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日本酒と料理と芸術を愉しむ、秋の一夜

中秋の名月に合わせ、十五夜を目前に控えた2022年9月9日(金)、八芳園と株式会社日本酒にしようの共催による、一夜限りの新感覚日本酒イベント『月夜の晩餐-sake×music×art-』を開催いたしました。

日本酒と芸術を愉しむ秋の一夜のレポートをお届けいたします。

一夜限りの新感覚日本酒イベント
日本酒にしよう×八芳園
『月夜の晩餐-sake×music×art-』

今回のイベントでは、日本酒にしようが厳選した4つの酒蔵との共同開発のしぼりたて日本酒を含む日本酒と、日本酒に合わせた日本各地から厳選された食材を元に、八芳園シェフが手掛けた一夜限りのペアリング料理が提供されました。

さらに、酒蔵の歴史やストーリーを聞きながら、日本酒からインスピレーションを受けて奏でる即興ピアノ演奏やインクアート、書道など3名のアーティストによるライブパフォーマンスを株式会社日本酒にしようと共同プロデュースいたしました。

『月夜の晩餐-sake×music×art-』が開催された、八芳園1階「エール」は、八芳園の数ある会場の中で唯一ダイレクトに庭園へと繋がる会場。
会場内の"月"をモチーフにした大きなオブジェは、京都の金箔伝統工芸士「裕人 礫翔(ひろと らくしょう)」氏による作品です。
日本庭園を目の前に望む開放感と、自然との調和、庭園に浮かぶ月、会場を彩る月を愉しみながら、美しい"お月見"をお楽しみいただきました。

厳選した4つの酒蔵が手掛ける
「日本酒にしよう×各酒蔵のオリジナル日本酒」と
ペアリング料理

ご提供したのは、日本酒にしようが4つの酒蔵と共同で開発したオリジナルのしぼりたて日本酒を含む日本酒たちと、八芳園シェフが日本酒のために開発したペアリング料理。
蔵元たちの心意気や想い、地域の風土・気候を生かした五感を刺激する味わいと、それに合わせたお料理のペアリングをお愉しみいただきました。

イベントで語られた蔵元さんの想い、アーティストの方々のパフォーマンスと合わせて、日本酒とお料理をご紹介いたします。

人気酒造〈福島県二本松市〉

人気酒造 代表取締役社長 遊佐 勇人 氏

人気酒造は、年間を通して酒造りを行う四季醸造。
「スパークリング日本酒」や「ワイングラスで飲んで美味しい日本酒」などの新しい価値観を持った酒造りを、伝統的な製法と道具にこだわって行っています。
「吟醸酒しか造らない」「手作りでしか造らない」にこだわり、樹齢100 年前後の杉材の「木桶」で醸すなど、古きを大切にしつつもモダンな味わいを目指しています。

地元の素材にこだわり「東北ならではの酒」を造る人気酒造。
イベントでは人気酒造 遊佐 勇人氏に「木桶」を使用した酒造りのこだわりについて語っていただきました。

ご用意いただいたのは、スパークリング日本酒『恋夏 - KOINATSU - 』
アルコール度数は7%、酸味に特徴を持たせた切れの良い味わいです。
イベントでは開催日の前の週に絞ったばかりのものをご用意いただきました。

前菜 鰹のカルパッチョ ハーブのグラニテ

『恋夏 - KOINATSU - 』に合わせてご用意したのは、イタリア料理人の古山 哲とパティシエの澤村 圭介が手がけた「鰹のカルパッチョ ハーブのグラニテ」

全く別のジャンルの料理人である二人が意見を交わしながら生み出した、卓上で表現されるアート「sake × Italian × dessert」の驚きをもたらす、新しいペアリングの提案です。

セロリのピューレの上に鰹のカルパッチョを乗せ、福島県産のトマト「ぷちぷよ」とシャインマスカットを添え、液体窒素で固めたハーブのグラニテをかけました。

酸味、香り、温度、色合いのバランスなど五感を刺激する一品。
口の中いっぱいに広がる爽やかな風味とひんやりとした味わいが『恋夏 - KOINATSU - 』の美味しさを引き立てます。

アーティスト・プロデューサーとして活躍する
nao氏によるピアノの即興演奏

nao氏

作詞、作曲、編曲、プロデュースを手がける、元I WiSHのnao氏。
今回のイベントでは、料理や日本酒の味わい、そしてストーリーからのインスピレーションで演奏する、ピアノの即興生演奏を披露いただきました。

即興演奏をする nao氏

会場では『恋夏 - KOINATSU - 』をイメージした美しいピアノの旋律を聴きながら、日本酒と前菜をお愉しみいただきました。

「『恋夏 - KOINATSU - 』は、アルコール度数7%というやわらかくライトだけれども、しっかりと酸味がある日本酒なので、爽やかな曲をイメージしました」
と即興演奏について語るnao氏。

人気酒造の遊佐氏は、
「うっとりしてしまいました。私の日本酒に合わせていただいていいのだろうかと思うような、恋愛ドラマのワンシーンのような、ほんとうにうっとりとする演奏でした」
とコメントしました。

藤井酒造〈広島県竹原市〉

藤井酒造 代表取締役社長 藤井 善文 氏

藤井酒造は、1863年(文久3年)に創業し、良質の仕込み水に恵まれた広島県竹原市にて、純米酒のみを醸す全量純米蔵。
酵母なども無添加の伝統的生酛造りにこだわり、微生物との対話を大切にした酒造りを行っています。
食事とともに楽しむ「食中酒」として、お酒と食事を各々単体で楽しむよりも、相乗効果でより美味しくなるような酒を目指していらっしゃいます。

メイン銘柄の「龍勢」は、明治40年の「第1回 全国清酒品評会」にて、最高位である優等賞第一位を受賞し、「IWC2007」SAKE部門の純米吟醸酒・純米大吟醸酒の部では、「龍勢 純米大吟醸黒ラベル」が最高賞であるトロフィーを受賞。

伝統的で本質的な酒造りを続ける藤井酒造 藤井 善文氏には、同じものができることはない「生酛造り」の面白さについて語っていただきました。

今回ご用意いただいた日本酒は『憧憬の路』。
『憧憬の路』というのは、藤井酒造のある広島県竹原市の祭りの名称。
竹の中に蝋燭を灯して町中を飾る幻想的な風景が広がるお祭りで、そこから名前をつけたそうです。

『憧憬の路』は、広島県産のお米「八反錦」を使用して生熟成を行なったお酒。
独特の生の熟成した香りと、とても辛いお酒でありながらほのかな甘さを感じ、酸味が訪れると角が取れていくような奥ゆかしく余韻の長い味わいです。

広島県産和牛のソテー 観音葱とレモン香る味噌のソース

『憧憬の路』とのペアリング料理は、フランス料理人の山本 和宏と日本料理人の香山 浩一が手がける「広島県産和牛のソテー 観音葱とレモン香る味噌のソース」

とろけるような柔らかい肉と、優しい味噌の風味にフレッシュなレモンが香るメイン料理です。
レモンをコンフィチュールにすることによりフレッシュな香りが生かされ、濃厚な味噌のソースは肉の風味をさらに美味しく仕上げるアクセントに。

広島県産の観音葱とレモン、日本酒に12時間漬け込んだ和牛のバランスの良さを愉しみながら、日本の文化、材料、地産地消の相性の良さを感じていただけるような一皿です。

再び登場したnao氏には『憧憬の路』のイメージの即興演奏をしていただきました。
「生酛造にこだわりながら、新しいことも試されている。
そういった部分をピアノの音階に表してみました」
と即興演奏のイメージを語っていただきました。

永井酒造〈群馬県川場村〉

永井酒造 代表取締役社長 永井 則吉 氏

豊かな自然に囲まれ、日本の原風景の残る群馬県最北部・川場村で酒造りを行っている永井酒造。
代表取締役社長 永井 則吉氏は、日本酒「水芭蕉」の色合いの法被を着て登場しました。

永井酒造は、海外にも積極的に輸出を行い、日本酒を「日本の文化」として発信していく活動も積極的に行っています。
代々受け継がれてきた蔵人の技の継承を大切にしつつ、近代化するべき点はチャレンジングに取り入れ、次世代の酒造りを体現する酒造です。

創業136年目を迎える永井酒造のお酒は、初代の惚れ込んだ川場村の水の味がセンターにあります。
今回ご用意していただいたお酒は『雪と紅』

日本酒を嗜む時に五感で楽しんで欲しいと語る永井酒造 永井氏には、
「開封する前の瓶の底の濁りや、開封したときの音など、目で、耳で、そして舌でも味わって欲しい」
と語っていただきました。

水沢うどん特製胡麻だれ 群馬銀ひかりとXO醬のアクセント
中国野菜を添えて

『雪と紅』と合わせてご用意したのは、中国料理人の渡辺 敬二と日本料理人の米 憲治が手がける、日本料理と中国料理のコラボレーション「水沢うどん特製胡麻だれ 群馬銀ひかりとXO醬のアクセント 中国野菜を添えて」

群馬の厳選した素材を使用。
日本酒と中国料理の醬(ジャン)、そして日本料理の鰹出汁、鯖出汁、干し椎茸の出汁のブレンドが程よくお互いの旨味を引き出し、オリジナルのXO醬と胡麻だれにより味の落ち着きとさっぱりとした風味を味わえます。

料理人が『雪と紅』との至高のペアリングを考えた一皿です。

アルコールインクアーティスト 松川 愛 氏による
ライブパフォーマンス

アルコールインクアーティスト 松川 愛 氏

世界で活躍するアルコールインクアーティスト、松川 愛氏。
永井酒造の日本酒のイメージから、アルコールインクアートが生み出される様子を、ライブパフォーマンスで披露いただき、特徴的な鮮やかな色合いと、卓越された技術をお愉しみいただきました。

日本酒、料理、そして松川氏のライブパフォーマンスに合わせて、即興演奏を行ったnao氏は、
「爽やかな川の景色と柔らかさ、そして優しさを出すように演奏させていただきました」
とイメージについて語ります。

「水芭蕉の花言葉は、『美しい思い出』や『変わらぬ美しさ』といいますが、それが表現されていました。
思い出だけでなくエネルギーも生まれるような、優しい熱さを感じる演奏でした」
と永井酒造 永井氏が演奏について感想を語りました。

演奏が終わると、松川氏のアルコールインクアートも完成。

「スパークリング部分が辛口と相まってとても美味しかった一方で、最後に甘みのような優しさを感じたため、その儚さを表現しました。
ブルーでクールに仕上げていますが、淡さも出しつつ、スパークリングの要素に銀色を使用しました。
普段は自然物を描くことが多いですが、アルコールインクはコントロールできないアートのため、生まれたインクの動きや風による液体の流れを受け入れつつ、そこで画を生み出しています」
と作品について松川氏に語っていただきました。

本田商店〈兵庫県姫路市〉

本田商店 代表取締役社長 本田 龍祐 氏

本田商店は1921年(大正10年)創業、2021年10月に創業100周年を迎えました。酒造りにおいて最も重要なものは、素材である「米」にあると考えている本田商店では、「米の酒は米の味」を基本理念とし、酒造りを行っています。

使用する山田錦は、最高品質とされる「兵庫県特A地区産」。
”良い酒造りは、良い米作りから”という信念のもと、特A地区の中でもさらに土壌条件の良い農家との全国初となる専属栽培契約を行い、有機肥料・減農薬・への字型栽培・稲木掛け自然乾燥など、農家と共に最高の山田錦作りに取り組んでいます。

京都大学大学院の農学研究科土壌研究室にて、山田錦の土壌研究にも取り組み、山田錦の地元の蔵元であるからこそ、山田錦を追究し、田んぼの土壌成分や土壌による味わいの違いを研究しています。

代表取締役社長 本田 龍祐氏には土壌についての研究と熱い思いを語っていただきました。

今回ご用意していただいた日本酒は「純米 ドラゴンスパークリング」
お米によってしっかりとした味わいが生み出されています。

本田商店の日本酒「龍力」といえば兵庫県、兵庫県といえば山田錦。
日本酒を作るお米の品種は山田錦が適していると言われていますが、兵庫県は日本の山田錦の約6割を生産しています。
地元の良いものは、まず地元で使おうというこだわりを持ちながら、酒造りを行なっているそうです。

無花果の赤紫蘇コンポート タンバルエリーゼ・スタイル

本田商店「純米 ドラゴンスパークリング」に合わせたのは、パティシエ 黒田 達弘とフランス料理人の柿迫 太陽が手がけるデザート「無花果の赤紫蘇コンポート タンバルエリーゼ・スタイル」。

「純米 ドラゴンスパークリング」の甘い香りを活かすために、無花果は赤紫蘇でつけて、お米のアイスには少しだけお酒を使用しています。

古典のタンバルエリーゼというデザートを、自然栽培野菜などに精通している柿迫シェフの持っている食材選びの視点によりリメイクし、月夜に見立てた美しい飴細工の飾り付けと日本酒との相性を五感でご堪能いただきました。

書道家 小川 航平 氏による書道パフォーマンス

書道家 小川 航平 氏

ITテクノロジーやデジタルを利用した新たな書の在り方を模索する書道家・小川氏による、本田商店の日本酒をイメージした、美しく、力強い書のパフォーマンス。

今回のイベントで書き上げた作品「たまゆら」は、来年、日本酒にしよう×本田商店の共同開発で発売される日本酒のラベルに起用される予定です。

作品を書き終えた小川氏は、
「『たまゆら』は漢字で『玉響』と書く古語で、『短い時間』という意味で使われていたそうです。
日本酒をいただいた際のしゅわしゅわとした舌触りが『短い時間』を感じさせるようなお酒だと思いました。
それを表現するために、今回使用したのは、毛先がとても長い『超長鋒』と呼ばれる筆です。
太い線と細い線をしっかりと表すことができる筆で、羊毛を使用しているため柔らかい表現ができます。
紙もあえて裏面を使用することにより、線の中に空白をつくりました。
『たまゆら』は勾玉同士が合わさっている様子を表すため、それも文字として表現しています」
と語ります。

日本酒と小川氏の書道パフォーマンスのイメージを即興演奏で表現したnao氏には、
「文字がひらがなで柔らかく表現されていて、お酒も優しい味なので、優しい曲を演奏させていただきました。」
と演奏について語っていただきました。

パフォーマンスを体験した本田商店 本田氏は、
「ものすごく贅沢な気持ちです。
日本酒を飲んでもらって、即興演奏をしてもらい、書いてもらうことは今までにないとても貴重な体験です。
完成した『たまゆら』の文字も、即興演奏も、蔵の特徴である『やわらかさ』と『力強さ』のめりはりを掴んでもらっているのがとても嬉しかったです。
お二人に特徴をお伝えしていないのに『分かるんだ』と驚きました。
『日本酒を飲んで伝わる』というのはとてもすごいことで、それを表現してもらっている嬉しさは半端ないものです。」
とパフォーマンスに対する感動を語りました。

イベントの最後には日本酒BARも開催!

全ての日本酒・料理・パフォーマンスをお愉しみいただいた後には、会場の後方にて「日本酒BAR」を開催。
蔵元さんと交流しながら日本酒を味わう、貴重な時間をお過ごしいただきました。

10月も日本酒イベントを八芳園で開催!
「蔵元さんと一緒に愉しむ日本酒の会」
~福島県南会津町4蔵元とともに~

蔵元さんと一緒に愉しむ日本酒の会 ~福島県南会津町4蔵元とともに~

2022年10月7日(金)~8日(土)の2日間限定。
全国新酒鑑評会で9回連続「日本一」を誇る福島県の日本酒を味わう「蔵元さんと一緒に愉しむ日本酒の会 ~福島県南会津町4蔵元とともに~」を開催します。

明治44年から続く全国新酒鑑評会で9連覇を達成した福島県産日本酒は、
17銘柄が金賞受賞、9回連続で「日本一」という新記録を達成しました。

蔵元さんと一緒に愉しむ日本酒の会 日本酒4種

なかでも、特に人気の高い南会津町は4つの酒蔵があり、すべてが金賞受賞の実績を誇る”日本酒のまち”です。

造られた日本酒のほとんどが地元で消費され、県外に出回るのはわずかしかないという貴重な日本酒と、八芳園シェフによるイベントのためだけに開発した創作料理とのペアリング。

日本一に輝く日本酒を造る酒蔵の魅力を聞きながら、日本酒の神髄を味わう2日間をお届けします。

ペアリングメニュー6品
日本酒4種(蔵元)
・山廃純米 國権(国権酒造株式会社)
・純米大吟醸 会津(会津酒造株式会社)
・開当男山 純米吟醸(開当男山酒造)
・「十口万」純米吟醸 一回火入れ(花泉酒造株式会社)

「蔵元さんと一緒に愉しむ『日本酒の会』~福島県南会津町4蔵元とともに~」ご予約・詳細はこちらより

日本酒と料理を存分に味わうイベント、ぜひご参加くださいませ。

《文・写真》八芳園 広報チーム 髙橋

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