業や、数学や物理学が支えるコンピュータ工学、あるいは生物学が支える医学の生み出したメソッドによって多くの価値を生み出されてきたことはどうにも疑いようがありません。

翻って文系。ただこちらも、よく考えてみると経営学がささえるマーケティング手法・経営メソッドや、文学や歴史学が支える数多くのエンタメ作品、論理学や分析哲学が支える問題解決手法、法学が支える治安維持など案外例を挙げることができます。

これだと、文系は役にたつ学問になってしまいます。これは感覚に合わないので、仮説が間違っていたようです。そもそも政府側の視点から見ると「戦争に勝てるか?」+「雇用が創出できるか?」という論点が重要視されしまいます。

そうなれば、理系の学問がより重要視されるのはしょうがありません。第二次世界大戦の場合はどちらが先に核兵器を開発できるか?の戦いでしたし、雇用創出の観点から見ると製造業は重要ファクターとなります(雇用の乗数効果)。

③感覚的に考えてみる
感覚的に仮説を立ててみると、「理系の学問は未来を予測できるので役にたつが、文系の学問は未来を予測できないので役にたたない」というのが思いつきました。役にたつこととはまさに、未来予測ただそれだけであるということです。

文系の学問で未来を予測できるものが勉強不足でどうにも思いつきませんが、理系の場合は思いつきます。アルマゲドンの隕石落下予測とか、地球温暖化モデルとか、感染症拡散モデル、天気予報、関東沈没説などです。商品開発のプロトタイピングもそれにあたるでしょうし、医学もこの先病気がどう進行してしまうのか教えてくれます。

これなら、文系は役にたたないという主張をとりいそぎ支えてくれそうです。

④戦略を考えてみる
であれば、「文系の学問は役にたつ」って言いたい場合は、未来予測以外にも役に立つことがあることを暴いて(相手によってはこれだけでも十分かもしれませんが)、それを文系の学問がサポートできるとアピールすればいいかもしれません。

樋口恭介さんの本『未来は予測するものではなく創造するものである』にいくつか使えそうな話がありました。

たとえば、たくさんの人を束ねあげるのにはストーリーが必要であるというような話。ここから、「ストーリーは役にたつ」ということが言ってしまえば、ストーリーは文系の領域ですからそのまま、文系の学問は役にたつといってしまえそうです。

ほかにも、伊勢田哲治さんの『哲学思考トレーニング』からは、その主張が正しいかどうか判断するには分析哲学の思考法が使える。といったところからも同じように話が進められそうです。

⑤さいごに
なんとなくふと、なんでみんな文系を役にたたないって思いがちなんだろうと思いました。理系の人がそう言ってるというよりかは、文系の人が自虐的に言っている人が多い気がします。そんなに役にたたない学問なら、とっくになくなっていそうなのに。そういうところから書いてみたくなった文章です。 

日曜日だし何か書いてみようと思ったのですが、深夜というのはよくありません。申し訳ございません。感覚的に考えてはいけません。みなさんツッコミながら読んでいただけると幸いです。

参考文献
『文系と理系はなぜ分かれたのか』隠岐さや香 著
『科学哲学への招待 (ちくま学芸文庫)』 野家啓一 著
『哲学思考トレーニング (ちくま新書)』 伊勢田哲治 著
『未来は予測するものではなく創造するものである』樋口恭介 著
『ぐるっと! 生産管理 【ぐるっと!シリーズ】 』片山 和也 著


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