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2022年上半期 個人的ベストアルバム

今年も約半分が終わり上半期ベストを選ぶシーズンがやってきました。
なんかちょっと早くない?と思う人もいると思いますが、例年12月はほとんどリリース無いし、5月の終わりから6月の頭くらいまでが音楽シーン的には実質的に半分くらいなのかなと思ったので、今回はこの時期にやってみようかなと思います。
今年は例年以上に大型リリースが多く、しかもそれがメディアからの評価も世間からの評価も高い作品が多いという近年稀に見る当たり年となっている印象ですよね。
今年はコロナも少しは落ち着きを見せ、自分も久々に海外まで行ってきました。
いくつかライブも観れたりしたので、やっと以前のような生活が徐々にではあるけど戻ってきたのかなと体感しました。
今回も50作品、自分がよく聴いた、お気に入りのアルバムを選んでみました。
まだ聴いた事のない作品や気になった作品を見つけてもらえたら嬉しいです。
今回も作品タイトルの部分に各種ストリーミングサービスへのリンクを貼っておくので、気になった作品があればそちらからぜひ!
長くなりますが最後まで読んでもらえたらなと思います。
それではどうぞ!


50. Hinako Omori 「a journey…」

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横浜出身で現在はロンドンをベースに活動している日本人アーティスト、Hinako Omoriのデビューアルバム。
様々なアーティストやミュージシャンのツアーに帯同したり、サウンドエンジニアとしてレコーディングに参加したり、これまで裏方として作品作りをしてきた彼女が初めてメインコンポーザーとして作り上げたのが今作ですね。
環境音楽とエレクトロサウンドを自然な形でミックスしたような、空気の揺らぎやざわめきとアナログのモジュラーシンセの温もりのある音色が違和感無く同化したようなアンビエントサウンドは、聴いているだけで心が浄化していくような美しさ。
フィールドレコーディングで録音したノイズや鳥の鳴き声などの環境音とヴォーカルの重なりは、彼女が関心を寄せている森林浴とも通じるようなヒーリング効果のあるマイナスイオンをたっぷりと含んだ癒しの響き。
どこか懐かしい安心感や得も言われぬ解放感を与えてくれる不思議な感覚のリスニング体験が味わえる、催眠術的な魅力を持った美しい作品です。

49. Jane Inc. 「Faster Than I Can Take」

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トロントベースのミュージシャン、Carlyn Bezicによるソロプロジェクト、Jane Inc.のセカンドアルバム。
元々はU.S. Girlsのバックバンドメンバーとしてツアーに帯同したり5人組のバンドに所属していたり、ギタリストとしての活動がメインだった彼女が2021年にソロでアーティスト活動を始めたのがこのJane Inc.で、デビュー作の「Number One」からわずか1年で届けられたのが今作です。
Princeからの影響を強く感じるファンキーロック〜エレクトロディスコな響きは、思わず体が動いてしまうようなダンサブルなテンション感。
Madonnaを思わす80s色全開のダンスポップもあったり、サウンドのキラキラした質感とヴォーカルのクールな表情のコントラストがとても面白い作品でしたね。
同じくU.S. Girlsのバックを務めていたDorothea Paasがコーラスとアレンジで参加していて、作品全体の奥行きと彩度のコントロールをしてるのも聴きどころです。

48. Jenny Hval 「Classic Objects」

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ノルウェー出身のアーティスト、Jenny Hvalの通算8作目となるアルバム。
大胆にエレクトロと接近した昨年リリースのLost Girls名義のアルバムから一転、生楽器のオーガニックな響きがゆったりと流れるこれまでで最もメロウでポップと言える仕上がり。
春の訪れを告げるような穏やかで心地良い空気感は、ある意味では彼女の作風としては異質な響きで、彼女自身のポップミュージックを作ろうという意識がこれまでの作品以上に顕著に現れたサウンドになっていましたね。
彼女の魅力の程良い苦味やえぐみがまろやかな旨味に変化したような。
その絶妙な塩梅のサウンドのコントロールを担っているのは、今作でエンジニアを務めているHeba Kadry。
昨年はJapanese BreakfastやTirzah、L’ Rainなどの作品にマスタリングエンジニアとして参加し、今年はJenny Hval以外にもAnimal CollectiveやBig Thiefなど数多くの作品に携わっている重要人物。
今作でもJennyの作り出す独創的な世界観を見事な技術で表現していましたね。

47. Vitesse X 「Us Ephemeral」

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George Clantonのレーベル、100% ElectronicaからリリースされたNYベースのアーティスト、Vitesse Xのデビューアルバム。
レーベルのカラーでもあるヴェイパーウェイヴ〜チルウェイヴの非現実的質感のエレクトロポップサウンドに、近年トレンドにもなっているUKガラージ、ドラムンベース、レイヴなどのダンスミュージックがかけ合わさったようなクールなグルーヴが堪能出来るサウンドで、彼女のビジュアルやイメージとも相まってとても近未来的かつY2K的なノスタルジーを感じさせる作品でもありますよね。
Grimesやyeuleにも通じる、空想世界と現実世界の狭間を行き来するような質感は、Kraftwerkの「Trans-Europa Express」に非常に強く影響を受けたものなんだそう。
PinkPantheressやyunè pinkuなどと共に今後さらにダンスミュージックシーンを盛り上げていってくれる存在としてとても期待してます。

46. Yumi Zouma 「PRESENT TENSE」

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ニュージーランドベースのバンド、Yumi Zoumaの通算4作目となるアルバム。
1作目は初夏に、2作目は秋に、3作目は春に。
Yumi Zoumaのアルバムはいつだってリリースしたその季節の空気や匂い、情景と見事に調和し聴く人に心地良いひと時と潤いを届けてくれる。
春が来た事への高揚感と憂鬱感が同時にパッケージングされた今作ももちろんそう。
甘さとほろ苦さのバランスが絶妙なビタースウィートなポップロックサウンドは、良い意味でほとんど何も変わらずに一貫して高いクオリティの仕上がりで、日常にすーっと溶け込んでその何気ない暮らしの光景を少しだけおしゃれに、大人っぽく、洗練されたものに変えてくれる力があるんですよね。
彼らはメンバーがそれぞれニュージーランド、ニューヨーク、ロンドンでバラバラに暮らしていて、普段はあまり直接顔を合わせず遠隔でのやり取りで曲作りをする事が多いという変わった在り方のバンドなんですよね。
そんな少々ドライな関係性ならではのサウンドも、自分が彼らに惹かれる要因の一つなのかもしれません。

45. yeule 「Glitch Princess」

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シンガポール出身で現在はロンドンベースで活動しているNat Ćmielによるプロジェクト、yeuleのセカンドアルバム。
サイバーゴシックな佇まいというか、どこか浮世離れした姿形も相まって未来から来たポップアイコンのようなイメージのyeule。
今作は壊れたコンピューターコードやエラーメッセージがテーマになっているそうで、彼女の持つミステリアスで無機質な雰囲気をエレクトロポップとして表現したカオスな世界観が展開していきます。
アルバムのキーとなっている「Too Dead Inside」ではDanny L Harleが、「Bites On My Neck」ではMura Masaがそれぞれプロデューサーとして参加していて、彼女の特異な世界を崩すことなく溶け込み、なおかつ彼ら自身のカラーも見える流石な仕上がりになってましたね。
アコースティックギターの音色がエモーショナルな「Dont Be So Hard on Your Own Beauty」など、幅広く様々なタイプの楽曲が収録された飽きのこない展開も見事です。

44. Animal Collective 「Time Skiffs」

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ボルチモアで結成された4人組バンド、Animal Collectiveの通算11作目となる新作アルバム。
彼らくらいのキャリアともなると、いわゆる全盛期と呼ばれる時代、過渡期と呼ばれる時代、低迷期なんて言われる時代など、バンドの浮き沈みを作品と共に評される事もよくありますが、それで言うと今作は再復活期なんて表現がしっくりくるのかもしれません。
2010年代のAnimal Collectiveはどこかモヤモヤした質感のサウンドが多かったというか、彼らの魅力のサイケデリックな音模様や多幸感漂うコーラスのレイヤーなど、代名詞と言える自分達の強みからあえて脱却したがっているようにも捉えられるような仕上がりという印象でした。
今作はその時期を経て、かつての自分達の良さと実験を重ねてきた事による新たな試みが高いレベルで組み合わさり完成した、彼らの集大成のような作品なのかなと思いましたね。
こういうアニコレを待ってた!という感じをまた味わえてなんだか嬉しかったです。

43. Caroline Loveglow 「Strawberry」

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George Clanton率いるレーベル、100% Electronicaの新人、Caroline Loveglowのデビューアルバム。
90s・00sのギターポップ〜シューゲイザーの甘酸っぱいノスタルジアを漂わせながら、どこか現実味の無い空想世界から聴こえてくるようなシンセポップサウンドがなんとも心地良い響き。
先程紹介した同レーベルのVitesse Xは、レーベルカラーでもあるヴェイパーウェイヴ〜チルウェイヴをダンスポップ方向から解釈した作品だったのに対して、今作はギターを主としたインディーポップ的なベクトルから噛み砕いたような作品というか。
自分はGeorge Clantonの2018年のアルバム「Slide」を思い起こしましたね。
なんか懐かしい響きなんだけど、それは自分の中にある思い出とリンクしているわけではなくて、漠然とした虚無的なノスタルジーというか、作り物の思い出みたいな、どこか切ない、エモいという表現がしっくりくるサウンドを今作からも感じました。

42. The Smile 「A Light for Attracting Attention」

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RadioheadのThom YorkeとJohnny Greenwood、Sons of KemetのTom Skinnerによるコラボバンド、The Smileのデビューアルバム。
2016年の「A Moon Shaped Pool」リリース以来主だった活動の無いRadioheadですが、Thom YorkeもJohnny Greenwoodもソロアルバムや他アーティストとのコラボ、映画のサントラの監修など精力的に音楽を作り続けていて、今作はそんな彼の溢れる意欲をカジュアルに形にした作品なのかなと思いました。
ジャズのフィールドで活動しているTom Skinnerがドラムで参加してることもあり、リズムの感覚や構築の仕方がとても自由度が高いというか、ある種遊びの延長のような良い意味で力の入りすぎていないサウンドという印象。
周知の中でもあるNigel Godrichなよるプロダクションも当然のように素晴らしく、アグレッシブでスリリングかつ甘美で流麗なアレンジは流石の一言。
生で体感するとまたより良さが分かるタイプのアルバムかもしれません。

41. Finn 「Everything Is Alright」

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マンチェスターベースのプロデューサー/DJ、Finnの新作アルバム。
近年静かに、でも確かに盛り上がりを見せてきているマンチェスターのミュージックシーン。
Space Afrika、Iceboy Violet、aya、Anzなど、一癖も二癖もある曲者達が続々と登場し、斬新で奇妙なダンスミュージックを生み出しているんだけど、Finnもその内の1人。
マンチェスターに昔から根付いているクラブカルチャーをベースに、ハウスやガラージ、レイヴなどの様々なタイプのUKダンスミュージックを巻き込みながら発展させていったような仕上がりの今作は、友人でありコラボレーターでもあるIndia Jordanのサウンドともリンクしてますよね。
ヴォーカルのサンプルをチョップしてはラフに貼り付け、強烈なビートに乗せてコラージュさせてしまう。
Robin Sを思わすグルーヴィーなディープハウス調のトラックもあったり、音の引き出しの数も中々多くて面白かったです。

40. TONE 「So I Can See You」

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ロンドンベースのミュージシャン、Tony Harewoodによるプロジェクト、TONEのデビューアルバム。
元々はFaraiというヒップホップ・エレクトロデュオとして既にデビューしてる彼が、TONE名義でリリースしたのが今作。
彼のルーツでもあるカリブ海周辺地域由来のレゲエやカリプソや、ジャズやR&B、ポストパンクなど様々な響きが落ち着いたトーンで混ざり合った、非常に折衷的なサウンドが特徴で、とりわけ目立つような派手さやトレンド感はまるでなく、ロンドンの気候のようにどんよりとグレーな質感で淡々と進んでいく感じ。
ポイントなのはCoby SeyやFran Lobo、そして昔Roxという名義で活動していたRoxanne Tataeiなど、Mica Levi周辺のアーティストが参加してる所ですよね。
CURLというコミュニティがあって、そこにはTirzahなんかもいるみたいなんですが、彼ら特有のモヤモヤとしたアンニュイな質感が今作からも感じられて。
地味ながらもとても洗練されたサウンドを堪能出来る良作です。

39. They Hate Change 「Finally, New」

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フロリダ州はタンパベイのデュオ、They Hate Changeのデビューアルバム。
近年再沸騰してるジャングルやフットワーク、ドラムンベースなどのUKダンスミュージックを、OutKastを手本にラフで自由に無理矢理結びつけたような新感覚のヒップホップサウンド。
タンパはフロリダ州の海岸地域にある街でマイアミとも近く、90年代頃からマイアミベースと呼ばれるBPM早めのクラブミュージックやサザンヒップホップが混在する独特の文化を持つ地域。
そんな環境で生まれ育った彼らならではの、ジャンルごちゃ混ぜの何でもありなサウンドがめちゃくちゃ痛快なんですよね。
今作はBon IverやMoses Sumneyも所属しているJagjaguwarからのリリースなんだけど、その前はJPEGMAFIAやChannel TresのいるGODMODEに所属してたんですよね。
個性強めのクセモノ達が集まるレーベルを渡り歩いている彼らの魅力が見事爆発した一枚です。

38. Omar S 「Can’t Change」

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一部でカルト的人気を誇るデトロイトベースのアーティスト、Omar Sの新作アルバム。
彼はFXHE Recordsという自主レーベルを経営しながらDJとして世界中でプレイしていたり、自主制作でビデオゲームを作ったりと多岐に渡る個性的な活動をしている風変わりな人なんだけど、そのサウンドもまた独特で。
地元デトロイトで昔から根付いているテクノをベースに、ディスコやブギー、ファンクなどのテイストを加えた、クセの強い中にもセンスを感じる洗練された響き。
クリスマスのリース、アメリカの黒人俳優の顔、ストリートファイターの春麗のポスターが雑然とコラージュされたような意味不明なジャケットも含めて、アンダーグラウンド臭漂うカオスな世界観がたまらなく好きですね。
不思議と何度も聴きたくなってしまう中毒的魅力を持った今年屈指の奇作の一枚です。

37. Jack J 「Opening the Door」

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バンクーバーベースのデュオ、Pender Street Steppersとしても活動してるJack Jのデビューアルバム。
バンクーバーのハウスシーンの象徴的レーベル、Mood Hutの看板として良作を生み出し続けてきたPender Street SteppersのJackがソロとしての活動を始めたのが2015年。
そこから7年の時を経て完成させたのが今作。
彩度の低いニュアンシーなローファイハウス・ダブに、Sadeを思わすクワイエット・ストーム〜AORな質感が加わった極上の響き…。
ほんのりヴェイパーウェイヴ的なノスタルジーを醸し出す感じとか、ゆったり流れるバレアリックでチルな時間がたまらなく好きですね。
暑くてダルい少し汗ばむような夏の夜に、涼しくした部屋の中でダラダラ聴くのとか最高にハマりそうな気がします。
リラックス出来る音楽を求めている人にぜひ聴いてもらいたい作品です。

36. iblss 「raja’s sun」

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ニューヨークベースのプロデューサー、iblssの新作アルバム。
彼はEarl SweatshirtやMedhane、AKAI SOLOなどの楽曲を手がけているプロデューサーで、近年のヒップホップの一つのトレンドでもあるジャズやソウル、シティポップなどを換骨奪胎したようなアブストラクトな質感のサウンドを得意としています。
客演ラッパーにはQuelle ChrisやNappy Nina、Maassaiなど、これまた個性的な若い才能が数多く参加していて、彼の生み出す奇妙なマーブル模様を描いたような摩訶不思議なトラックと見事に親和しています。
作品のマスタリングをしているのはLAベースのプロデューサーのZerohで、彼のソロ作の「Blqlyte」とも近い感覚の響きなのも面白かったですね。
Navy BlueやFly Anakin、Pink Siifu、Armand Hammerなど、iblssとも近い面白い才能が続々と芋づる式に登場してますが、知れば知るほど本当に奥の深い世界だなと思います。

35. Widowspeak 「The Jacket」

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ニューヨークはブルックリンベースのデュオ、Widowspeakの通算6作目となる新作アルバム。
今作は架空のバンドについての物語がコンセプトになっているようで、「名も無き都市のサテン地区で働く鎖編み職人」の目線で、古びた町で起こる様々な人間模様と複雑な心情が細かく描かれた、小説のような内容の作品になってます。
古くて暗いバーや日没後の寂れた町の景色、そしてアルバムジャケットやタイトルにもなっているバンド衣装の「ジャケット」など、聴いてるだけで映像が浮かんでくるような歌詞の描写が見事で、その映像のサウンドトラックとして今作が存在しているような感覚ですね。
ポカポカと暖かく時折吹く風が気持ち良い春の季節にピッタリなフォーク・ギターポップサウンドは、ヴォーカルもギターもドラムも、優しく穏やかでしっとりと沁み渡ります。
一方でどこか寂しげでアンニュイなトーンも同時に感じるというか、土臭い・埃っぽい60sカントリーロックのような質感もあって、そのあたりからも彼らが今作で描きたかった世界観が伝わってくるようでした。

34. Whatever The Weather 「Whatever The Weather」

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ロンドンベースのアーティスト、Loraine Jamesの変名プロジェクト、Whatever The Weatherのデビューアルバム。
楽曲のタイトルからも分かる通り、気温や気候をテーマにしたアンビエントプロジェクトで、その温度に合わせてサウンドの質感を変えるなど非常に繊細なタッチのサウンドなのが印象的。
昨年リリースの「Reflection」は作品としてかなりブラックミュージックからの影響を強く感じるものだったけど、今回のWhatever The Weatherとしての作品はTelefon Tel Avivが関与してる事もあってかなり静謐な響きで、明確に違うコンセプトで制作しているのが分かりますよね。
Loraine James名義で聴かせるアグレッシブなクラブミュージック/IDMなサウンドは鳴りを潜め、じっくりと耳を傾けたくなるミニマルでクールなトーンの響き。
彼女はここ数年の中でトップレベルで挑戦的で新しさを感じさせてくれるアーティストの1人だけど、まだまだ多くの引き出しがある事を期待、確信させてくれる素晴らしい作品でした。

33. Black Country, New Road 「Ants From Up There」

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ロンドンベースの7人組バンド、Black Country, New Roadのセカンドアルバム。
現時点で今年最も高い評価を集めている作品の一つですよね。
彼らはblack midiやSquidなどと並びサウスロンドン発の新世代UKポストパンクムーヴメントの代表的な存在のバンドのように扱われる事が多いですが、自分は今作を聴いて彼らへの印象がかなり大きく変わりました。
デビュー作ではアグレッシブで混沌としたサウンド面が評価されるような作品だったこともあって個人的にはイマイチピンと来なかったんですが、今作はメロディーや歌など曲として聴かせようという意識がかなり高まったなという印象で、それでいて本来の彼らの良さでもあるジャズ的な自由度の高いアンサンブル部分はしっかりとキープされていて、かなり正当にしっかりと進化してるなと感じたんですよね。
そんな矢先にフロントマンのIsaacが脱退するという非常に残念な展開となってしまったんですが、バンドとして新たな体制で活動を再開(しかもフジロックで!)するようなので、今後の動向にも注目したいなと思います。

32. Cate Le Bon 「Pompeii」

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イギリスはウェールズ出身のアーティスト、Cate Le Bonの通算6作目となる新作アルバム。
ベルリン期のDavid Bowie、Roxy Music、80年代の日本のアンダーグラウンドポップ、Kate Bush。
様々な種類の奇妙な形の木々で生い茂った深い森に迷い込んだかのような、一度踏み入れると中々抜け出せない魅力を持ったアヴァン・ポップサウンド。
驚きなのはヴォーカルはもちろんのこと、ギターにベース、ピアノ、シンセ、パーカッションまでほとんどの楽器を彼女自身が演奏しているという事。
Deerhunterのアルバムにプロデューサーとして参加してたり、シンガーとしてではなくミュージシャンとしての業界内評価も高い彼女ですが、ここまで才能溢れる人だったのかと本当に驚きましたね。
海外では「Mutant Pop」と称される事もある80年代の日本のアンダーグラウンドラップとのリンクを個人的にはかなり強く感じて、今作に引っかかった方はぜひLight in the Atticからリリースされているコンピレーションアルバムもチェックしてみて欲しいですね。
変で不思議で歪な響きが本当にクセになるアルバムです。

31. Wilma Vritra 「Grotto」

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Nilüfer YanyaやSudan Archivesなどを手がけるプロデューサーとしても活動しているWilma Archerと、Odd Futureの創設メンバーの1人としても知られるラッパー、Vritraとのコラボユニット、Wilma Vritraの2作目となる新作アルバム。
細野晴臣プロデュースのWORLD STANDARDの1985年リリースのアルバム「音楽列車」が今作のインスピレーション元になっているそうで、その世界観とも通じるボーダレスでアンビエントなサウンドがなんとも不思議で未体験な響き。
ストリングスや木管楽器による優雅なオーケストラや、民族楽器を使った異国情緒溢れるサウンドなど、普段あまりラップとは交わる事が無さそうな響きが使われているのもポイントですよね。
ちなみにWilma Archerは影響源にArthur RussellやRobert Wyatt、清水靖晃などを挙げていて、今作を聴いていると確かに彼らからのエッセンスを所々感じますね。
ヒップホップを普段あまり聴かないタイプの人にも何か引っかかるものがあるかも知れない異色作です。

30. redveil 「learn 2 swim」

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メリーランド州出身のラッパー、redveilの通算3作目となる新作アルバム。
今作は彼の18歳の誕生日である4/20にリリースされていて、つまりアルバム制作中は17歳だったというんだから驚きですよね。
さらには全編彼自身によるセルフプロデュース!
Earl Sweatshirtの影響を強く感じるメロウでソウルフルなサウンドの完成度に驚いていたら、17歳の青年が作ったと知ってさらに驚愕しましたね。
Tyler, the Creatorが以前お気に入りとして彼の作品を挙げていて、redveil自身も影響を受けたラッパーとしてKendrick LamarやJ. Cole、そしてTylerの事を挙げていました。
彼が少年から大人へと成長していく過程で悩み、もがき、様々な事を知っていく様子がリアルな言葉によって描かれていて、今の世代のアメリカ人の10代がどんな事を考えてるかとかって実はよく分からなかったので、それを感じれる作品としてもとても面白いなと思いましたね。
詳しい歌詞に関しては久世さんがブログでとても熱のこもった素晴らしい解析をしているのでぜひそちらを参照してもらいたいなと思います。
数年後にはよりビッグな存在になっている予感大です。

29. Fontaines D.C. 「Skinty Fia」

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アイルランドベースの4人組バンド、Fontaines D.C.の通算3作目となる新作アルバム。
2019年にデビューして早くも3作目のアルバムですからね。
今まさに脂が乗った状態の彼らが一貫して歌にしているのがアイルランド人としての誇りと、それによって受ける様々な苦悩や葛藤。
アイルランド人というだけで隣のイギリスからのけ者のような扱いを受けたり、そういう状況は昔から変わらず今も悪しき慣習として人々の生活に残り続けてるんだそう。
そんなフラストレーションを前作までのポストパンクリバイバル的路線から少し脱却した形で爆発させたのが今作ですね。
The SmithsやOasisなどのUKロックの美学を継承しながら、自身のルーツのアイリッシュサウンド由来の叙情的な響きを携えてよりワイルドでディープに独自の進化をしたという印象。
若手ならではの勢いと若手らしからぬ熟練の凄みが同時に押し寄せてくる感覚。
既に大物バンドのオーラすら漂わせる、進化と覚醒の一枚です。

28. 070 Shake 「You Can’t Kill Me」

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ニュージャージー州出身のSSW/ラッパー、070 Shakeのセカンドアルバム。
彼女はKanye Westのレーベル、G.O.O.D. Musicに所属していて、デビュー作に引き続き今作もKanyeの右腕的存在のMike Deanが共同プロデュース、マスタリング、ミックスで関わっています。
Kanye Westの「808s & Heartbreak」や、Kid Cudiの「Man On the Moon」からの影響を強く感じる、シンセポップとヒップホップの、歌とラップの、中間地点に位置するようなスタイルのサウンドが特徴で、彼女の低音の効いたオートチューン混じりのヴォーカルはまるで地を這う蛇のように不気味に絡みついてきます。
彼女は現在Kehlaniと交際中との噂ですが、それに関係すると思われる自身の苦悩や葛藤が主にテーマとして歌われています。
Christine and the Queensの参加もサウンド面だけでなく、同じようにクィアとしての悩みを抱える人としての人選という意味合いでも非常に絶妙なチョイスだなと思いましたね。
気付いたら何度も繰り返し聴いていた、自分にとってもまだ把握しきれていない奥深い魅力を秘めた一枚です。

27. MJ Lenderman 「Boat Songs」

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ノースカロライナ州はアッシュビルベースのバンド、Wednesdayのギタリストとしつも活動しているMJ Lendermanがソロとしてリリースした新作アルバム。
これまでソロとしてリリースしてきた作品はどれも主に自宅で録音したもので、今作は初めてプロのスタジオでレコーディングした作品なんだそう。
90年代のフォーク・ロックやカントリーの匂いを感じるというか、あの頃特有の無気力で退廃的な質感のざらついたギターサウンドを思い出させる響きがたまらなく好みでした。
こういうローファイなギターロックが2022年に新譜としてリリースされるのもなんか不思議な感覚ですよね。
歌詞の内容はテレビ番組やスポーツ中継、くだらない日常の風景など、本当に取り留めのない、大して意味のないようなものばかりなんだけど、その力の抜けた感じというか飾ってない感じが、聴いててなんだか楽というか心地良かったんですよね。
温かくてどこか切ない、くだらないけどなんか深い、心にじんわりと沁みてくるような魅力を持った作品です。

26. Amber Mark 「Three Dimensions Deep」

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ニューヨークベースのシンガー、Amber Markの待望のデビューアルバム。
彼女に関しては2017年リリースのEP「3:33am」でデビューして以来個人的にずっと追い続けていた存在で、ついにアルバムデビューを果たした今作は長年待った甲斐のある素晴らしい内容の作品でした。
SadeやBeyoncéを原料に程良くダンスホールのスパイスを効かせて仕上げた極上のポップ/R&Bサウンドは、ジャマイカ人の父親とドイツ人の母親を持つ彼女だからこその多様なカルチャーや音楽からの影響を感じる響きで、様々なグルーヴが混ざり合った独特のノリがある感じ。
アルバムタイトルにもあるように、自分自身を深く知る旅を「WITHOUT」と「WITHHELD」、「WITHIN」という3つの章に分けて表現していて、彼女がこの作品に辿り着くまでの経過も含めて描かれているアルバムになってます。
スモーキーで華やかなヴォーカルも変わらず魅力的!
彼女の持つオーガニックな空気感が見事に活かされ表現された傑作デビューアルバムです。

25. Vince Staples 「RAMONA PARK BROKE MY HEART」

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LAベースのラッパー、Vince Staplesの通算5作目となる新作アルバム。
彼はデビュー以来一貫して地元のロングビーチでの出来事や思い出をラップしてきているけど、そのほとんどが暗く悲しく残酷なもの。
だからこそ彼の言葉や音楽からは痛みや悲しみといった負の感情が滲み出ているように聴こえるし、今作からは諦めや幻滅にも近い疲れ切ったオーラすら感じます。
サウンド自体は西海岸らしいレイドバックな心地良さもある耳馴染みの良い響きなんだけど、彼の放つ絶望的に暗いオーラや重く冷たい言葉の連続に、聴いていると少々辛いというか気が滅入ってしまう部分も正直ありました。
でもそれが彼の伝えたい事だし、事実でもあるわけで、もの凄いリアルな作品だなと聴きながら感動したのもまた事実なんですよね。
救いを求めるように祈り続ける彼の姿勢と、ある種エンターテイメントが求められる世界においてそれを完全に無視して自分のリアルを作品を通して伝えようとする想いの強さは、今作を聴けば聴くほど自分の心の奥深くに突き刺さってくるように伝わってくるものがありました。

24. Toro y Moi 「MAHAL」

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サウスカロライナ州はベイエリアベースのChaz Bearによるプロジェクト、Toro y Moiの通算7作目、Dead Oceans移籍後初となる新作アルバム。
溢れる探究心でチルウェイヴやハウスなど様々な音楽を巡る旅を続けてきた彼が今回訪れたのは70sサイケロック〜ファンク・ソウル。
方向性的には4作目の「What for?」に近いですかね。
Neon IndianのAlanやUnknown Mortal OrchestraのRubanなどの個性的なミュージシャンがギターやシンセで参加していて、彼のアルバムの中でもゲストがかなり多い作品ではあるんだけど、基本的にはChazがほとんどの楽器を1人でこなしていますね。
自身のルーツのフィリピンカルチャー由来のゆったりほのぼのな空気感とレトロでレイドバックなサウンドが見事に調和していて、休日に家の中でダラダラ聴くのに最適!
彼は毎作品違うアプローチで様々なジャンルのサウンドに挑戦していますが、不思議と統一感があるんですよね。
その統一感こそが彼のセンスというか、元来持っている音楽に対するマニアックな感覚なんだと思います。

23. Pusha T 「It’s Almost Dry」

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バージニア州出身のラッパー、Pusha Tの通算4作目となる新作アルバム。
今作はKanye WestとPharrellという稀代のトラックメイカー2人が収録楽曲の半分ずつを手がけるという、Pusha Tにしか実現出来ないであろう超豪華なプロダクションで構成されています。
「Ye vs. Pharrell」「Pharrell vs. Ye」というそれぞれのプロデュース楽曲を前後半に分けたバージョンも存在していて、まさにビートメイクの頂上決戦のような作りなんですよね。
最近のKanye自身の楽曲は個人的にあまりピンとくるものは無かったんだけど、今作では昔のKanyeっぽいテイストのサウンドもあったりしてちょっと嬉しかったですね。
Clipse時代から付き合いの深いPharrellとは当然のように相性抜群で、Pusha Tという双方にとっての最高の表現者の作品ということもあってここ数年ではトップクラスでキレキレな仕事っぷりだなという印象でした。
Pushaのラップスキルは相変わらずモンスター級で、主にアメリカのドラッグカルチャーについて巧みで皮肉めいた言い回し・言葉選び・フロウでラップする様は、まるでBiggieが乗り移ったかのようなキレっぷり。
声やラップスタイル、スキルも含めて個人的に最も好きなラッパーの1人です。

22. Axel Boman 「Luz / Quest for fire」

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スウェーデンのストックホルムベースのプロデューサー、Axel Bomanの新作アルバム。
同郷のKornél Kovács、Petter Nordkvistと共に立ち上げたレーベル、Studio Barnhusの一員でもある彼が、異なるコンセプトで制作した2枚のアルバムを同時にリリースしたのが今作。
ストリーミングサービスではそれぞれが違う作品として配信されてますが、アナログ盤では3枚組の大ボリュームで一つのアルバムとしてコンパイルされています。
ボリュームの割にサラッと聴けてしまうのが今作の最も優れたポイントで、コズミックなハウス〜テクノサウンドは時にディスコティックに、時にラテンやアフロビートを思わす民族音楽的な質感、時にハードコアな高速BPMのレイヴサウンドにと、楽曲毎にテイストを変えて展開していき、聴いていても全く飽きのこない作りになってるんですよね。
様々なタイプのダンスミュージックを一つの作品で堪能する事が出来る、今年屈指の隠れた名作の一つです。

21. Revyn Lenae 「HYPNOS」

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シカゴ出身のシンガー、Ravyn Lenaeの待望のデビューアルバム。
4年前のEP「Crush」は全曲Steve Lacyプロデュースの肉感的なファンキーなサウンドが特徴でしたが、今作はそこからより歌にフォーカスしていて、声にも洗練された色気が加わった感じがしましたね。
Janet Jacksonにインスパイアされたソフトでシルキーなヴォーカルは高音でウィスパーな成分が多めで、歌い上げるというよりは楽曲を構成する一つの楽器として鳴っているような感覚。
その中で時折聴かせる低音の効いた歌声は本当に妖艶で、彼女にとってのお手本の1人でもあるBrandyを思わせる巧みなテクニックとハーモニーアレンジを聴かせてくれます。
前作EPから引き続きのSteve Lacyをはじめ、SangoやKAYTRANADA、Fousheéといった才能ある若手プロデューサー達と作り上げた艶かしく官能的なR&B〜エレクトロサウンドの心地良さたるや…。
今年のR&B作品でも指折りの秀作の一つです。

20. Angel Olsen 「Big Time」

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シカゴベースのSSW、Angel Olsenの通算6作目となる新作アルバム。
今作は自身のクィアネスを両親に告白し、パートナーと共に新たな人生をスタートさせようとした矢先に立て続けに父親と母親が亡くなるという衝撃的な人生の激動をまとめた作品になっています。
ペダルスティールの穏やかな音色がゆったりと流れるクラシカルなカントリーミュージック、溢れる感情をあえて抑えるように優しく歌うヴォーカル。
悲しみにまみれた暗いトーンの作品になってもおかしくないと思いますが、聴いてて心地良さすら感じるハートウォームなサウンドなのがかえって心にグッときますよね。
彼女を支えているパートナーの存在も大きいんだと思います。
亡くなった母親が好きだったカントリーミュージックを歌う事で、自分の気持ちと向き合い、振り返り、整理しようとしているのかもしれません。
彼女の情感豊かな歌の表現力に改めて感動させてもらった素晴らしい作品です。

19. Ethel Cain 「Preacher’s Daughter」

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フロリダ州出身のSSW、Ethel Cainのデビューアルバム。
両親共に教会に勤めていた熱心なキリスト教徒の家系で育った彼女ですが、10代の頃にゲイである事を理由に追放されその後トランスジェンダーである事をカミングアウトし、アーティストとして音楽制作を始めたというかなり壮絶な過去を持っていて、家を出るまではキリスト教以外の音楽を聴く事も許されず他にもほとんどの自由を奪われ育ったんだそう。
彼女にとって音楽に没頭する事がセラピーであり救いだったんですよね。
Lana Del ReyやFlorence Welchのようなダークでゴシックなムードのアメリカーナロックサウンド、アメリカという国の闇や自身の生い立ちを淡々と、時に狂気的に歌にするヴォーカル。
彼女の生み出す世界観はとてもヘビーで圧倒的ですが、時折Taylor Swiftのように親しみやすいポップな部分も垣間見せていて、決して難解過ぎないところが絶妙なんですよね。
自分はあまり得意じゃないタイプの作品かなと思って聴いたらビックリする程心を掴まれた、自分にとって意外な出会いとなった一枚でした。

18. Rosalía 「MOTOMAMI」

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スペイン出身のアーティスト、Rosalíaの通算3作目となる新作アルバム。
伝統的なフラメンコと現行のエレクトロがミックスした全く新しいスパニッシュポップを提示した前作で世界に衝撃を与えた彼女でしたが、その後世界的に流行し出したレゲトンをはじめとするラテン音楽ブームに見事に合流し、数々のアーティストとのコラボを経験しそこで得たエネルギーを全てぶつけたのが今作ですね。
最初に聴いた時は彼女の弾けっぷりというか、あまりの自由さに頭が追いつかないなと思ったんだけど、何度か聴いているうちにその無秩序っぷりがクセになってくるというか、チキンテリヤキとかヘンタイとか意味不明な歌詞も含めて色々とどうでも良くなってくるみたいな感覚でハマってしまいましたね。
PharrellやJames Blakeなどと共同で書いてる楽曲もあるものの基本的には彼女自身が制作の中心にいて、ラテンポップスターとしてだけではなくソングライターとしてもとても優れた才能の持ち主なんだなと思わされました。
レゲトンやドミニカの音楽(バチャータ)、フラメンコに美しいバラードまで、無国籍の何でもありなRosalíaワールドを堪能出来る、刺激と驚きに溢れた怪作です。

17. Aldous Harding 「Warm Chris」

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ニュージーランド出身で現在はウェールズをベースに活動しているSSW、Aldous Hardingの通算4作目となる新作アルバム。
ここ数年の女性SSWの活躍っぷりは本当に凄いですが、彼女は他の誰とも違う個性を放っていて自分も大好きなアーティストです。
最も分かりやすい特徴は曲毎に声色や表情を変えるヴォーカルですよね。
ハスキーにしゃがれた声で歌う曲もあれば、少女のような可憐な声で歌う曲もあり、どれが本当の彼女のヴォーカルなのか分からなくなるほど多様な歌い方と声を持っていて、まるで女優のように声を使い作品内のキャラクターになりきり演じ分けています。
程良い奇抜さと遊び心のある歌詞も非常に個性的で面白く、彼女の才能が歌い手としてだけではない事が見事に分かる内容になってますね。
ピアノを基調としたオーセンティックなフォーク・ポップサウンドは時間がゆったりと流れていくような、心がほっこりと温まるような至福の心地良さ…。
日々の疲れを癒してくれるオアシスのような作品ですね。

16. Horsegirl 「Versions of Modern Performance」

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シカゴベースの3人組バンド、Horsegirlのデビューアルバム。
まだ高校生のメンバーも含む女性3人組のバンドという事もあり正直期待半分心配半分みたいな感じで楽しみにしていた今作でしたが、新人バンドのデビュー作らしさに溢れた素晴らしい作品でしたね。
彼女達はSonic Youthからの影響を公言しているんですが、まさに90sのオルタナロック由来のノイズ混じりのかき鳴らされたギターとドライでクールなヴォーカル、そして10代ならではの粗削りな質感や青臭さが残るサウンドなんですよね。
自分がロックバンドに求めるものって、演奏力の高さとか楽曲の完成度とか歌唱力とかそういうもの以上に、勢いとか危うさとか脆さとか、狙って表現しようの無い何かを伝える力なのかもしれないなとこの作品を聴いて感じました。
これからさらに成長した姿を見るのが楽しみな気持ちもありつつずっとこのままでいて欲しいという気持ちもあるような、未完成な部分も含めてとても愛おしいアルバムでした。

15. Wet Leg 「Wet Leg」

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イギリスのワイト島出身のデュオバンド、Wet Legのデビューアルバム。
去年のシングルデビュー以来各メディアで猛烈にプッシュされていて、アルバムデビュー前の新人にそこまで?とちょっと辟易してたんだけど、今作を聴いて完全に納得でしたね。
ひたすらキャッチーで耳に残るポップ・ロックサウンド、ふざけたユーモアとウィットに富んだ歌詞。テキトーに、でも真面目にバカやってる感じがとにかく痛快で最高!
ちょっとエグめの下ネタやくだらない内容の歌詞を、めちゃくちゃクールに淡々と歌うスタイルがとてもユニークですよね。
プロデュースはFountains D.C.やblack midi、Squidなどを手がけているDan Careyで、彼女達の素材を見極めた上で他のバンドの複雑なサウンドとは違いシンプルさとキャッチーさを突き詰めた仕上がりにしているのがさすがだなと思いましたね。
そりゃ人気出るわけだ、とあらゆる面で思わされた素晴らしいデビュー作です。

14. Mitski 「Laurel Hell」

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日本をルーツにもつSSW、Mitskiの通算6作目となる新作アルバム。
キャリア史上最もポップな作風と言える今作。
しかしその内容はサウンドとは裏腹に、彼女が2年間の活動休止期間を通じて感じた様々な苦悩が描かれたヘビーなものでした。
前作の成功で手にした人気や名声、それと同時に殺した1人の女性としての私生活や感情。
80sシンセポップ由来のアップビートなサウンドと、静かに激しく燃える歌声と生々しい言葉で二律背反を音楽として鳴らしたような仕上がり。
ポップな響きにダークな歌詞という相反する2つの要素が交差した複雑な作りは、人気者として世間から注目されているMitskiと、それを心から受け入れる事が出来ずもがき苦しむMitski Miyawakiとしての葛藤を表しているように感じましたね。
この人の歌が持つ独特のもろさというか危うさみたいな、スリリングな質感はやっぱり特別な魅力だなぁと改めて感じました。
何よりまた音楽を作ってくれて感謝の気持ちでいっぱいです。

13. Denzel Curry 「Melt My Eyez See Your Future」

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フロリダ州出身のラッパー、Denzel Curryの通算5作目となる新作アルバム。
今作はまず着想がとてもユニークで、彼の好きなもの、影響を受けたものを制作スタッフと共有し、そこからイメージを膨らまして次第に形作っていくというスタイルだったそうで、黒澤明の侍映画や日本のアニメ、Soulquarians、格闘技、Kanye Westなど、そのインスピレーション源は本当に多種多様。
Robert GlasperやThundercat、Karriem Rigginsといったジャズ・ソウル畑のミュージシャンを多数ゲストに迎えたメロウなサウンドが今作のキーとなるトーンで、これまで割とハードだった彼への印象がガラッと変わりましたね。
その印象は歌詞の面も同じくそうで、今作はこれまで以上に彼の内面や感情を掘り下げていて、過去のトラウマや後悔、宗教観やメンタル面についてなど、非常に内省的な内容になっています。
多様なジャンルが混在するサウンドと、自分自身と向き合い、反省し、見つめ直すような歌詞で、本当の自分をさらけ出し表現する事が出来た、彼にとってのセラピーのような作品です。

12. Charlotte Adigéry & Bolis Pupul 「Tropical Dancer」

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ベルギーベースのアーティスト、Charlotte AdigéryとBolis Pupulによるコラボユニットのデビューアルバム。
2manydjsとしても活動している同郷のSoulwaxが主宰するレーベル、DEEWEEからリリースされた今作。
これまで全く存在を知らなかった事もあり、今年出会った中でもトップクラスで衝撃を受けた作品でしたね。
Dirty ProjectorsとSAULTのコラボをMissy ElliottとTimbalandがプロデュースしたみたいな、気味悪さとクールさが同居したエレクトロ・ファンクなサウンドがとにかくドープでカッコいいんですよね。
人の笑い声のリフレインで構成されたビートの楽曲なんかもあり、その他の曲も展開や使われる音がどれも予想外で聴いてて本当に面白いです。
Princeからの影響もかなりあるでしょうね。
歌詞のテーマは人種や性差別についてやベルギーの歴史に関する問題など、意外にもメッセージ色の強いヘビーな内容。
色々な面で強烈なインパクトを残し一度ハマると中々抜け出せない、非常に中毒性の高い個性的な作品です。

11. Earl Sweatshirt 「SICK!」

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シカゴ出身のラッパー、Earl Sweatshirtの通算4作目となる新作アルバム。
2018年リリースの前作「Some Rap Songs」はその後のヒップホップシーンの流れを変え、いわゆるアブストラクトヒップホップが大きく拡がるきっかけとなった作品でした。
それからパンデミックの期間となり父親にもなった彼の最新作は、Odd Futureの中でもお調子者の悪ガキだった彼の人としての成長と進化が記録されたアルバムになってます。
これまでほとんどセルフプロデュースだった彼がBlack Noi$eやThe Alchemistを招いた事で良い意味で開けたというか、ドラムレスなビートが多かったこれまでに比べるとパキパキとした印象のサウンドに変化してましたね。
とは言え彼の真骨頂とも言えるねちっこいドロドロした質感のラップと斬新なトラックとの絡みはこれまでと大きくは変わっておらず、わずか24分の短い尺も含めて「Some Rap Songs」と同じベクトルで仕上げられた作品であると言えるのかなと思います。
Armand HammerやZelooperz、Na-Kel Smithなどの若手の仲間達も参加していて、やはりEarlがこのシーンの中心にいるんだなという事が示されたアルバムになってるような気がしましたね。

10. Tomberlin 「i don’t know who needs to hear this…」

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フロリダ州出身で現在はニューヨークベースのSSW、Sarah Bethによるソロプロジェクト、Tomberlinのセカンドアルバム。
Alex Gプロデュースだった前作EPを経て今作はAdrianne LenkerやIndigo Sparkeなどを手がけるPhilip Weinrobeをプロデューサーに迎えていて、シンプルでミニマルで静謐で、それでいて単純じゃない複雑さと静かに力強く燃えるパッションが滲み出ている最新鋭のフォーク・ロックサウンドを聴かせてくれています。
物凄い技術と豊富な画材で敢えてモノクロの絵を描いてるような凄さを感じるというか、無理に色を使わず最低限のデッサンだけで人を惹きつける魅力があるような感じというか。
こういうシンプルでアコースティックなサウンドに新しさや驚き、可能性を感じさせてくれるのって本当に凄いことだと思うんですよね。
一つ一つの音の配置とか組み合わせ方が普通じゃない。耳を凝らして聴けば聴く程普通じゃない。
聴いてるだけで体中のあらゆる毒素が抜けていきそうな、マイナスイオン成分で満たされた癒しの一枚です。

9. Beach House 「Once Twice Melody」

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ボルチモアベースのデュオ、Beach Houseの通算8作目となる新作アルバム。
今作は彼らにとって初のセルフプロデュース作で、4つの異なるチャプターを段階毎に発表していくというこれまでに無かったスタイルでリリースされた2枚組アルバムです。
2010年代におけるドリームポップの先駆者として走り続けてきた彼らのこれまでのキャリアや変遷を一つの作品にまとめた集大成的な仕上がりというか、まるで新曲だけで構成したベスト盤のような、Beach Houseの良さがこれでもかと詰まった作品だなと思いましたね。
長いキャリアを重ねてきた彼らですがまだまだ挑戦的な姿勢は健在で、今作では初めて生のストリングスのアンサンブルが使われていて、彼らの生み出す桃源郷のような神秘的な世界観をより崇高で煌びやかなものに彩っています。
まだまだ不安定で不穏な世の中だけど、彼らの世界に逃げ込み浸っている間は気持ちが落ち着き安心出来る気がします。
そんな大げさな事を言いたくなるくらい彼らの音楽は自分にとって本当に特別な存在で、それを再認識させてくれた今作も自分にとって大切な作品になりそうです。

8. Kendrick Lamar 「Mr. Morale & The Big Steppers」

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コンプトン出身のラッパー、Kendrick Lamarの通算5作目となる新作アルバム。
彼のキャリアを長い間サポートしてきたレーベル、TDEからの最後の作品としてリリースされた2枚組の今作は、これまでで最も商業性を無視してとことん己と向き合い自分自身を投影した内省的な作品という印象で、アーティストとして感じるプレッシャーや過去に受けた精神的・肉体的な虐待の告白など、彼がこれまで抱えてきた葛藤や苦悩を吐露し、弱い部分を曝け出すような非常にパーソナルな仕上がりになっています。
サウンド面で印象的なのがDuval Timothyの起用で、ピアノメインのアンビエントな質感のトラックは作品の持つクラシカルで落ち着いたトーンのキーとなってますよね。
ラッパーとして初めてピューリッツァー賞を受賞し、2人の子を持つ父親となり、アーティストとしても人としても神格化されてきた彼が今作を通じて、自分は救済者なんかじゃないし皆んなを喜ばすことは出来ないと正直に伝えた事は、逆にとても強さを感じたし彼も1人の人間なんだなと当たり前の事を再認識させられた感じがしました。
そんな自分の内なる想いを声のトーンや抑揚を巧みに操り聞き手に深く届ける表現者としての覚悟と迫力はやはり圧倒的で、彼の想いとは裏腹にアーティストとして益々尊敬されることになるであろう素晴らしい作品だったなと思います。

7. Charli XCX 「CRASH」

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イギリスはケンブリッジ出身のSSW、Charli XCXの通算5作目となる新作アルバム。
前作の「how i’m feeling now」はパンデミックによるロックダウン期間中に自宅でレコーディングされた作品でしたが、今作はそこから一転して彼女のエネルギーが外に向けて解放されたような弾けっぷりが印象的な作品になってます。
A. G. CookやOneohtrix Point Never、Ariel Rechtshaidなどと共に80sユーロビートや90sガラージハウス、ニュージャックスウィングなどから受けたインスピレーションを過激に、グラマラスに昇華させた完全無欠のポップミュージック。
Robin S.「Show Me Love」やSeptember「Cry For You」などの引用・オマージュで歴代ポップミュージックへのプロップスを形にし、ポップ=売れ線的な固定概念を敢えて逆手に取ったような、気持ち良い程のセルアウトなポップスをこれでもかとぶつけてくる感じが本当に痛快!
そして今作は友人でもあったSOPHIEへ捧げられた作品でもあるそうで、同じ時代にポップの未来を共に切り拓いてきたSOPHIEへの想いが作品全体に込められています。
MVやTV番組などでのパフォーマンスもこれまで以上に激しく大胆になっていて、Charliのポップスターとしてのポテンシャルが見事に開花した作品なのかなとも思いました。

6. Nilüfer Yanya 「PAINLESS」

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ロンドンベースのSSW、Nilüfer Yanyaのセカンドアルバム。
2枚目のジンクスという言葉がありますが、彼女の才能の前ではそんなものは全く意味の無い概念なんだなというのが分かります。
RadioheadやBloc Party、King KruleといったUKロックシーンの異端児達の血を受け継ぎながら、柔軟で新しい感覚と類稀なソングライティングのセンス、そして圧倒的な個性を放つ声といった様々な武器を磨き上げて完成させた今作は、前作から何もかもがスケールアップした完成度となっています。
先程紹介したWilma VritraのWilma ArcherやBig Thiefなどを手がけているAndrew Sarlo、さらにBullionといった手練れ達と共に制作した今作のサウンドは良い意味で統一感が無いというか、ジャンルレスに自由に鳴らしてる感じで好きなんですよね。曲によってロックにもヒップホップにもエレクトロにもジャズにも聴こえる。
90s・00sのリバイバルがここ数年流行してるけど、あまり聴いたことのないタイプのアプローチで新鮮でしたね。
前作より深く、より繊細で、よりパーソナルな仕上がりとなった飛躍の一枚です。

5. 宇多田ヒカル 「BADモード」

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ニューヨーク出身で現在ロンドンベースのSSW、宇多田ヒカルの通算8作目となる新作アルバム。
この作品に関してはリリース直後に全曲レビューと題して色々と感想を書いたのでそちらをぜひ読んでみて頂きたいのですが、普段海外の音楽を聴く事が多い自分が日本生まれの作品にここまでハマったのは本当に久しぶりだったので、そういう意味でも自分にとって特別な作品ですね。
A.G. CookやFloating Pointsの参加も含めて、ここ数年ロンドンに移住して音楽制作を続けてきた事の意味や成果が見事に表れた作品となっていて、しかもそれがちゃんと宇多田ヒカルとしての個性やカラーをキープした状態で新しく進化しているんだから凄いですよね。
キャリア20年以上のベテランがここに来てこれ程の傑作を生み出す事って本当に難しい事だと思うし、それを実現出来る彼女の無尽蔵のクリエイティヴィティは心底驚かされますよね。
そしてその原動力となっている息子さんの存在の大きさもこの作品から伝わってきます。
J-POPの歌姫という肩書きは彼女には相応しくないし、このアルバムを聴けば彼女が完全に世界の第一線で戦っている事が分かると思います。

4. Sam Gendel & Antonia Cytrynowicz 「LIVE A LITTLE」

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LAベースのプロデューサー、Sam Gendelと11歳の少女、Antonia Cytrynowiczによるコラボアルバム。
現在の音楽シーンにおいて常に異色の存在であり続けるサックス奏者のSam Gendelの新作が11歳の少女とのコラボアルバムだと知った時はよく意味が分からなかったんだけど、実際聴いてみてより分からなくなったというか、完全に沼にハマってしまったような感覚でしたね。
夏の終わりの午後に自宅で行っていたセッションの中で、Sam Gendelの演奏にAntoniaが即興で歌声を乗せてほぼ1発録りで録音したという俄には信じ難いレコーディングスタイルで完成したという今作。
一般人の少女の歌声をこれほどまでにマジカルな響きにしてしまうSam Gendelの手腕が見事なのか、はたまたこんな洗練されたジャジーなアヴァンポップを自分の楽曲のように歌いこなすAntoniaの才能が凄いのか、何度聴いても聴き入ってしまう魅惑的な作品ですね。
個人的にはAlice ColtraneやTirzahあたりと音像が近い印象を受けましたね。
Sam Gendelの作品としては珍しい歌モノのアルバムという意味でもとても面白い、凄まじい中毒性を持った傑作アルバムです。

3. billy woods 「Aethiopes」

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Armand Hammerとしても活動しているNYベースのラッパー、billy woodsの新作アルバム。
これはここ数年の中でもトップレベルで衝撃的だった作品かもしれません。
同郷のPreservationをプロデューサーに迎えたアングラ臭ムンムンの怪しげでアブストラクトなトラックはどれもこれまで聴いた事ない斬新な響きで、よくこれが音楽として成立してるなと思うレベルの異質なサウンドの連続。
彼はこれまでKenny SegalやMoor Motherといったクセモノたちとコラボを重ねてきて、それらの作品でも非常に奇妙なサウンドを聴かせていましたが、それにしても今作のサウンドの異質っぷりは異常ですね。
古びた骨董品を扱うボロボロの店で恐る恐る掘り出し物を探している感覚というか、得体の知れない何かの気配を感じた時のゾクゾク感というか。
ここまで聴いた事のないサウンドに出会ったのは久々でしたね。
彼のラップは趣味の読書で得た知識や本からの引用など、意味を理解するのがかなり困難な内容のものが多く、そういう意味でも未体験な響きでしたね。
味わった事のない没入感を堪能出来る衝撃的なアルバムです。

2. Big Thief 「Dragon New Warm Mountain I Believe in You」

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ニューヨークベースの4人組バンド、Big Thiefの通算5作目となる新作アルバム。
2016年のアルバムデビュー以来、メンバーのソロ活動を含めてほぼ毎年のように作品を発表するという驚異的な創作ペースで活動している彼らの最新作は、20曲を収録した2枚組の大作になっていて、4つのスタジオで4人のエンジニアと共に録音された楽曲はそれぞれが異なるカラーを持った仕上がりになっています。
生楽器主体のシンプルなバンド演奏のサウンドの可能性を極限まで追求したような、実験的な挑戦心と音作りへの溢れ出る意欲をこれでもかと詰め込んだ圧巻の完成度!
バンドのアンサンブルのみでどうやってここまで奥行きのある空間的なサウンドを表現出来るんだろう?と思う一方で、同じ部屋のすぐ側で彼らの息づかいまで感じながら演奏を聴いているような親近感も同時に感じるというか。
こんなにも温かく側に寄り添ってくれる響きなのに、同時に神秘的で手の届かない崇高なオーラすら感じるような何とも不思議なサウンドですよね。
統一感という意味では過去の作品の方が上なんだけど、まるで万華鏡のように違う表情と違う美しさを見せてくれる今作もまた違った良さが味わえる素晴らしい作品だなと思います。
今1番生で体感してみたいバンドです。

1. The Weeknd 「Dawn FM」

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カナダはトロント出身のアーティスト、The Weekndの通算5作目となる新作アルバム。
前作「After Hours」の記録的ヒット、スーパーボウルのハーフタイムショーも務め今や世界的なスターとなったThe Weekndの最新作は、前作のダークでホラーな世界観を継承しつつ、架空のFMラジオ局の番組というコンセプトを冠すことで彼の脳内の世界をより明確に表現した傑作アルバムとなっています。
その実現に大きな役割を果たしてるのがOneohtrix Point NeverことDaniel Lopatinですよね。
ヴェイパーウェイヴの祖としても知られる彼の参加によって、日本でも大きな話題となった亜蘭知子の楽曲のサンプリングを含め80sのダンスポップ〜シティポップのテイストが加わり、レトロな質感の近未来感が作品にも表れてます。
圧倒的に精巧に作られた虚構のような、ダークサイドに堕ちたポップミュージックが妖しく響くディストピアのような。
ラジオ番組の語り手としてJim Carreyを起用していたり、アートワークやビデオも含めて今作には制作当初から明確にコンセプトがあった事が分かります。
彼のようなメガヒットアーティストがキャリアの頂点でこのようなアーティスト志向の強い作品を作るのはとてもリスキーだし勇気がいる事だと思いますが、自分の表現したいものをその実現に相応しい仲間と共に作りたいという熱意が作品から伝わってきて、これは歴史的な傑作になるだろうなと思ったんですよね。
あらゆる面で圧倒的な完成度を誇る今年を代表する傑作アルバムです。


というわけでいかがでしたでしょうか?
はじめに触れたように今年はスタートから本当に充実したリリースが連発してましたよね。
毎週なんらかのお目当ての作品があって、それを聴くのが1週間のご褒美のような感覚で、それが毎週続くのでご褒美貰いすぎて食べきれないみたいな贅沢な悩みもあったりして。
自分はTwitterで好きな作品の最初の印象や1番熱が高まった瞬間の感想をツイートするようにしてるんですが、それは今後も続けたいなと思ってます。
何度か聴いてその作品を自分なりに理解して、ブログなどで文章にするのも楽しいし、初期衝動を140字以内で記録に残すのも楽しくて好きなんですよね。
それを音楽が好きな人同士で共有するのも楽しいし、ライブやフェスなどの会場で実際に会って共有出来たらさらに楽しいでしょうね。
日本でも海外アクトのライブが徐々に戻ってきてる事が本当に嬉しいし、自分もこれまで生で味わえてなかった分気になるライブにはなるべく参加したいなと思ってます。
これを読んでくれた方にもどこかの会場でお会い出来るのかも?ですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました!







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