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隣人が何をやっているかわからないけど魅力ある学問”地学”の世界

みなさん,こんにちは.とある地学屋の日常ことゆうすけです.
私は大学で地球科学を学び,現在は地質調査会社で地下探査の技術者として働いております.普段から地球科学に関わる身として地球科学の魅力についてお話していきます.

地学とはどんな学問?

 高校の理科で地震や火山,地層,気象,天文といった地球・宇宙を対象に学ぶ科目である「地学」という科目があります.一般には地学は,「地球科学」「地球惑星科学」などと呼ばれることが多いです.実際,高校の理科では地学を履修している方,履修した方は他の理科(物理・化学・生物)に比べて非常に少ないため,地学はメチャクチャマニアックで何に役に立つのかわからないという方は多いと思います.しかし,地震・火山・気象災害への防災対策や我々の生活に欠かせない石油や金属等の在処を探す資源探査にはなくてはならない学問となっており,我々の生活に密接に関わっている学問なのです.(以下,地学を「地球惑星科学」と称してお話を進めます.)

地学は幅広い!

 地学(地球惑星科学)の分野は非常に多岐に渡ります.下記に地球惑星科学の諸分野を表した図を示します.

地球科学_ponti

 地球惑星科学は大きく分けると,固体地球大気・海洋天文・宇宙の3分野に分けられます.図中に赤字で示した分野は物理学系の分野,青字は化学系の分野,緑字は生物学系の分野,紫は複合分野を表しております.この図から地球惑星科学は非常に多岐に渡る学問であり,物理学,化学,生物学を融合した総合科学と言えます.また,地形学を初めとして,水文学,土壌学などの自然地理学は文系学部の地理学科で研究されることもあります.地下資源の有効利用のための戦略法を構築するために,地質学や資源工学と経済学を融合させた資源経済学という学問も存在します.従って,地球惑星科学は理科系の枠を越えて人文科学系の分野とも関わる文理融合型の学問とも言えるのではないかと思います.図に示した分野は主要な分野であり,他にも多くの分野がありますので興味のある方は調べてみると面白いと思います.
 現在,日本には地球惑星科学連合(JpGU)という日本最大の地球惑星科学分野の合同学会があります.この学会は毎年5月末に約1週間ほど幕張メッセを貸し切り,約200件のセッションで多くの発表・ディスカッションが行われます.私もこの学会に加入しており何回か発表した経験があります.私は専門分野の学会である物理探査学会に加入していますが,JpGUのような合同学会に参加すると専門外の発表も気軽に聴講でき,発表では様々な専門分野の方から意見を頂くことができるため,視野が広がります.私が2019年のJpGUで浅部物理探査のセッションにて修士の研究成果について発表しましたが,固体地球物理学が専門の方以外にも,地質学が専門の方や宇宙科学が専門の方など幅広い分野の方から意見を頂くことができ非常に有意義な時間となりました.同じ空間にいても実際に会って話してみないとその方の専門分野がわからないということが起きます.まさに,地球惑星科学は「隣人が何をやっているかわからない学問」と言えるでしょう.だからこそ,様々な分野の方と交流ができ,新たな知見を得られる非常に魅力的な学問であると言えるのではないかと思います.

さいごに

 本稿では,地球惑星科学は非常に幅広い分野であり,「隣人が何をやっているかわからないけど魅力的な学問である」ということを述べてきました.高校の理科では物理,化学,生物,地学の4科目の中で地学は履修する人が少なく受験科目として選択する人が少ないため世間ではマニアックな科目と印象づけられることが多いです.しかし,地球惑星科学は我々の生活に密接に関係しています.日本は地震,火山,水害など自然災害が多く発生する場所であります.地震や火山噴火はどうして起きるのか?多量の降雨によりどんな危険が生まれるのか?などの防災・減災について科学的に研究する分野は地球惑星科学です.火力発電や自動車の原動力となる化石燃料やスマートフォン,パソコンなどの最先端の精密機器に使用されるレアメタルを探すためには地質調査の技術が欠かせません.トンネルやダム,発電所などの巨大な土木構造物を建設するためにも地質調査が必要です(だからこそ,土木地質学という分野があるのです).特に日本は地質構造が複雑なので構造物の建設においても高い地質調査の技術が求められます.地球惑星科学はマニアックかもしれませんが,現代文明を支える基盤を構築するための重要な学問と言えるでしょう.
 最後まで読んで頂きありがとうございます.この記事を通して,少しでも地球惑星科学の魅力を感じて頂ければ幸いです.


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